イスラエル・イラン紛争:市場とインフレへの影響
イスラエル・イラン紛争が続く中、原油価格はボラティリティの高い状況が続いています。エネルギー価格は高水準での推移が継続するのでしょうか?また、これによりインフレ圧力が高まるのでしょうか?
イスラエルとイランの対立により、エネルギー価格や金融市場が影響を受けている状況が続いています。
先週の金曜日(2025年6月13日)に両国が攻撃したことを受け、原油価格は13%上昇しましたが、その後、反落しました。以降、市場はボラティリティの高い状況が続いていますが、落ち着きを取り戻しつつあります。
今後の見通し
ここ数年で起こっている同様の出来事については、限定的な応酬にとどまっており、これまでイランの反応は、緊張をこれ以上高めることなく、国内の強さを示すのには十分なものとなっていました。しかし今回の衝突は、最近の激化局面よりも残忍であることが証明されています。とはいえ、イランとイスラエルの二国間の応酬であることに変わりはなく、石油市場への混乱は最小限にとどまっている状況です。
米国や一部の中東諸国(UAEやサウジアラビアなど、すでに攻撃を非難している国も含む)は、この地域において緊張を再燃させることに関心はなく、世界の石油市場の混乱も望んでいません。以前は、このような状況を沈静化させるために介入してきました。
イスラエルは、イランの脅威を取り除くために、「何日間でも」作戦を継続すると表明しています。しかし、中東諸国と米国が解決を仲介すれば、敵対関係は収束する可能性があります。
原油にとって、どのような意味があるのか?
イランがホルムズ海峡で何らかの行動を起こすことは、原油市場にとって、いわゆる災難シナリオですが、その可能性は低いと考えます。このような行動は、イスラエルへの影響は大きくない一方で、事態の調停を目指している他の中東諸国のフローに影響を与えることになるといえるでしょう。
イランの石油供給は世界供給の3.5%程度を占めています。しかし、イスラエルの目的はイランの核開発を阻止することであり、これまでほとんどの攻撃がイランの核施設や軍事施設を標的にしてきた事実と一致しています。イスラエルにとって石油生産施設は潜在的な標的であり続けていますが、石油価格を上昇させれば米国などの同盟国との関係が損なわれるとの懸念から、イスラエルはまだ石油生産施設を直接標的にしていません。
紛争を除いた市場の動向としては、世界市場の原油余剰は今後数ヵ月間続くことが示唆されています。
インフレ見通し
原油価格はこの種の紛争に敏感ではありますが、過去の同様の出来事と同じように、価格上昇はその後の数時間で緩やかになっています。仮にブレント原油価格が75ドル/バレルで落ち着いた場合、G7のエネルギー・インフレ率は今後1年間で5%を少し上回ることになります。
これは広範なインフレ圧力につながるのでしょうか?おそらく、そうはならないでしょう。
原油価格とインフレ率の関係に関する我々の過去の調査によると、原油価格が10%上昇するごとにコアインフレ率は0.1%の上昇にとどまることが示されています。
【本資料に関するご留意事項】
- 本資料は、情報提供を目的として、シュローダー・インベストメント・マネージメント・リミテッド(以下、「作成者」といいます。)が作成した資料を、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社(以下「弊社」といいます。)が和訳および編集したものであり、いかなる有価証券の売買の申し込み、その他勧誘を目的とするものではありません。英語原文と本資料の内容に相違がある場合には、原文が優先します。
- 本資料に示されている運用実績、データ等は過去のものであり、将来の投資成果等を示唆あるいは保証するものではありません。投資資産および投資によりもたらされる収益の価値は上方にも下方にも変動し、投資元本を毀損する場合があります。また外貨建て資産の場合は、為替レートの変動により投資価値が変動します。
- 本資料は、作成時点において弊社が信頼できると判断した情報に基づいて作成されておりますが、弊社はその内容の正確性あるいは完全性について、これを保証するものではありません。
- 本資料中に記載されたシュローダーの見解は、策定時点で知りうる範囲内の妥当な前提に基づく所見や展望を示すものであり、将来の動向や予測の実現を保証するものではありません。市場環境やその他の状況等によって将来予告なく変更する場合があります。
- 本資料中に個別銘柄についての言及がある場合は例示を目的とするものであり、当該個別銘柄等の購入、売却などいかなる投資推奨を目的とするものではありません。また当該銘柄の株価の上昇または下落等を示唆するものでもありません。
- 本資料に記載された予測値は、様々な仮定を元にした統計モデルにより導出された結果です。予測値は将来の経済や市場の要因に関する高い不確実性により変動し、将来の投資成果に影響を与える可能性があります。これらの予測値は、本資料使用時点における情報提供を目的とするものです。今後、経済や市場の状況が変化するのに伴い、予測値の前提となっている仮定が変わり、その結果予測値が大きく変動する場合があります。シュローダーは予測値、前提となる仮定、経済および市場状況の変化、予測モデルその他に関する変更や更新について情報提供を行う義務を有しません。
- 本資料中に含まれる第三者機関提供のデータは、データ提供者の同意なく再製、抽出、あるいは使用することが禁じられている場合があります。第三者機関提供データはいかなる保証も提供いたしません。第三者提供データに関して、本資料の作成者あるいは提供者はいかなる責任を負うものではありません。
- シュローダー/Schroders とは、シュローダー plcおよびシュローダー・グループに属する同社の子会社および関連会社等を意味します。
- 本資料を弊社の許諾なく複製、転用、配布することを禁じます。