2024年度グッドデザイン⼤賞を発表 遊具研究プロジェクト「RESILIENCE PLAYGROUND プロジェクト」に決定 「障害の有無にかかわらず誰もが遊ぶことができる遊具」を実現
- 2024年11月06日
- 13:25
- 公益財団法人日本デザイン振興会
- エンタメ
〜94件が受賞、最優秀賞は12月7日(土)に発表〜
1:KANZOO | ||
猪瀬 陽 筑波大学 芸術専門学群 情報・プロダクトデザイン領域 既卒 |
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■応募概要 子どものための知育玩具 「KANZOO (カンズー)」は、漢字から動物、動物から漢字へと、角度によって影の形が変化する、影絵遊びのための積み木です。驚きが生まれるしかけは、親子や児童間のコミュニケーションを活発化させるだけでなく、子どもたちにとって記憶に残る体験や刺激となり、漢字や動物に対する興味・理解につながります。 |
■優秀賞選出、評価理由 動物をテーマに、漢字の楽しさを体験できるブロックの提案である。30種類の動物のそれぞれ異なるシルエットが見る角度によって影の形が漢字へと変化するという新たな驚きを提供することに成功している。デジタル3Dツールを容易に扱える時代になったからこその造形と、フィジカルに学べるという体験性がとても秀逸である。 |
2:Cement Project | ||
笹川 陽子、杉浦 真也 慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 既卒 |
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■応募概要 セメントプロジェクトは、砂利不足、建築空間の機能性の低さ、環境への影響の大きさなど、コンクリート特有の課題を解決するために、GHG排出ゼロの建築資材の開発と量産化を目指している。 |
■優秀賞選出、評価理由 限りあるコンクリートの材料である良質な砂不足や製造時CO2排出量の多さという課題に対する解決の可能性を多大な時間と工数をかけて検証している。マテリアル開発という難しいテーマでありながら「コンクリート=廃棄物+水」というシンプルな方程式を使い、素材の実用性や展望を導き出している点が高く評価された。素材や作品として「完成」という段階まで達してはいないが、このテーマで研究開発を続けるに十分な材料と希望があり、今後に期待したい。 |
3:日常の死角に夢を見る。 | ||
中川 優奈 工学院大学大学院 工学研究科 建築学専攻 M1 |
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■応募概要 ここは窓ひとつない高層ビルの9階、製図室。淀みきった空気と疲れ切った人々で溢れかえる。私をバカだという指導教員がうざい。自慢ばかりしてくる先輩がうざい。彼氏ののろけ話ばかりしてくる友達がうざい。なんだか息苦しくなっている自分がいた。「1人きりになりたい。」気がつけばトイレで1人時間を溶かしていた。 |
■優秀賞選出、評価理由 「日常の死角に夢を見る。」は、都市の生きづらさに対する独自の視点から、身近な空間に小さな「アジール」(避難場所)を作り出す試みが光る作品である。都市に紛れるようなデザインでありながら、日常に新たな居場所を提供し、現代社会に必要な個人的空間を提案した点が評価された。既存の建築や大規模な解決策ではなく、建築未満の小さな操作で都市に変化を与えるコンセプトは、新たな時代の建築的思考を感じさせる。 |
4:Tokyo Dead Space 100 -空いてるスペース使ってもいいですか?- | ||
沼野 航 東京都立大学 システムデザイン学部 インダストリアルアート学科 既卒 |
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■応募概要 ビルが所狭しと並び、飽和状態のように見える首都東京ですが、土地開発のはざまで様々な形態のデッドスペースが発生しています。本書では、2023年6月から12月にかけて街中を調査し、発見した628箇所の東京デッドスペースを紹介するとともに、100個の活用アイデアをやさしいイラストでご紹介しています。 |
■優秀賞選出、評価理由 本作品は、東京のデッドスペースの潜在的価値を引き出し、街の活性化を促す試みが評価される作品である。デッドスペースを10種類に分類し、低コストで自己実現可能な活用アイデアを100個提示することで、身近に感じてもらう工夫を施している。さらに、読者からの反応を通じて、普段の街歩きの楽しさや、意識の変化が見られたことも素晴らしい成果である。デッドスペースをポジティブに活用することで、東京の都市景観の改善に寄与し、地域社会の意識向上に繋がる可能性を秘めている。 |
5:Libritude | ||
妹尾 竜矢 千葉大学大学院 融合理工学府 創成工学専攻デザインコース M1 |
