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実践女子大学(東京都日野市、学長 城島栄一郎)の作田由衣子専任講師および、中央大学 山口真美教授、日本女子大学 金沢創教授らの共同研究グループは、赤ちゃんでも顔からその人が信頼できそうかどうかという印象を知覚している可能性があることを発見しました。
研究成果は、第一印象の形成には複雑な社会的相互作用の経験は必要ないことを示唆しています。この研究成果が、アメリカの学術雑誌「PLOS ONE」(2018年9月6日発行)に掲載されました。
【本研究のポイント】
●6~8か月の乳児が、大人から見て「信頼感が高い顔」を良く注視することが判明した。
●顔の向きを上下逆さにして見せると、顔の印象が分からなくなってしまう可能性があると判明した。
●信頼感の印象は1歳未満の乳児でも知覚できると仮定すると、信頼感を示す情報を受け取るためにはあまり社会的な経験は必要ないと考えられる。
研究の概要
人は顔を見ると「いい人そう」「強そう」など、自動的にさまざまな印象を知覚します。社会で生きる上で、他者が自分にとって味方となりそうか等を評価する能力は非常に重要ですが、これまでその発達過程についてはほとんど解明されていませんでした。もし印象知覚が多くの社会的経験を必要としないなら、1歳未満の乳児でも印象を知覚することができると考えられます。
今回の実験では、6~8か月の乳児44名が参加しました。使用した画像はPrinceton大学のAlexander Todorov教授らの研究で作成されたCGの顔画像です。社会的認知の主要な2つの印象である「信頼感」(いい人そう)と「支配性」(強そう)の組み合わせで4つの顔を選び、信頼感が高い顔と低い顔のペアを2つ(支配性が高い顔同士/低い顔同士)作りました(図1)。
実験1では、信頼感の高い顔と低い顔を並べて提示し、乳児がどちらに注目するか、注視時間を測定しました。その結果、支配性が高い顔同士のペアでは信頼感の高い顔をより注視するという結果が得られました(図2)。
次の実験2では、顔の向きを上下逆さにした以外は実験1と全く同じ方法で実験を行いました。その結果、どちらか一方の顔への注視の偏りは見られませんでした。
研究の意義
顔からの印象判断についての研究は、現在非常に注目を集めていますが、幼い子どもがどのように印象を知覚しているかはまだほとんど研究が行われていません。対人的な相互作用などの経験から人を見る目が養われるように思われがちですが、本研究の成果から、顔からの印象判断については、ほとんどそうした相互作用は必要ないと考えられます。むしろ、顔の持つ単純な物理的情報から直接印象を知覚しているのに、その人物の性格を推測しているかのように錯覚しているという可能性があります。見た目の印象はその人の内面を正確に反映しているわけではないことを示す研究は他にもあり、今回の研究もそれを支持するものです。
例えば就職や入試などの面接場面や、選挙での投票など、さまざまな場面で見た目の印象が選択判断に影響することがこれまでの研究から分かってきています。今回発表された研究結果から、そうした見た目の印象に基づく判断が間違いを引き起こしてしまう可能性があると考えられます。
この研究はJSPS科研費 JP24653216,JP17H06343,JP15K04192の助成を受け行われました。
論文情報
Infants Prefer aTrustworthy Person: An Early Sign of Social Cognition in Infants
Yuiko Sakuta, So Kanazawa,Masami K. Yamaguchi
PLOS ONE 2018 (in press) DOI:10.1371/journal.pone.0203541
※「PLOS ONE」
2006年に創刊されて以来、急速な成長を続け、2013年には年間3万本以上の論文を掲載する世界最大の学術雑誌。自然科学や医学、社会科学など多岐に渡る分野の一次研究論文を扱っている。
【お問い合わせについて】
■研究内容に関するお問い合わせ
実践女子大学 生活科学部 生活文化学科 専任講師 作田由衣子
E-mail:sakuta-yuiko@jissen.ac.jp
■プレスリリースおよび本件の取材に関するお問合せ
実践女子学園 企画広報部
電話(042) 585-8804
E-mail:koho-ml@jissen.ac.jp
公式HP:
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【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/