ジュリアン・ホゥダン
グローバル・アンコンストレインド債券チーム・ヘッド
グローバル債券やグローバル・クレジットを運用するグローバル・アンコンストレインド債券チームによる、マクロ経済環境見通しとポートフォリオへの示唆をご紹介します。グローバル・アンコンストレインド債券チーム(以下、運用チーム)は、世界のさまざまな状況を分析し、現在のマクロ経済環境とその方向性を評価しています。
ソフトランディング・シナリオ(景気後退が回避され、インフレ圧力が解消するにつれて中央銀行が金融緩和を実施する)の実現可能性をさらに引き上げ、90%にまで高めています。
このような変更を行った背景としては、ディスインフレがさらに進展し、労働市場に軟化の兆しがみられることから、米連邦準備制度理理事会(FRB)が急激な景気後退(ハード・ランディング)を回避するために十分な金融緩和を行うことが出来るという見方が強まったことがあります。よって、ハードランディング・シナリオの実現可能性を低位に留めると同時にノーランディング・シナリオの実現可能性も引き下げています。
失望はゲームの一部
6月半ばから7月半ばの1か月の間、ユーロ2024(サッカー欧州選手権)が開催され、欧州は熱狂に包まれました。クリスティアーノ・ロナウドが、「失望はゲームの一部」と言っていましたが、世界経済サイクルにおいても同様のことが当てはまると言えます。2023年は好調なパフォーマンスを示し、米国の成長に
対する楽観的な見方が強まりましたが、2024年は相対的に 期待外れとなる可能性があります。期待の高まりに反して データの軟化が反映され、シティ米国エコノミック・サプライズ 指数(市場予想に対するデータのサプライズを測定)は歴 史的な低水準まで低下し、コンセンサスに対するデータの下 振れ幅が大きくなりました。これは米国経済が軟調であるこ とを示しているわけではなく、楽観的な経済予測に比べて、 モメンタムが徐々に弱まってきていることを反映しています。
なお、重要な点として、短期的には期待外れのデータが続い たとしても、景気後退圧力が高まる可能性は限定的である と運用チームではみています。世界的な製造業サイクルの改 善、緩やかな金融環境、中立的な信用状況、実質所得の 緩やかな上昇等の要因は、経済成長の小幅な鈍化のみを 示しています。
実際にはディスインフレであるにも関わらず、
デフレと感じる
ユーロ2024ではイングランドは決勝まで進みましたが、あと一歩のところで優勝を逃しました。準優勝という素晴らしい健闘にも関わらず、イングランドのファンは決勝戦での敗北にフォーカスし、悲しみに暮れています。イングランド・ファンの反応と、米国消費者物価指数(CPI)に対する市場の反応に、一定の類似点があると考えます。
米国CPIが2回連続で市場予想に対して下振れしました。実際にはディスインフレ(物価は上昇しているが、そのペースが鈍化)にも関わらず、市場はデフレであるかのように反応しました。運用チームは以前からソフトランディング・シナリオへの最終的な道筋は、世界経済、特に米国における速やかなディスインフレ・プロセスを経由すると考えており、今回の動きは重要と考えます。
ポートフォリオへの示唆は?
グローバルの国債市場はここ数週間、コンセンサス対比下振れの経済指標と米国のディスインフレを手掛かりに好調なパフォーマンスを示しています。この結果、現在のバリュエーションは、デュレーションについてリスク・リターンの観点からの魅力度が低下していると考えます。
資産配分については、エージェンシー・モーゲージ債への選好を維持しています。バリュエーションが魅力的水準にあるほか、短期的な供給見通しも支援材料になると考えます。カバードボンドについては強気姿勢を弱めています。ただし、国際機関債その他政府関連債対比では引き続き選好する姿勢といたします。社債については、欧州投資適格社債を対米国で選好する姿勢を継続しています。米国投資適格社債については、スプレッドが歴史的にタイトな水準になっており、国債対比でのリスク・リターンの魅力度が薄いと考え、全体的に弱気の見方を維持いたします。
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