【ニュースレター】山間地の小規模農家から始まる「スマート農業」
産業用マルチローターのオペレーター資格を取得した春野町の皆さん
「地域の子どもたちの目に、この姿がどう映りますかね? もし『おもしろそう!』とか『かっこいい!』と感じてくれたら、春野町の未来は明るいんですけど」。産業用マルチローター(以下ドローン)「YMR-08」を前にそう言って笑うのは、静岡県北西部の山間地、春野町で農業を営む山下光之さん(写真左)。山下さんらが生産から加工まで手掛ける切干大根「山のするめ大根」は、春野町の特産品の一つです。
40代半ばの山下さんは、地方創生のキーワードである「まち・ひと・しごと」を体現し、地域の農業を牽引する存在です。東京からのUターンで家業を継ぎ、持ち前の柔軟な発想と行動力で過疎や高齢化、後継者不足といった地域の課題に風穴を開けようとしています。
現在、山下さんのダイコン畑では、浜松市が進める「中山間地スモールスマート農業実証プロジェクト」の一環として、ドローンによる液体肥料の散布やセンシングによる生育管理などが行われています。山下さん自身、ロボット技術や情報通信技術の導入は「こうした山間地の小規模農家にこそ必要」と考え、地域の仲間たちとともに産業用マルチローターのオペレーター資格も取得しました。
山間地の耕作放棄地を再生したダイコン畑
省力化と品質向上を同時に目指す
中山間地とは、農業地域の類型において中間農業地と山間農業地を合わせた区分を指し、山地の多い日本では国土の約7割を占めています。こうした地域の農業は、点在する田畑の間の移動や斜面での労働など、平地と比較して労働負荷が大きいとされています。
「作業の担い手がなく、耕作放棄によって荒れてしまった畑がこのあたりにはたくさんあります。スマート農業によって省力化が進めば、私たち若手の手で荒廃した農地を再生することもできる。実際、私も茶畑だった荒地を借りてダイコンを育てています」(山下さん)
実証プロジェクトでは、スモールスマート農業の可能性を期待させる成果も見え始めています。「これまでのところ生育状況も順調で、労働負荷の軽減や生産性の向上が実証できれば、同じ畑で冬はダイコン、夏はトウモロコシということも実現できる」と期待を広げています。
「じつは毎年育てているダイコンでも、最適な追肥の方法が明らかにはなっていません。ただ、ドローンを使えば、畑をいくつかに区切って効率的に生育状況を検証することも可能になります。スモールスマート農業は省力化のためだけでなく、品質向上にもつながるはずです」
いま山下さんら地域の未来の担い手たちは、スマート農業機材を共同で購入し、シェアリングしてはどうかと検討をしているそうです。
■広報担当者より