世界初の国際共同研究により、本邦発の大腸内視鏡AI医療機器の精度を実証
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昭和大学横浜市北部病院消化器センター長の工藤進英特任教授らが開発した人工知能(AI)内視鏡診断ソフト(以下、「EndoBRAIN」)の有用性に関する国際共同研究成果が、最も権威ある医学雑誌とされる『New England Journal of Medicine』の姉妹誌『NEJM Evidence』に掲載されました。本邦発の内視鏡AI医療機器の精度を評価した、この国際共同研究は世界初の試みであり、EndoBRAINを使用することで医師の診断精度が向上し、患者負担が軽減することが期待されます。
【研究の背景と目的】
大腸がんは日本人女性のがん死亡数の1位、男性でも3位と増加傾向で、効果的な対策が求められるがんです。その対策として、大腸内視鏡で早期がんや前がん病変である腫瘍性ポリープを切除することで、大腸がんによる死亡を大幅(53-68%)に減らせることが知られています(Zauberら New England Journal of Medicine 2012, Nishihara et al. New England Journal of Medicine 2014)。しかし、これらの病変の中には切除する必要のない非腫瘍性ポリープもあるため、大腸内視鏡検査中にリアルタイムで切除すべき病変か経過観察してよい病変かを見分ける必要があります。
昭和大学横浜市北部病院消化器センターは、このような内視鏡診断をサポートする人工知能(AI)ソフトを名古屋大学大学院情報学研究科の森健策研究室(AIエンジン開発を担当)及びサイバネットシステム株式会社(以下「サイバネット」・システム化を担当)と連携して開発してきました。2018年12月にはこの研究成果の第1弾として内視鏡画像を解析し、医師の診断を補助するソフトウェアEndoBRAIN(R)(注1)が国から承認され臨床で使用されています。
※EndoBRAINについて
EndoBRAINは本邦初のAIを搭載した医療機器診断プログラムです。医師が内視鏡画像を撮影すると、瞬時に撮影した病変が腫瘍性なのか非腫瘍性なのかをAIが出力します。腫瘍性病変は治療する必要があり、非腫瘍性病変は経過観察すべき病変です。非腫瘍性病変に対する不要な治療は、出血などの偶発症のリスクをはらむため、患者負担を考え避けるべきとされています。
【研究成果】
この研究は昭和大学横浜市北部病院消化器センター、オスロ大学(ノルウェー)、キングス・カレッジ(ケンブリッジ大学の関連病院・イギリス)との国際共同研究です。1289名の患者さんに同意のうえでEndoBRAINが使用され内視鏡検査が実施されました。研究に参加した内視鏡医は専門医ではない一般的な診断力を持つ医師に限定しました。この研究で合計892病変が発見されこのうち359個が腫瘍病変でした。EndoBRAINを使用することによって内視鏡医の腫瘍診断における特異度(注2)(非腫瘍を非腫瘍であると識別する精度)は83.1%から85.9%に上昇しました。また医師が高い自信をもって診断できる病変数の割合はEndoBRAINを使用することによって74.2%から92.6%と大幅に向上しました。なお、主要評価項目である感度(注3)については統計学上有意な差をみとめませんでした。
【研究成果の意義】
これらの結果から、EndoBRAINを使用することで医師は治療が不要である非腫瘍を高い確信度で識別することが可能となりうることがわかりました。これは、不要なポリープ治療数を減らす強力な武器となり、係る医療費を軽減することが期待されます。このようにAIによる病変の鑑別診断を国際共同研究というフォーマットで実施した研究は大腸内視鏡では初の成果であり、世界で最も権威のある『New England Journal of Medicine』の姉妹誌『NEJM Evidence』に掲載されました。
<本研究への支援>
文科省科学研究費・ノルウェー科学研究費・ノルウェー癌協会研究費
<用語解説>
注1:「EndoBRAIN(R)」...2018年12月6日に薬機法承認を取得した、本邦初の内視鏡AIソフトウェアです。サイバネットシステム株式会社が製造を担当し、オリンパス株式会社から2019年3月に販売開始されています。
注2:「特異度」...腫瘍性病変における特異度とは、病理学的に非腫瘍性と診断された病変のうち、内視鏡医が非腫瘍と正しく診断できた病変の割合です。
注3:「感度」...腫瘍性病変における感度とは、病理学的に腫瘍性と診断された病変のうち、内視鏡医が腫瘍と正しく診断できた病変の割合です。
<本件に関する問い合わせ先>
【研究内容に関する問い合わせ】
◆昭和大学横浜市北部病院消化器センター
E-mail: kudos@med.showa-u.ac.jp