静岡県の救急外来、年5回以上受診者が総件数の4.1%、医療費の1.9%を占める
横浜市立大学大学院データサイエンス研究科 ヘルスデータサイエンス専攻 金子 惇 講師 (研究当時:浜松医科大学地域家庭医療学講座特任助教)が米国ピッツバーグ大学、ミシガン大学、ラトガース大学との共同研究で、年に5回以上の救急外来利用者を「頻回救急外来受診者」と定義して静岡県内の2次救急病院・3次救急病院での割合を調査したところ、受診者の約0.6%、受診件数全体の4.1%、医療費の1.9%を占めていたことがわかりました。
この研究成果は、国際医学雑誌BMJ Openに2020年9月7日に掲載されました。
<研究の背景>
同じ人が複数回救急外来を受診する「頻回救急外来受診」は、救急外来の負担や医療費増大などの観点から世界的に課題となっています。しかし、日本ではこれまで単施設についての報告が主であり、費用に関する検討も十分ではありませんでした。そこで今回は静岡県内の2病院の協力を得て、頻回救急外来受診者の割合及び2次救急病院と3次救急病院での頻回救急外来受診者の特徴の違いを調査しました。
<研究の成果>
静岡県内の2次救急病院、3次救急病院それぞれ1か所の救急外来を1年間に受診した20,388人(25,231件)の診療録を調査したところ、頻回救急外来受診者は134人(1,043件)で全体の4.1%でした。これらの頻回救急外来受診者にかかる医療費の合計は7200万円で、2病院の総医療費に占める割合は1.9%でした。頻回救急外来受診に関連する要因は年齢、生活保護受給が有意となっていました。
<今後の展開>
今回の調査結果では、諸外国の先行研究に比較して、頻回救急外来受診者の割合や医療費に占める割合の少ないことが分かりました。今後は、この結果が日本の他の地域にも当てはまる傾向なのか、もしそうであればなぜ日本では少ないのかなどの研究に繋げていく予定です。また、海外では患者さん・医療機関双方の負担を減らすために頻回救急外来受診を適切に減らす方法が検討されており、日本でもその様な研究に繋がっていくと考えられます。
<発表雑誌>
BMJ Open
https://bmjopen.bmj.com/content/10/9/e039030
<論文タイトル>
Differences between frequent emergency department users in a secondary rural hospital and a tertiary suburban hospital in central Japan: a prevalence study
<著者>
Makoto Kaneko, Machiko Inoue, Masashi Okubo, Allison K. Cullen Furgal, Benjamin F. Crabtree. Michael D Fetters
<研究グループ>
浜松医科大学 地域家庭医療学講座
金子 惇 特任助教(研究当時、現横浜市立大学 講師)
井上 真智子 特任教授
ピッツバーグ大学
大久保 雅史
ミシガン大学
Allison K. Cullen Furgal, Michael D Fetters
ラトガース大学
Benjamin F. Crabtree.