立命館大学古気候学研究センターの北場育子准教授、同研究センター長の中川毅教授、神戸大学内海域環境教育センターの兵頭政幸教授らのグループは、宇宙から降り注ぐ高いエネルギーを持った銀河宇宙線(放射線)が、雲を作って気候を変えることの証拠を発見した。この成果は、1月16日(日本時間)Scientific Reports(オンライン版)で掲載された。
<研究概要>
かつての地球には、銀河宇宙線が多く降り注いだ時代があり、その時代には地球が寒くなっていたという証拠が多数報告されている。そのようなことが起こるメカニズムとして、「銀河宇宙線が雲を作る」という仮説が提唱されていたが、観測が始まる前の時代の雲の量を知るのは非常に困難で、メカニズムの解明を妨げていた。
北場准教授らは、銀河宇宙線を跳ね返すバリアの働きをする地球の磁場と、太平洋とユーラシア大陸の温度のバランスを反映する東アジアの気候に着目、地球の磁場が現在の約10%にまで弱まった約78万年前と107万年前、すなわち、地球上に現在の約2倍の銀河宇宙線が降り注いでいた時代の気温と降水量を復元した結果、地球磁場の弱まりとともに、2つの気候変化が観測された。(1)太平洋よりもユーラシア大陸の顕著な気温低下、(2)東アジアの夏雨の減少―これらの気候変化は、海よりも陸の方がより強く冷やされた場合に起こる。この背景にあるメカニズムとして、もっとも可能性が高いのは、雲によって太陽光が遮られること(日傘効果)である。
本研究は、これまでに観測されてきた「銀河宇宙線量の増加」と「寒冷化」を結ぶメカニズムとして、「雲」が重要であるということを実証的に示したものである。
近年、太陽活動の低下による気候変動が懸念されている。本研究は、太陽が引き起こしうる気候変化の具体的な内容についての洞察を与えると共に、温室効果ガスに偏りがちな気候変動の議論に新たな視点を導入するものである。
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