【ニュースレター】連成解析による「音の見える化」で農業現場に貢献
「バババ…」の正体を解き明かす
農業の近代化に「空からの散布」等で貢献する産業用無人ヘリコプター(以下・産業用無人ヘリ)。働き手の減少や高齢化が進む日本各地の農業現場で、頼れるパートナーとして活躍しています。また近年では運搬、観測、調査など、さまざまなソリューション分野にも活躍の領域を広げています。
「稼働時の静音性をさらに一段高めることができたら、活用のフィールドはもっと広がるはず」。そう話すのは産業用無人ヘリ「FAZER R」の設計者、水野健太さん(当社・UMS事業推進部)です。「その足掛かりとして、連成解析による“音の見える化”に取り組んでいます」と話します。
上空を飛ぶヘリコプターの「バババババ……」という音は、エンジンが発する音や、ローターの流動音が混ざり合って聞こえています。水野さんらが取り組む「連成解析」とは、静音化のための音響解析だけでなく、流体解析、構造解析など、複数のシミュレーションを統合した複雑な解析手法です。これによってローターの流動音の正体を解明し、さらに静かで愛される農業現場のパートナーの開発を目指しています。
開発プロセスの革新にも期待
「水稲防除のピークは夏の暑い時期。騒音の低減は作業者の皆さんの負担を軽くすることにもつながりますし、住宅地に近い圃場でもお使いいただいているため、より静かな製品が求められています」。静音化に向けたモチベーションについて、そう話す水野さん。10年ほど前、4ストロークエンジンの採用によって前モデルから3dBの騒音低減を果たした後も、静音化は重要な開発テーマの一つになっています。
水野さんらが取り組む連成解析によって、「バババ…」の正体解明は大きな前進を見せました。その知見は製品開発の領域だけでなく、より静かな「飛ばし方」の習得などにもつながっていく可能性を秘めています。さらに、先行開発や製造技術、また製造部門との連携を取りながら、「(この解析技術を)開発プロセスの革新や、製品の基本構造の変革にもつなげていきたい」という大きな志も抱いています。
昨年末、スウェーデンから嬉しいニュースが届きました。MSC社※の解析ツール「Nastran」を利用する世界中のユーザーを対象にした活用事例のコンテストで、水野さんらの「流体+構造+音響の連成解析」が1位に選出されたのです。
「とても光栄なこと。嬉しく感じています。これを励みに、より静かでフレンドリーな製品開発を進めて、農業現場で働く皆さんのお仕事に貢献していきたいと思います」(水野さん)
※MSC社= MSC Software Corporation/シミュレーションソフトウェアを専門とする米国のソフトウェアテクノロジー企業。2022年現在、スウェーデンのHexagon社の一部として製造業のデジタルトランスフォーメーションを支援。
■産業用無人ヘリコプター製品情報:https://www.yamaha-motor.co.jp/ums/heli/
■広報担当者より
国際的な解析ツールの活用事例コンテスト「MSC Nastran エクセレンス・アワード」で、見事1位に輝いた水野さんらの連成解析の取り組み。副賞として贈られた1,000ドルは、盲導犬育成資金を募る「YAMAHA NICE RIDE募金」に全額寄付をしたそうです。