~湾岸部や都市部の防災・環境問題などへの貢献を目指して~
京都大学防災研究所と
大阪ガスは、このほど、大阪湾岸エリアにおける高精度な気象予測技術確立のための共同研究を開始しました。
湾岸部では一般的に、海陸風
*1と呼ばれる局地的な風が発生します。また、海と陸の境界では、温度や風が特有の振る舞いをすることで、複雑な現象が生じています。大阪湾岸エリアに設置している大阪ガスの気象計によると、内陸部と比較して気温が低く、風が強い傾向にあることも分かっており、湾岸部では特徴的な気象現象が発現している可能性があります。
京都大学防災研究所暴風雨・気象環境研究分野の竹見哲也教授らは、局地豪雨をもたらす積乱雲の発達と組織化過程およびその発生条件の解明・予測可能性、集中豪雨や台風の物理機構の解明、都市での局所的な気流や大気拡散の問題などメソスケール気象(数km~数100km程度の中小規模の大気現象)の分野で研究成果を上げてきました。
大阪ガスは、2008年から独自手法
*2による気象予測を開始し、2013年からは社内の実業務において予測結果の活用を進めてきました。2018年には、気象予報業務許可を取得し、社外向けの気象予測サービスを提供する体制も整えています。
本共同研究では、竹見教授のメソスケールの気象現象に関する知見と、大阪ガス独自の気象予測や大阪湾岸エリアにおける気象データに関する知見を組み合わせ、大阪湾岸エリアの局地的な気象現象を観測・分析します。また、大阪ガスが保有する現在の気象予測の精度を評価し、シミュレーションの高解像度化
*3、物理モデル(雲の発生過程など大気中の現象を単純化し数式で表したもののこと)の改良を行うことで、同エリアにおける高精度な気象予測技術の確立を目指します。
今回得られた成果は、湾岸部における気象現象や、都市気象・気候との関連性の解明に活かし、湾岸部や都市部における防災・環境問題などに貢献していきたいと考えています。また、さまざまなデータ・サービスが連携するスマートシティなどでの活用も想定しており、その一例として、本成果とAIによる高精度化や自動化を組み合わせた「AI気象予報」を開発し、スーパーシティとして選定された大阪市夢洲地区での展開を目指します
*4。そのほか、大阪湾岸に位置する施設向けの予測などDaigasグループ内での活用も行う予定です。
京大防災研と大阪ガスは、2021年12月より、極寒や猛暑などの現象を中長期的に予測するための共同研究
*5も進めており、気象予測技術に関する共同研究を通じ、幅広い産業の皆さまのお役に立てるよう、目指してまいります。
*1:海岸地帯に見られる風で、陸上と海上の気温差によって発生する局地的な風の循環。昼は海から陸へ、夜は陸から海へと風向が変化する
*2:予測対象地域を高解像度の小さなメッシュに区切ってデータ解析を行うことで地形影響などを考慮したきめ細やかな予測を行うことができるとともに、観測データに基づく機械学習も組み合わせて高精度化を図っている点が特長
*3:予測対象地域を500m~1km四方の小さなメッシュに区切ることを想定。大阪ガスの従来の気象予測モデルでは、2.2km四方のメッシュに区切っていた
*4:内閣府による、スーパーシティ及びデジタル田園健康特区における先端的サービスの開発・構築等に関する調査事業に、「夢洲プラットフォームの構築」が採択された。大阪ガスは、事業を受託した夢洲プラットフォーム検討協議会の一員として、AI気象予報を検討している
(https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/supercity/pdf/supercity_220715_FlontLine.pdf)
*5:2021年12月14日「中長期気象予測に関する共同研究の開始について~極寒や猛暑を早期に予測し、エネルギーの安定供給に貢献~」で公表済
(https://www.osakagas.co.jp/company/press/pr2021/1301824_46443.html)
■観測地点(風況・気温)
■湾岸エリアにおける気象予測のイメージ
・海面、平坦な埋め立て地、建物が立ち並ぶ市街地といった土地の状況の違いが、風の摩擦抵抗や熱の移動などの大気の振る舞いに与える影響を予測する