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昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)大学院生の赤須里沙子さん(論文執筆当時:医学研究科生化学4年)、宮崎拓郎准教授(医学部生化学講座)、宮崎章教授(同)を中心とした研究グループは、慶應義塾大学、九州大学、ロンドン大学との共同研究により、細胞内プロテアーゼ「カルパイン」により肝臓内でアミノ酸が産生され、脂肪肝の発症につながる仕組みを世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、2022年4月18日(米国東部標準時間)に米国生化学分子生物学会誌『Journal of Biological Chemistry』のオンライン版に掲載されました。
研究の背景
アミノ酸は人間の生存に必須の栄養素ですが、肥満や糖尿病が発症すると体内でのアミノ酸バランスが崩れ、これが合併症である肝疾患の原因の一つになることが知られています。炎症を伴わない脂肪肝から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)までを含む一連の肝疾患(NAFLD)の患者は国内で1,000万人以上と推定されており、社会的にも極めて注目度の高い疾患です。アミノ酸は人間の体内では主に腸内細菌や筋肉が作ると考えられてきましたが、肝臓内部でのアミノ酸産生についてはこれまで注目されていませんでした。
研究成果
研究グループは、マウスに長期間高脂肪食を摂取させたところ、肥満・糖尿病の発症とともに肝臓で異形の血管内皮細胞が出現し、同細胞でタンパク質分解酵素の「カルパイン」が増加することを発見しました。カルパインの増加によりタンパク質が分解され、肝臓内で特定のアミノ酸の産生につながります。環境中のアミノ酸バランスの変化を肝細胞が感知し、同細胞の脂肪新生が活性化され、脂肪肝の発症につながることを解明しました。遺伝子操作で内皮細胞のカルパインを欠損させたマウスでは肝臓内のアミノ酸産生が抑えられ、脂肪肝が劇的に改善することも判明しました。アミノ酸取込みを低下させる薬物を投与したマウスでも同様の脂肪肝の改善効果が認められました。
研究の意義
過去の研究で血液中のアミノ酸と糖尿病や生活習慣病の関係が調査されてきましたが、アミノ酸が病気の原因になるという見解と、病気の進行を抑えるという見解があり、明確な答えが得られていませんでした。本研究成果は肝臓内部でカルパインにより作られるアミノ酸が肝疾患の原因となることを示しており、今後肝臓のカルパインをターゲットとしたあらたな肝疾患治療法の開発につながることが期待されます。
【掲載誌】
米国生化学分子生物学会誌『Journal of Biological Chemistry』(DOI:
https://doi.org/10.1016/j.jbc.2022.101953 )
(オンライン掲載:2022年4月18日 米国東部時間)
【掲載論文の英文表題と著者およびその和訳】
Calpain-mediated proteolytic production of free amino acids in vascular endothelial cells augments obesity-induced hepatic steatosis
Risako Akasu, Takuro Miyazaki*, Mohamed Z. Elhussiny, Yuki Sugiura, Yuki Tomitsuka, Shogo Haraguchi, Kinya Otsu, Vishwajit S. Chowdhury, Akira Miyazaki (*Corresponding author)
血管内皮細胞におけるカルパインによるアミノ酸産生は肥満誘発性の脂肪肝を増悪化する
赤須 里沙子、宮崎 拓郎*、Mohamed Z. Elhussiny、杉浦 悠毅、冨塚 祐希、原口 省吾、大津 欣也、Vishwajit S. Chowdhury、宮崎 章(*Corresponding author)
▼本件に関する問い合わせ先
昭和大学 医学部 生化学講座
東京都品川区旗の台1-5-8
准教授 宮崎 拓郎(みやざき たくろう)
TEL: 03-3784-8116
FAX: 03-3784-2346
E-mail: taku@pharm.showa-u.ac.jp
▼本件リリース元
学校法人昭和大学 総務部総務課 大学広報係
TEL: 03-3784-8059
E-mail: press@ofc.showa-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
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