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■応募概要 うつ病や障害などの理由で文章を読むことに困難がある人のための、全く新しい読書補助システム。人間工学や生理人類学の知見をもとにしたデザインイノベーション。文章の上にランダムな幅で細い直線を重ねることで、文字を読み取りやすくなる。紙面に直接印刷可能であり、環境負荷が低くどのような文字媒体にも応用が期待できる。 |
■優秀賞選出、評価理由 文章を読むことに困難を抱える方々に新たな希望をもたらす革新的な読書補助のシステムである。人間工学と生理人類学の知見を融合させた新たな視点で、文章上に幾何学的な図形を重ねるという独創的な表現を生み出している。物理的な装置を必要とせず、紙やデジタル媒体に直接適用できる点で、既存の補助器具とは一線を画す。学術的知見と創造力を駆使して社会的課題に取り組む姿勢を高く評価した。 |
6:きのこぐものしたにあったまち-ブロッククラフトで学ぶ広島・長崎歴史探訪ワークショップ- | ||
片山 実咲、濱田 璃奈、村山 美耶子、濱津 すみれ、森吉 蓉子(文化・人間情報学コース)、 山口 温大(先端表現情報学コース) 東京大学大学院 学際情報学府 |
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■応募概要 「原爆が公園の上に落ちてよかったですね」感想文に書かれた無邪気な一文。一発の原子爆弾によって焦土と化した広島・長崎の爆心地は様々なひとが日常を営むかけがえのない街であった。原爆投下前の「まち」「ひと」「くらし」を歴史資料とサンドボックスゲームを使って再建するワークショップで、「原爆が奪ってしまったもの」を考える。 |
■優秀賞選出、評価理由 終戦から80年近くが過ぎた今、どのように子どもたちに平和の大切さを知ってもらうのかは大きな社会課題である。子どもたちが大好きな“マインクラフト”という遊びのツールを使うというアイデアにより、“失われた街”を再現する圧倒的なモチベーションが生まれる。またその作品群は、保存されることで、さらに多くの人たちに訴求することができる。非常に拡張性の高いデザインであることも含め、高く評価したい。 |
7:コレクティブインパクトプラットフォーム“コソダテノミカタ” | ||
田中 惇敏 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 |
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■応募概要 本作品は、コレクティブインパクトの概念を導入し、気仙沼市内全ての子育て支援団体と市役所担当課の願いを共有している子育て当事者が集まるプラットフォームデザインです。個団体では解決できない根本的な課題を深掘り、強くしなやかで許容度の高い仕組みをつくり、この仕組みを土台として効果が最大化する活動を行うことを目指しています。 |
■優秀賞選出、評価理由 「地域で育てる」を言葉で終わらせず、コレクティブインパクトの手法を活用して実現した、まさに「仕組みのデザイン」である。多くの政策的成果を上げていることのみならず、自走していく仕組みとなったことや、論文化し再現性を求めた取り組みとなっていることを高く評価したい。気仙沼市に住む人にとって、このデザインがもたらした希望は大きいはず。そして、希望をもたらすデザインの価値は、全国どの地域にとっても大きいはずだ。 |
8:入院している小学生を対象にしたあそびのスターターキット「アドベンチャーBOX」 | ||
猪村 真由 慶應義塾大学 看護医療学部看護医療学科 既卒 板谷 勇飛 慶應義塾大学 環境情報学部 B3 飯島 百々葉 埼玉大学 教養学部教養学科 B3 松井 晴大 慶應義塾大学 総合政策学部 B4 |
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■応募概要
「アドベンチャーBOX」は、ベッドの上から冒険を始めよう!を合言葉に、入院している小学生にあそびという魔法を届けるあそびのスターターキットです。置かれた環境を何かに見立てたり、いたずら心の赴くままに想いを表出する創造的なあそびを通じて、好奇心や想像力を育み、闘病体験に前向きな物語を紡ぎ直すきっかけを創出します。 |
■優秀賞選出、評価理由 自身の経験を起点に、療養生活下にある子どもを取り巻く環境の心理的・物理的・社会的リサーチ、課題への介入としてのプロダクト・サービスデザイン、専門性を跨いだチームアップ、社会に届けるための事業展開と、どの過程をとっても大変力強いデザインプロセスが取られている。このプロジェクトに関わる様々な立場のかた自身が、次の時代を担うデザイナー像の一つの指針を示していると感じ、高く評価する。より良い社会に向けたインパクトを、引き続き描いていってほしい。 |