ハーバード大学名誉教授 ロバート・キーガン博士による職員向け特別ワークショップを開催しました

東洋大学

 東洋大学(東京都文京区/学長・矢口悦子)は、2026年2月16日(月)、白山キャンパス125記念ホールにおいて、ハーバード大学教育大学院名誉教授のロバート・キーガン博士を招き、職員管理職(部長・次長・課長)を対象とした特別ワークショップを正木事務局長の主催により開催しました。成人発達理論の世界的権威であるキーガン博士が、日本の大学職員を対象としてワークショップを実施されるのは初めてのことです。  対象者の管理職に加え、理事長・学長・常務理事・理事・監事・教員部長も参加し、普段の様々な垣根を越えて、合計92名がワークショップに取り組みました。ワークショップは、参加者が2人1組のペアを組み、改善目標や自身の内面について語り合う対話形式で展開されました。事務局長は司会の傍ら、参加者としても矢口学長とペアを組み、キーガン博士が提唱する「変化への免疫」に向き合いました。同時通訳を介して実施された約2時間のワークショップは、対話と内省が幾重にも重なる、非常に密度の濃い時間となりました。 ■学長メッセージ  開会にあたり、矢口悦子学長から職員へメッセージが送られました。矢口学長は、困難な局面を共に乗り越えてきた職員一人ひとりの力があるからこそ今日の東洋大学があると述べたうえで、少子高齢化の加速や大学間競争の激化など、大きな変化の波がすぐそこまで迫っていることに触れました。そして、それぞれが「変化」と向き合い、自分たちの内側にある壁にも目を向けよう、そのために「どうか安心して本音で語り合ってほしい」というメッセージが会場を包み、ワークショップの幕が上がりました。 ■「心のレントゲン写真」を作る  キーガン博士のワークショップは、「私のような大学教員は”講義”をするものですが、今日は講義ではなく、皆さんが自分自身に新しい方法で出会うためのワークショップを行いたいと思います。」という宣言から始まりました。一般的な研修のスタイルとは一線を画し、参加者が自ら手を動かし、対話し、自分だけの「免疫マップ」(キーガン博士が提唱するImmunity to Change™ Map)、いわば心のレントゲン写真を作り上げていく過程が始まりました。  キーガン博士が紹介されたのは、4つの欄からなる自己分析のワーク(免疫マップの作成)です。最初の欄に「改善目標(自分が最も上達したいこと)」を書き、次の欄ではその目標に逆行してしまう自分の阻害行動を正直に書き出します。さらに、その行動の裏にある「隠れた目標(無意識のうちに自分を守ろうとしている力)」を探り当て、最後にそれを支えている「強力な固定観念」を自分の言葉にしていきます。  キーガン博士はこの免疫マップの仕組みを「片足でアクセルを踏みながら、もう片足でブレーキを踏んでいる状態」と表現しています。「成長したい」という気持ちは本物なのに、「失敗したくない」「今ある関係を壊したくない」という見えない力が、同時にブレーキをかけている状態です。その両方を一枚の紙の上に描き出すことが、このワークショップの核心でした。いくら強い意志で行動を変えても、やがて元に戻ってしまうのはなぜか。博士が提示したのは、意志の力で行動を変えることではなく、この2つの力の構造を可視化し、マインドセットそのものの変化を自分で促すための方法でした。 ■事務局長が免疫マップを開示  参加者から多くの反響が寄せられたのは、事務局長が自ら事前宿題として免疫マップを作成し、会場全員の前で公開したことでした。  事務局長が掲げた改善目標は、「変革を加速させる事務局体制を構築し、それを支えるリーダーシップを発揮すること」。しかし実際には、「当たり障りのない言葉を選んでしまう」「部署間の摩擦を避けようとしてしまう」といった自身の行動が、実はその目標を妨げていると打ち明けました。  そしてその根底にあるのは、「調和は壊れやすいもの」「意見の対立は関係を悪くするだけ」という固定観念であると紐解きました。事務局長は、「なんだかさらけ出してしまったような気持ちです」と苦笑しつつも、キーガン博士と会場からは、勇気を持ったその行動に大きな拍手が送られました。      (ペアワークに取り組む学長(左)と事務局長(右)) ■ワークショップの様子  ワークショップは終始、あたたかな活気に包まれていました。冒頭のアイスブレイクでは、受付で配られた番号札を頼りに会場を歩き回ってペアを探す一幕があり、普段は接点の少ない部署同士の職員が声をかけ合う姿が、あちこちで見られました。  キーガン博士の問いかけとペアでの対話が繰り返されるたびに、会場には個人ワークに集中する静けさと、活気あふれるペアワークの時間が交互に訪れました。博士から聞き手側に求められたルールはただひとつ、「聞き手は相手の問題を解決しようとしないこと、相手を評価しようとしないこと」でした。参加者は少しずつ本音を言葉にし、自身の「裏の目標(隠れたコミットメント)」への気づきを共有する様子が、会場の至るところで見られました。  また、博士が紹介した「サイの画家」の比喩は、印象的なシーンの一つでした。風景を忠実に描いているつもりのサイが、自分の角の存在に気づかず、どの絵にも三角形の影を描き込んでしまう。つまり、私たちもまた、気づかないうちに自分だけのフィルターを通して世界を見ているのかもしれない、というメッセージでした。      (活気あふれるペアワークの時間) ■「つま先をそっと浸す」ことから始める  ワークショップの終盤、キーガン博士は参加者に、「強力な固定観念」を検証するための「小さな実験」を2週間以内に計画してみるよう、それぞれのペアに促しました。大事なのは、大胆に飛び込むことではなく、安全な範囲で「つま先をそっと水に浸してみる」こと。