喘息症状増悪の大幅な減少、呼吸機能の改善、経口ステロイドのベースラインからの減量を示した第III相WINDWARD プログラムの結果に基づく承認
呼吸器生物学的製剤で初めて8週間隔投与の承認を受けたベンラリズマブ
アストラゼネカ(本社:英国ロンドン、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)および、アストラゼネカのグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンは、高用量の吸入ステロイドと長時間作用性β2刺激薬での治療ではコントロール不良の好酸球性重症喘息をもつ成人患者さんに対する追加維持療法として、
Fasenra(一般名:ベンラリズマブ(遺伝子組換え)、以下、ベンラリズマブ)が、欧州委員会(EC)から承認を取得したことを1月10日に発表しました。
今回の承認は、ベンラリズマブの投与による年間喘息増悪率の変化を評価した主要第III相国際試験SIROCCO試験およびCALIMA試験、および経口ステロイド薬(OCS)の減量を評価した第III相国際試験ZONDA試験を含むWINDWARDプログラムの結果に基づくものです。
アストラゼネカ社のグローバル医薬品開発担当エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフメディカルオフィサーであるSean Bohenは、「ベンラリズマブは当社の呼吸器領域で最初の生物学的製剤です。昨年の米国での承認に続き、本日ECから承認をうけ、好酸球性炎症によって重症化する喘息患者さんの治療を変革するという当社の目標に向かって、またひとつ前進できたと思っています」と述べました。
CALIMA試験の治験責任医師で、英国ノッティンガム大学 喘息・呼吸器内科教授のTim Harrison氏は、「好酸球性の重症喘息をもつ患者さんは、現在の治療を受けていても、症状による消耗、救急処置室や入院を必要とする高リスクに直面し、死に至ることもあります。主要臨床試験でプラセボに対する有効性を示した、8週間隔の維持投与という利便性の高いベンラリズマブを、新しい抗好酸球モノクローナル抗体として患者さんに勧めることが楽しみです」と述べました。
好酸球は白血球の一種で、通常の身体免疫システムの一部を担いますが、重症喘息患者さんのおよそ半分で好酸球レベルの上昇がみられ、それにより気道炎症や気道過敏性が引き起こされ、その結果、喘息が重症化し症状が悪化、呼吸機能の低下や増悪リスクの増加につながります。
ベンラリズマブは、好酸球の表面に発現するインターロイキン-5受容体αに直接結合し、独自にナチュラルキラー細胞を活性化しアポトーシスを誘導します(プログラム細胞死)。ベンラリズマブは固定用量があらかじめ充填されたプレフィルドシリンジの皮下注射で、最初の3回は4週間隔、その後は8週間隔で投与されます。
ベンラリズマブは、米国食品医薬品局(FDA)によって、好酸球性フェノタイプを有する12歳以上の重症喘息患者さんの追加維持療法として2017年11月に承認されました。ベンラリズマブは現在日本および数カ国において当局審査中で、2018年上半期中には当局の決定があると予測されています。
以上
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重症気管支喘息について
気管支喘息は世界3億1,500万人の人々に悪影響を与えており、喘息患者さんの最大10%は標準治療である高用量の喘息コントロール薬による治療にもかかわらず症状のコントロールが不良の重症喘息であり、経口ステロイド薬の継続使用が必要になる場合があります。
コントロール不良の重症気管支喘息は死に至ることもある耐え難い疾患で、患者さんは頻回の症状増悪や、呼吸機能の低下、生活の質(QOL)の著しい制限を余儀なくされます。コントロール不良の重症気管支喘息患者さんの死亡リスクは重症気管支喘息患者さんより高いとされています。
コントロール不良の重症気管支喘息は、経口ステロイド薬依存を引き起こす可能性があります。全身性ステロイドの投与によって、体重増加、糖尿病、骨粗鬆症、緑内障、不安感、うつ、循環器疾患および免疫抑制を含む重篤な副作用を短期間または長期間起こすことがあります。さらに重症気管支喘息患者さんの疾患による身体的負担ならびに社会経済的な負担も大きく、喘息関連費用の約50%にあたるとも言われています。
ベンラリズマブ(遺伝子組換え)について
ベンラリズマブは、ナチュラルキラー細胞を誘導することで、好酸球に直接かつ速やかに作用し、かつほぼ完全に除去するモノクローナル抗体です。早期第I/II相試験により、24時間以内の作用の発現が確認されています。好酸球は、喘息患者さんの約50%において生物学的エフェクター細胞となり、頻回の症状増悪、呼吸機能の低下や、喘息症状の悪化を引き起こします。
ベンラリズマブは現在米国とEUにおいて承認されており、日本およびその他数カ国において承認審査中です。
ベンラリズマブは、アストラゼネカの呼吸器疾患領域において、呼吸器疾患の根本原因を究明する新薬候補となる生物学的製剤ポートフォリオの基盤となっています。ベンラリズマブはまた、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬としても開発されています。
ベンラリズマブは、日本の協和発酵キリン株式会社の完全出資子会社であるBioWa社から導入され、アストラゼネカのグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンが開発しました。
WINDWARDプログラムについて
