国際協力に関する意識調査結果:子どもの4人に3人が、国際協力を積極的に進めるべきだと回答
(大人回答数:11,156人、子ども回答数:1,213人)
子ども支援専門の国際NGOである公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(理事長:井田純一郎、本部:東京都千代田区)は、2023年1月に実施したインターネット調査「国際協力に関する意識調査」の結果を発表しました。この調査は、子どもを含む市民が国際協力にどのような意識を持っているかを明らかにすること、そして、2023年前半に改定が予定されている「開発協力大綱」に子ども・大人の声を反映していくことを目的として実施しました。
調査の結果、日本のこれからの国際協力について、「積極的に進めるべきだ」、「進めるべきだ」と考える人が6割近くにのぼることがわかりました。また、子どもからの回答を抽出したところ、4人に3人の子どもが国際協力を進めるべきと考えていることが明らかになりました。
主な回答結果は以下の通りです。(有効回答数:12,369人)
1.国際協力に対する意識
- 国際協力が必要な理由として、「国際社会の平和や安定のため」と回答した人は約半数。
- 国際協力の原則について、約半数が、「基本的人権や民主主義に負の影響を与えないこと」と回答。
2.日本の貢献度に対する考え
- 政府開発援助(ODA)の0.7%目標[1]を達成すべきかについて、約4割が支持。「とてもそう思う」(10%)、「ややそう思う」(28%)と回答した大人の割合は、4割ほどにとどまったが、一方、「とてもそう思う」(25%)、「ややそう思う」(40%)と回答した子どもの割合は6割を超えた。
3.社会サービス分野増額についての考え
- 国際協力の重点分野として、教育、保健医療などの社会サービス分野が57%とトップ。
- 教育や保健医療・栄養、水・衛生、社会的保護(経済的に困難な家庭に対する給付金などの福祉制度)といった社会サービスへのODAを他の先進国並みにすることについて、約半数が容認。「とてもそう思う」(12%)、「ややそう思う」(35%)と回答した大人の割合は、半数ほどにとどまったが、一方、「とてもそう思う」(29%)、「ややそう思う」(40%)と回答した子どもの割合は7割近くとなった。
- 教育や保健医療・栄養、水・衛生、社会的保護といった社会サービス分野で重点すべき項目については、それぞれ約2~3割程度(水・衛生がトップで31%)で、突出したものはなかった。
4.今後の開発協力に対する意識
- 日本のこれからの国際協力について、「積極的に進めるべきだ」(18%)と「ある程度進めるべきだ」(39%)を合わせると約56%となり、進めるべきだと回答した人は6割近く。一方、「減らすべきだ」(6%)、「やめるべきだ」(1%)と回答した人は約7%で、1割に満たない。
- 子どもと大人別に見ると、「積極的に進めるべきだ」(16%)、「ある程度進めるべきだ」(38%)と回答した大人は、約54%であったのに対し、「積極的に進めるべきだ」(35%)、「ある程度進めるべきだ」(40%)と回答した子どもは7割以上となり、大人を上回る結果に。
- 国際協力の重点国では、貧困・格差が深刻な国を優先するべきという傾向。
■調査結果はこちら
https://www.savechildren.or.jp/scjcms/dat/img/blog/4122/1677629574296.pdf
〈本調査結果を受けての今後の活動〉
新型コロナウイルス感染症、紛争、気候変動などの影響により、世界の最も弱い立場に置かれた人々、特に子どもたちの状況はさらに悪化しています。ODAは、開発途上国、特に最貧国や脆弱国にとっては重要な資金源です。ODAを増額して0.7%目標を達成することに加え、日本政府が国際協力の柱としている人間の安全保障の観点からも、より直接的に人々に裨益する社会サービス分野を優先することが非常に重要です。今回の調査結果からも、日本の人びと、特に子どもたちが、国際協力の拡充や保健・教育などの分野を優先することを支持する傾向があることがわかりました。
一方、2019年の「主要DAC(開発援助委員会)諸国の二国間ODAの分野別配分」によると、日本政府の社会サービス分野への配分は13.7%、緊急援助・食糧援助分野への配分は3.6%となっており、それぞれDAC平均の36.5%、14.9%を大幅に下回っています[2]。持続可能な開発目標(SDGs)の理念である「誰一人取り残さない」世界を実現するためには、貧困、不平等や差別、気候変動の影響を最も受ける、最も疎外され周縁化されたコミュニティを優先したプログラムやサービスへの投資を優先させ、それぞれの分野の配分を、少なくともDAC平均レベルまで引き上げることが必要です。
セーブ・ザ・チルドレンは、今後も日本が国際協力を積極的に推進し、最も脆弱性の高い国や地域の子どもたちの権利の実現に貢献するよう、これからも働きかけを行っていきます。
参考資料
「国際協力に関する意識調査」概要
対象:47都道府県在住の、(1)15歳~17歳の子ども、(2)18歳以上の大人
実施期間:2023年1月27日(金)~1月29日(日)
方法:インターネットリサーチ「Quick」※調査委託先:マクロミル
有効回答数:12,369人
(内訳)15歳~17歳の子ども1,213人、18歳以上の大人11,156人
調査主体:公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
[1] 1970年の国連総会で合意された、ODA拠出金額を国民総所得(GNI)の0.7%にするという国際目標。2021年時点で、日本が拠出した金額は、GNI比0.34%にとどまっている。
[2] 2021年版開発協力白書図表より
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/press/shiryo/page24_000141.html
<セーブ・ザ・チルドレンとは>
1919 年に英国にて創設。子どもの権利のパイオニアとして、すべての子どもにとって、生きる・育つ・守られる・参加する「子どもの権利」が実現されている世界を目指し、現在、世界約 120ヶ国で子ども支援活動を展開する国際 NGO です。日本では 1986 年にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが設立しました。