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法政大学自然科学センター・国際文化学部 島野智之 教授(動物分類学)は、偶然目にしたTwitterへの投稿写真から、海岸性ダニ類の新種「チョウシハマベダニ(ササラダニ類)」を発見しました。日本-オーストリア研究チームによって新種として記載され、この発見は科学分野の成果に繋がりました。
【発表のポイント】
(1)Twitterで偶然見つかった世界で初めての動物の新種(生物では2例目。1例目はデンマークの生物学者による新種の菌類)
(2)(i) ソーシャルメディア(SNS)の利用によって、一般ユーザが誰でも新種の発見や生物多様性の解明に協力・参加できる事が示唆された。(ii) SNSは時間がかかる新種の発見のスピードアップを促すことができ、科学の発展に繋がる可能性が示された。(iii) 未知の生物情報の多くは、未だSNSに埋もれている。
(3)日本で発見されたハマベダニ属の2番目の種、東アジアでは南限(日本からの1種目は、同教授の研究チームが北海道から2019年に新種記載、当時の南限)
(4)ハマベダニ類は地衣類などが餌で、豊かな自然を好み、漁港のような人工環境からの発見は珍しい。銚子の豊かな海岸環境が未発見の種を育んでいた。
島野教授は、会社員(アマチュアカメラマン)根本崇正氏(千葉県松戸市在住)がTwitter上で投稿された1枚の写真に目をとめ、それがハマベダニ属のダニ(ササラダニ類)であることに気づきました。島野教授のチームが2019年に日本で初めてハマベダニ属のダニを北海道(当時、南限)から新種記載したものの、本属は東アジアでは北海道以南からみつかっていませんでした。そこでこの画像のハマベダニ属は、既知種と形態が微妙に異なるため新種のダニではないかと考えました。
当時、根本氏は休暇中で、銚子外港に釣りに来ていたものの、釣れずに時間をもてあましていました。そこで根本氏は趣味の一つである小さな節足動物の写真を撮影してツイートしました。
その後、島野教授は当ツイートを偶然見つけ、すぐにtwitter上から根本氏に連絡をとり、数日後には銚子外港へダニの採集に向かいました。双方とも面識がなかったため、根本氏はTwitterのメッセージ機能を使って島野教授に撮影場所を指示しました。場所特定後、島野教授は銚子外港や堤防の一部分からハマベダニを採集しました。
採集後、島野教授は共同研究チームのグラーツ大学(オーストリア)・動物学研究施設・講師のトビアス=プフィングスティル博士とチェックを行い、新種であることを確認しました。発見のきっかけがTwitterであったことにちなみ、「Ameronothrus twitter」という学名(和名:チョウシハマベダニ)を名付けました。ササラダニ類は人体には全く影響は与えず、落ち葉や地衣類などの有機物を餌とします。また、環境指標種として豊かな自然環境の指標になることが知られています。銚子の海岸環境の豊かな自然が、未発見の種を育んでいたと考えられます。このようにITを利用して発見された種はまだほんの一握りで、市民科学の観点からも今後多くの応用が期待できます。
※本研究は、独立行政法人日本学術振興会とオーストリアFWFとの二国間交流事業(共同研究)による支援を受けました。
■ 発表雑誌:Species Diversity(スピーシーズ・ダイバーシティー)誌(日本動物分類学会誌)2021年3月22日(月)に公開予定
・論文タイトル:Ameronothrus twitter sp. nov. (Acari, Oribatida) a New Coastal Species of Oribatid Mite from Japan(英文)
・著者: Tobias Pfingstl, Shimpei F. Hiruta, Takamasa Nemoto, Wataru Hagino, and Satoshi Shimano
▼本件に関する問い合わせ先
法政大学自然科学センター・国際文化学部 教授 島野 智之
メール:sim@hosei.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/