気管支喘息に関するWINDWARDプログラムはSIROCCO試験、CALIMA試験、ZONDA試験、BISE試験、BORA試験およびGREGALE試験を含む6つの第III相臨床試験により構成されています。2つの主要試験SIROCCO試験およびCALIMA試験は、喘息増悪が発現傾向にある12歳以上の患者さんを対象に、ベンラリズマブの標準治療(固定用量30mgの皮下投与)の有効性および安全性を評価する、無作為化二重盲検対照群間プラセボ対照試験です。
SIROCCO試験およびCALIMA試験は、重症喘息の標準治療(高用量の吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬 [ICS/LABA] を含む)を受けている患者さん計2,510例(SIROCCO試験1,204例、CALIMA試験1,306例)が、ベンラリズマブ 30mgを4週間ごとに投薬する群と、ベンラリズマブ30mgを最初の3回は4週間ごと、その後8週間ごとに投薬する群、もしくはプラセボ群に、世界中から無作為に割り付けられました。ベンラリズマブはプレフィルドシリンジによる皮下注射で投与されました。
SIROCCO試験およびCALIMA試験では、標準的な治療にベンラリズマブを追加したコントロール不良の好酸球性の重症喘息患者さんは、プラセボを追加した患者さんと比べて、喘息増悪頻度が大幅に低下し、呼吸機能および喘息症状が改善しました。なお、ベンラリズマブ投与患者さんにおける発生頻度の高い有害事象は頭痛(8%)と咽頭炎(3%)で、その他、発熱、過敏症反応、注射部位反応がありました。
最近発表されたSIROCCO試験およびCALIMA試験の併合事後分析では、ベースライン血中好酸球数、頻回増悪の回数、経口ステロイド薬の常用および鼻ポリープの有無などの簡単に判別できる好酸球性重症喘息の臨床特徴と、ベンラリズマブの有効性との関係性が明らかになりました。
薬事承認申請を目的とする3番目の試験であるZONDA試験は、コントロール不良で経口ステロイド薬依存傾向がある好酸球性重症喘息患者さんにおいて、ベンラリズマブ投与群はプラセボ群との比較で、維持療法としての経口ステロイド薬投与量が、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある減量ができることを示しました。本結果は
the New England Journal of Medicineの2017年5月号に掲載されました。
WINDWARDプログラムに加え、重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者さんにおけるベンラリズマブの有効性および安全性を評価する第III相VOYAGERプログラムも現在進行中です。
アストラゼネカにおける呼吸器疾患について
呼吸器疾患はアストラゼネカの注力疾患領域のひとつで、製品ポートフォリオは年々成長し、2016年には世界中の1,800万人以上の患者さんに当社製品をお届けしました。アストラゼネカは、吸入配合剤を中心に、特定の疾患治療のアンメットニーズに応える生物学的製剤や、疾患原因を解明する革新的なサイエンスを通じて、喘息およびCOPD治療を向上させることを目指しています。
アストラゼネカは、呼吸器領域における40年の歴史をさらに発展させており、当社の吸入器技術はドライパウダー吸入器(DPI)、加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)、ならびに
Aerosphere Delivery Technologyなどに及びます。また、当社の生物学的製剤には、現在米国とEUで承認を取得し日本および他国では薬事承認審査中のFasenra(一般名:ベンラリズマブ(遺伝子組換え)、抗好酸球、抗IL-5受容体ɑ抗体)、現在第III相試験を終了したtralokinumab(抗IL-13抗体)、および第IIb相試験の主要評価項目と副次評価項目の達成に成功した tezepelumab(抗TSLP抗体)が含まれます。アストラゼネカは、肺上皮組織、肺免疫および肺再生に焦点を当てた、基礎疾患のドライバーを解明する研究を行っています。
メディミューンについて
メディミューンは、アストラゼネカのバイオ医薬品研究開発部門で、低分子化合物および生物学的製剤の医療用医薬品の研究、開発および商業化に特化する、グローバルなイノベーション志向のバイオ・医薬品企業です。メディミューンは、革新的な研究を先駆的に進めており、オンコロジー、呼吸器疾患、循環器・代謝疾患、および感染症・ワクチン等を重点疾患領域として、新規治療経路の検討に取り組んでいます。メディミューンの本社は、アストラゼネカの3つのグローバル研究開発拠点のひとつである米国メリーランド州ゲイザースバーグにあり、加えて英国ケンブリッジおよび米国カリフォルニア州マウンテンビューにも研究所があります。詳細については
https://www.medimmune.com をご覧ください
アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・代謝疾患、呼吸器疾患の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。また、自己免疫疾患、ニューロサイエンスおよび感染症の領域における一部の疾患に関する活動も行っています。当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細については
http://www.astrazeneca.com または、ツイッター @AstraZeneca(英語のみ)をご覧ください。
日本においては、主にオンコロジー、循環器・代謝/消化器疾患、呼吸器疾患を重点領域として患者さんの健康と医療の発展への更なる貢献を果たすべく活動しています。当社については
https://www.astrazeneca.co.jp/ をご覧ください。