世界初、アルプスアルパインと宇都宮大学が空中表示/入力デバイス「ステルス空中インターフェース」を共同開発
非接触操作にさらなる安全・快適・感動をもたらす次世代HMI
アルプスアルパイン株式会社(TOKYO:6770、代表取締役社長:栗山 年弘、本社:東京、以下「アルプスアルパイン」)と国立大学法人宇都宮大学(以下「宇都宮大」)は世界で初めて、再帰性反射技術による映像の空中表示と高感度静電容量検出技術による空中入力操作を同時に実現しつつ、加飾印刷技術を応用したデザイン性に優れるステルスアイコン機能も搭載した、次世代HMI(Human Machine Interface)製品「ステルス空中インターフェース」を共同開発しました。ニューノーマル社会においてユーザーに安全・快適・感動をもたらす、これまでにない新たな非接触操作体験を提供します。本製品は2021年12月1~3日に行われたディスプレイ技術とその関連学術分野の国際会議であるIDW(International Display Workshops)で、アルプスアルパインと宇都宮大による共同発表を実施しており、ディスプレイ業界の有識者からも高い評価を得ています。今後は市場調査を進めるとともに製品の完成度を高め、まずは25年を目途にエレベータや券売機など公共空間、セキュリティが求められるエリアでの表示/操作部への採用を目指します。◆ ◆ ◆
取り組み背景
エレベータスイッチや電車の券売機、スーパーマーケットのセルフレジなど公共空間の入力デバイスにおいては、「だれが触ったか分からない」「操作部が汚れている」「自身の手が汚れている」などの理由から、直接触れて操作することに抵抗感を抱くシーンが多く存在します。昨今では新型コロナウィルスの影響により感染症リスクの懸念も増大し、この抵抗感はこれまで以上に強く顕在化しました。また、接触操作により操作部に残された指紋の盗難なども社会課題となっています。これら衛生面への配慮やセキュリティリスクの低減などを目的に、ニューノーマル社会の各種入力デバイスでは非接触操作のニーズが高まっています。
一方で、既存の非接触操作デバイスではどの程度離れた距離から操作が可能か感覚的に分かりづらいため、ユーザーは操作時にストレスを感じたり、けっきょく触れて操作してしまう課題があります。非接触操作の普及にはより直感的で快適な操作性が求められています。
アルプスアルパインでは、2008年から独自の高感度静電容量検出技術による空中入力デバイスの開発に取り組んでまいりました。昨今の非接触操作ニーズの高まりを受けてAirInput™の商標を取得するとともに製品開発を加速。21年5月にエレベータや館内照明スイッチへ試験導入※1しました。以降AirInput™は、22年の量産に向けた準備とさらなる拡販活動を継続しております。また、光通信レンズ開発などで培ってきたコア技術領域の一つである光学分野において、19年より再帰性反射技術を用いた映像の空中表示に関する要素技術開発にも取り組んでまいりました。
宇都宮大では、山本研究室にて14年より再帰性反射技術を応用した映像の空中表示をはじめとした、3Dディスプレイやマルチモーダル感性情報工学に関する研究に取り組んでいます。研究室主催の山本 裕紹教授は同分野の先駆者として多数の論文受賞歴を有します。
この度、アルプスアルパインが開発する独自の高感度静電容量検出技術を用いた非接触操作デバイスと、宇都宮大が研究を進める映像の空中表示に関する理論をベースとした再帰性反射技術を融合させることで、より直感的で快適な非接触操作を実現し、非接触操作デバイスの社会普及を加速できると考え、共同開発に着手する運びとなりました。
取り組み内容
また、本製品には加飾印刷技術も応用しました。これにより、木材や金属などを模した一見ではディスプレイであると判別のつかない意匠性に優れたデザインの筐体上に、静電容量の変化に応じて手が近づいた時だけ映像を空中表示するステルスアイコン機能の付与を可能とし、セット製品のデザイン性を高めます。
非接触により感染症リスクおよび指紋盗難リスクを低減してユーザーの安全に貢献するとともに、高い操作性および空間と一体化した周囲の雰囲気を損なわないデザイン性の高さにより、これまでにない快適かつ感動的な新たな非接触操作体験を提供します。
静電容量検出技術、再帰性反射技術、加飾印刷技術を融合させた空中HMI(Human Machine Interface)は本共同開発品が世界で初めてです。カメラや赤外線を利用した非接触技術と比較して、特に近距離操作時の入力精度の高さやデザイン性の高さに強みがあります。また、筐体の外部にセンサやプロジェクターを設置する必要が無いので、セットの設計自由度も高く、幅広い用途での利用が期待できます。
