【京都産業大学】クライオ電子顕微鏡を使いATP合成酵素のスタートアップ機構を解明 -- PNAS Nexus電子版(Oxford 出版社)に掲載



京都産業大学生命科学部 横山謙教授らの研究グループは、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析により、長年謎に包まれていたATP合成酵素の初期反応(ユニサイト触媒)で起こる現象を、クライオ電子顕微鏡で捉えることに成功した。この研究成果は、回転機構によるATP合成の全容解明への大きな一歩となり、今後、人工分子モータータンパク質設計への応用も期待される。




 私たちの生命活動は、高エネルギー物質であるATP(アデノシン三リン酸)によって支えられており、その大部分は、ATP合成酵素FoF1により合成されている。FoF1にはATPが結合する3つの触媒部位があり、触媒部位に結合したときに起こる触媒反応(ユニサイト触媒)の解明に多くの研究者が取り組んできたが、ユニサイト触媒と定常状態での触媒機構との関連はわかっていなかった。
 本研究では、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析により、ユニサイト触媒の起こる様子を捉えることに成功した。その結果、ユニサイト触媒は定常状態とは異なる機構で起こる反応であり、ATPに対する高親和性は、ユニサイト触媒に特有な現象であることが示唆された。

 横山教授は「多くの研究者を悩ましてきたユニサイト触媒機構の分子基盤が解明されたことで、ATP合成酵素の回転機構の全容解明に大きく一歩近づくことができた。ユニサイト触媒機構で見られた現象に基づいた回転モデルは訂正する必要がある。従来の構造解析では知り得ない初期反応構造を捉えた手法は、タンパク質の機能構造を明らかにする新たな構造解析分野を切り拓くことになるだろう」とコメントしている。

 この研究成果は、2022年7月11日(日本時間)にPNAS Nexus電子版(Oxford 出版社)に掲載された。

むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

■関連リンク
・【生命科学部】クライオ電子顕微鏡によりATP合成酵素FoF1のスタートアップ機構を解明
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2022_ls/20220714_400a_ronbun.html
・クライオ電子顕微鏡によるスナップショットにより回転分子モータータンパク質の回転機構を解明
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2022_ls/20220325_400a_ronbun.html
・京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科 横山 謙教授
 https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/ls/yokoyama-ken.html


▼本件に関する問い合わせ先
京都産業大学 広報部
住所:〒603-8555 京都市北区上賀茂本山
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FAX:075-705-1987
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