自分が恐れていたことが、本当に起きるのかどうかを、ほんの少しだけ確かめてみる。その一歩が、意志の力だけに頼る一時的な変化ではなく、ものの見方そのものを変えていく道につながるのだと、博士は語りかけました。      (真の自分と向き合うことは「モンスターに出会うこと」だと説明するキーガン氏) ■新しい一歩のきっかけ  「何を変えなければいけないか」だけでなく、「なぜ変われないのか」について、自分自身の内側に目を向けてみる。キーガン博士との特別ワークショップがもたらしたのは、すぐに答えが出るような特効薬ではなく、一人ひとりが自分自身と向き合い続けるための、むしろ小さな、そして確かな問いでした。  閉会にあたり、事務局長は「私は学長とペアを組んで取り組みましたが、さっそく学長と実験の計画を立てました。」と笑顔で報告し、会場は和やかな雰囲気に包まれました。また続けて、「もちろん、この企画ひとつで何かが劇的に変わるわけではありません。しかし、こうしたきっかけを一つひとつ積み重ねていきたい。」と語り、「皆さんには、これからも積極的に私と関わっていただきたいですし、私自身も、今日改めて心に刻んだリーダーシップという目標に向けて、しっかり歩んでいきたいと思います。」と、ワークショップを締めくくりました。      (事務局長による司会の様子) ■ワークショップ後の懇親会  ワークショップ終了後には、8号館1階の学生食堂(SUBWAY)にて懇親会が開催されました。安齋理事長の開会挨拶のもと、40名以上の参加者が集まり、ワークショップの余韻が残るなか、部署や役職を超えた活発な交流が繰り広げられました。  また、当日の運営補助として参加した本学の学部生・大学院生も懇親会に加わり、博士を囲んでそれぞれが直接質問を投げかける場面も見られました。組織変革の世界的権威と間近で対話するこの経験は、学生たちにとっても貴重な学びの機会となりました。      (学生から交互に質問が寄せられる様子) ■キーガン博士からのコメント  今回、東洋大学の職員の皆様とワークショップを行い、その非常に高い参加意欲と、学びを「自分自身の課題」として捉える真摯な姿勢に感銘を受けました。自律的な学習への熱意は、大学の未来を切り拓く大きな原動力になると確信しています。  日本は、古くからの伝統的な文化と近代的な要素が共存する、世界でも極めてユニークな場所です。成人発達理論の観点で見れば、現代のような変化の激しい時代には、周囲の期待に応える「環境順応型知性」から、自らの価値体系を確立する「自己主導型知性」、そしてさらなる高みである「自己変容型知性」への発達が不可欠です。  日本独自の「終身雇用」や「家族的な組織文化」は、決してイノベーションの妨げにはなりません。大切なのは、その組織(家族)が、現状維持を求めるのか、あるいは互いの変化と挑戦を奨励し合えるのか、という点にあります。  これまでの大学は、若者が社会に出る準備をするための場所でした。しかし、本来「発達」に終わりはなく、30代、40代、50代といった成人期においても、人は成長し続ける必要があります。  東洋大学をはじめとする高等教育機関には、若者教育の枠を超え、成人の発達を継続的に支援する「生涯にわたる学びの場」としての役割が期待されています。この変革こそが、これからの社会における大学の新たな価値となるでしょう。      (大学スタジアムジャケットに袖を通し、「野球好きにはたまらない」と笑顔      (東洋大学グローバルサービス株式会社製品)) ■「変化」とは心を少し動かしてみること  ワークショップの冒頭、キーガン博士は参加者へ「Now it's my job to see if I can be helpful in you moving your minds around a little bit as well.(皆さんの心をほんの少しだけ動かすお手伝いができるかどうか、それが今日の私の役割です。)」と語りかけていました。  今回、参加者の中に生まれた小さな波が、やがて思いもよらない変化を生むかもしれません。東洋大学の職員は、この新しいきっかけを活かし、日本の教育研究を支える取り組みを、職員の立場からもさらに広げてまいります。 【開催概要】 名称:ロバート・キーガン博士 特別ワークショップ 日時:2026年2月16日(月)10:30〜13:00 会場:東洋大学 白山キャンパス 125記念ホール 講師:ロバート・キーガン博士(ハーバード大学教育大学院 名誉教授) 対象:管理職職員(部長・次長・課長) 主催:学校法人東洋大学事務局長(共催:経営企画本部事務室、業務改革室、人事部) 通訳:サイマル・インターナショナル株式会社 【学校法人 東洋大学について】 東洋大学は1887年に哲学者・井上円了により「哲学館」として創立され、「諸学の基礎は哲学にあり」「独立自活」「知徳兼全」を建学の精神としています。創立者の志を受け継ぎ、東洋大学の教育理念である「物事の本質に迫って深く考え、考察を重ねること」を基礎とし、科学する力、実践する力を育てることで、地球社会の様々な課題に取り組む力を養うことを目指しています。 2025年度現在、白山、赤羽台、川越、朝霞キャンパスに14学部51学科専攻と大学院15研究科を擁する総合大学へと発展しました。    <東洋大学HP> https://www.toyo.ac.jp/ ▼本件に関する問い合わせ先 東洋大学 総務部広報課 住所:東京都文京区白山5-28-20 TEL:03-3945-7571 メール:mlkoho@toyo.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

その他のリリース

話題のリリース

機能と特徴

お知らせ