日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、低遅延性の特長をもつIOWN オールフォトニクス・ネットワーク(以下、APN)関連技術により構成される、離れた地点間でタイムラグなく相互の映像をやり取りする映像コミュニケーションシステムを用いて遠隔合唱の実証実験を実施します。
1.実証の背景
新型コロナの影響によりライフスタイルが大きく変容する中、ライブ・エンタテイメント分野においても、無観客ライブやバーチャルフェスなど、リアルとオンラインの融合を取り入れた新たなイベントの在り方が模索されています。
NTTでは、インフラの限界を超えた高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の実現をめざした、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を掲げ、研究開発を推進しています※1。そのうちの主要技術である光をベースとしたAPNは、圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現します。
このAPN構成技術として、NTTではこれまでに映像による同期行動が必要な映像コミュニケーションの実現に向け、複数拠点から届けられる複数の映像を超低遅延に分割表示処理する技術を用いたプロの弦楽演奏者による遠隔合奏実験を行い、リモートでも映像の遅延のストレスなく合奏が実現できることを実証しました※2。 また、高品質な映像を超低遅延に伝送するための技術を確立し、実証を進めてきました※3, ※4。
NTTでは、ライブ・エンタテイメント分野を含めた様々な分野で、これらの超低遅延性を有するリアルタイム遠隔映像コミュニケーションの実現に向けた技術について、更なるユースケースへの適用性の探索を行っています。
2.実証内容
本実証は、西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)と共同で、株式会社毎日放送主催で1983年から毎年開催されている合唱コンサート「サントリー1万人の第九」の第40回記念公演において※5、大阪城ホール、QUINTBRIDGE(大阪)、OPEN HUB Park(東京)の計3拠点を繋ぎ、リアルタイム遠隔合唱の実証実験を実施します。
本実証では、指揮者、演奏者(オーケストラ)、合唱者が離れた会場においても、APN構成技術を用いることで、違和感なく遠隔合唱が実施できるか検証します。特に、 (i)光ファイバ長として約700kmとなる東京大阪間の長距離の信号伝搬による高遅延環境において、(ii)約2000名(大阪城ホール)という大規模な、(iii)リモート合唱の実現に対する技術の優位性を検証していきます。
なお、本実証において、NTT西日本は、IOWN APN実証環境(大阪城ホール・QUINTBRIDGE)、リモート拠点会場(QUINTBRIDGE)の提供、技術検証/評価を、NTT Comは、IOWN APN実証環境(OPEN HUB Park)、リモート拠点会場(OPEN HUB Park)の提供を担当します。
<本実証で用いる技術のポイント>
1.低遅延映像処理技術※2:複数拠点から届けられる複数の映像を、超低遅延に分割表示処理する技術
2.低遅延通信技術※3:IOWN APNを活用し、従来のベストエフォート品質のネットワークとは異なり、大容量・低遅延・ゆらぎの少ない通信技術
3.遅延可視化技術※3:マイクロ秒精度の遅延測定・可視化技術
4.低遅延映像伝送技術※4: 4K/8Kの大容量映像を、光パスを通してダイレクトに非圧縮で超低遅延に伝送する技術
3.今後の展開
今後、今回の実証による知見をもとに、APN構成技術の適用に向けた研究開発を進めるとともに、新たなユースケースの実証によりIOWN APNの利用シーンの開拓を行い、新しいスタイルの映像コミュニケーションシステムの早期の実用化に向け、ビジネス性を含めNTTグループ会社と共に検討を進めてまいります。
※1 IOWN構想
https://www.rd.ntt/iown/index.html
※2低遅延映像処理技術
https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/03/04/220304a.html
※3 低遅延通信技術、遅延可視化技術
https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/11/02/211102b.html
※4低遅延映像伝送技術
https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/02/22/220222a.html
※5 「サントリー1万人の第九」
https://www.mbs.jp/daiku/