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北里大学医学部(解剖学)の太田博樹准教授らの研究グループが九州大学の樋口重和教授らとの共同研究により、ヒトの光感受性の指標であるメラトニン分泌抑制に見られる個人差に、時計遺伝子の1つであるPER2遺伝子のバリエーションが関与していることを示した。この研究成果は、2017年6月27日(火)午前3時(日本時間)に米国のオンライン学術誌「PLOS ONE」で公開された。
【発表のポイント】
●どのような成果を出したか:
ヒトの光感受性の指標であるメラトニン分泌抑制に見られる個人差に時計遺伝子の1つであるPERIOD2(PER2)遺伝子のバリエーションが関与していることを示した。また、そのPER2遺伝子のバリエーションのうち、アフリカに多い祖先タイプは光感受性の低いタイプで、約7万年前のホモ・サピエンスの出アフリカ後、光感受性の高いタイプが頻度を増した可能性を示した。
●新規性(何が新しいのか):
メラトニン分泌抑制は体内時計とは関係なく光刺激によって起こることが常識であった。本研究の新規性は、これまでのこの知見と反して、体内時計に関与するPER2遺伝子の多型が、光刺激に対するメラトニン分泌抑制率の個人差と関係していることを示したことである。
●社会的意義/将来の展望:
ホモ・サピエンスが世界中に拡散する際に様々な光環境に適応する必要があったと想像される。本研究の成果は、その光環境適応をPER2遺伝子多型は担った可能性を示唆する。今後は、さまざまな光環境のもとでどのような適応進化が進んだか、その詳細を明らかにしたいと考えている。
【発表の概要】
メラトニン分泌抑制の生理的多型に関して時計遺伝子PER2の多型との関連を調べた結果、PER2ハプロタイプ間で抑制率は有意に異なっていた。また、高抑制ハプロタイプ頻度が非アフリカ集団で高かった。すなわち、[1]これまで個人の可塑的変化だけから捉えられてきたメラトニン分泌抑制の生理的多型が遺伝的多型に基づく可能性が示唆され、[2]低抑制タイプが祖先型で、派生型である高抑制タイプがアフリカの外で増加したことが示された。
【発表雑誌】
●雑誌名:PLOS ONE(オンライン公開:2017年6月27日 午前3時(日本時間)) RESEARCH ARTICLE
●論文名:An ancestral haplotype of the human PERIOD2 gene associates with reduced sensitivity to light-induced melatonin suppression(和訳:PERIOD2遺伝子の祖先型ハプロタイプは光で誘導されるメラトニン抑制に対する感受性を下げる生理的多型と関連する)
●著者名:Tokiho Akiyama, Takafumi Katsumura, Shigeki Nakagome, Sang-il Lee, Keiichiro Joh, Hidenobu Soejima, Kazuma Fujimoto, Ryosuke Kimura, Hajime Ishida, Tsunehiko Hanihara, Akira Yasukouchi, Yoko Satta, Shigekazu Higuchi, Hiroki Oota
●URL:
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0178373
【研究グループ】
●秋山 辰穂 #(総合研究大学院大学)
●勝村 啓史 (岡山大学)
●中込 滋樹 (トリニティカレッジダブリン大学)
●Sang-il Lee (九州大学)
●城 圭一郎 (佐賀大学)
●副島 英伸 (佐賀大学)
●藤本 一眞 (佐賀大学)
●木村 亮介 (琉球大学)
●石田 肇 (琉球大学)
●埴原 恒彦 (東京大学総合研究博物館)
●安河内 朗 (九州大学)
●颯田 葉子 (総合研究大学院大学)
●樋口 重和 *(九州大学)
●太田 博樹 *(北里大学)
#・・・第1著者
*・・・責任著者
▼本件に関する問い合わせ先
●北里大学 医学部 解剖学
准教授 太田 博樹(オオタ ヒロキ)
TEL: 042-778-9022
E-mail: hiroki_oota@med.kitasato-u.ac.jp
●九州大学 芸術工学研究院 デザイン人間科学部門
教授 樋口 重和(ヒグチ シゲカズ)
TEL: 092-553-4523
E-mail: higu-s@design.kyushu-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
http://www.u-presscenter.jp/