なお、高感度静電容量センサや空中表示用光学素子といったコンポーネントから、ユーザーに分かりやすく情報提示するためのUI(User Interface)設計、またそれらを繋いで入力に対し適切かつ滑らかな出力を実現するシステム設計まで、一気通貫で提供できるのはアルプスアルパイン独自の強みです。宇都宮大が世界に先駆けて研究を進めている空中表示の制御に関する理論をベースに製品としての完成度を高めてきます。
また、本製品は21年12月1~3日に行われた世界最大規模のディスプレイ技術とその関連学術分野の国際会議であるIDW(International Display Workshops)で、アルプスアルパインと宇都宮大による共同発表を実施しており、ディスプレイ業界の有識者からも高い評価を得ています。
<共同開発の役割>
宇都宮大
・映像の空中表示の制御に関する理論の構築
・学会発表などを通じた技術の信頼性獲得
アルプスアルパイン
・空中インターフェースに最適なハードウェア設計・制御技術の開発
・ユーザーや利用環境に応じた最適なUIおよびシステム制御技術の開発
・商品化および販売
今後について
市場調査を実施してニーズや課題の深堀りを進めるとともに製品の完成度を高め、まずは25年を目途にエレベータや券売機など公共空間における表示/操作部への採用を目指します。また、アミューズメント機器や車載機器などへの応用も検討。さらに将来的には、XR(Extended Reality)※3を活用したサービスが一般的となる時代を見据えて、ゴーグルなどのウェアラブルデバイスを不要とする人体への負荷が少ない視覚情報提示デバイスとしての事業展開も視野に開発を進める予定です。ニューノーマル社会のHMI(Human Machine Interface)においてユーザーに安全・快適・感動をもたらすとともに、2030年以降の人とサイバー空間が違和感なく調和する社会への貢献を目指します。
※1 2021年5月17日発表「空中入力ソリューションAirInput™がリクルート新社屋のエレベータ操作
盤と館内照明スイッチへ試験導入」
https://www.alpsalpine.com/j/news_release/2021/0527_01.html
※2 VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)などざまざまな仮想空間技術の総称。現実
世界と仮想世界を融合させて新しい体験を提供したり、実際には検証すること
ができない新たなシミュレーションを可能とする。
アルプスアルパインについて
アルプスアルパインは1948年の創業以来、数多くのFirst 1・Number 1製品を生み出してきた電子部品および車載情報機器メーカーです。HMI(Human Machine Interface)、センシング、コネクティビティ、ソフトウェア開発、システム設計のコア技術を融合・進化させた製品開発が強みです。 製品バラエティは、スイッチやセンサ、通信モジュール、タッチパネル、カメラ用アクチュエータ、パワーインダクタなどのデバイス製品から、車載向け電子シフターやリモートキーレスエントリシステムなどのユニット製品、ブロックチェーン技術を活用したデジタルキー、物流遠隔モニタリングといったシステム製品、カーナビゲーションやカーオーディオなどの市販向け製品など多岐に渡り、約40,000種類に及びます。世界26の国と地域に110拠点を展開し、これら製品を自動車、エネルギー、インダストリー、その他モバイル機器など民生市場を中心としたグローバル約2,000社のお客様へ提供しています。詳細はこちら:https://www.alpsalpine.com
宇都宮大学 山本研究室について
山本裕紹(工学部基盤工学科情報電子オプティクスコース教授、オプティクス教育研究センター(CORE) リアルワールド情報光学領域長、ロボティクス・工農技術研究所(REAL)副所長)を研究主宰者(PI)として、陶山史朗(CORE特任教授)、八杉公基(CORE特任准教授)とともに、光工学分野の教育と研究に取り組みます。空中ディスプレイに関わる基礎から国際標準化を含む社会実装、水中ディスプレイを用いたVR動物学実験、およびこれらへのAIの活用に取り組みます。
詳細はこちら:http://www.yamamotolab.science/
以上