【東京農業大学】庫本 高志 教授が可能にする“安心安全な牛乳”の国内提供 ~日本A2ミルク協会による「A2ミルク」が、東京農業大学稲花小学校で提供開始~

学校法人東京農業大学

いきなりですが、牛乳を飲んでお腹が痛くなった経験はないでしょうか?

東京農業大学 農学部 動物科学科の庫本 高志 教授は重井医学研究所と共同で2023年、「お腹に優しい」牛乳とされ、海外でも人気上昇中の「A2ミルク」を生乳から特定する技術を開発。「A2ミルク」の品質検査が手軽に行えるようになったことで、日本国内での安定的な提供に向けて大きく前進したと期待されています。

来る3月4日(月)からは、東京農業大学の併設校・東京農業大学稲花小学校(以下、農大稲花小)の学校給食にて、日本A2ミルク協会による「日本A2協会牛乳」の提供が決定しました。(※提供日時は諸事情により急遽変更となる可能性がございます。)

ではこの「A2ミルク」、何が凄くてどのような効果が期待できるのか、これまでの研究成果と今後への期待について、庫本教授から解説をいただきました。
 
庫本教授の所属する動物栄養学研究室
食育として位置づけられている学校給食の時間

■「A2ミルク」とは
牛乳のタンパク質成分のβカゼインには、2つの型があります。1つはA1型βカゼイン(以下A1)で、もう一方はA2型βカゼイン(以下A2)(図1)。A1になるかA2になるかは血液型のように遺伝子で決まります。日本にいるホルスタイン種からとれる一般的な牛乳には、A1とA2A1が混じっています。「A2ミルク」は、A2のみを含む牛乳を産生する牛から搾られた牛乳で、A1は含まれません。(図2)。
(図1)
(図2)

■なぜ「A2ミルク」?
「A2ミルク」は、「乳糖不耐症」の方が牛乳を飲んだ時に経験する腹痛やお腹の不快感を軽減します。また、A1が腸内で消化されると、炎症を誘発する生理活性ペプチドが遊離します。これらのことから、「A2ミルク」はおなかにやさしい牛乳、お腹がゴロゴロしない牛乳として注目されています。実際に、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国では、付加価値の高い牛乳として知られており、スーパーの陳列棚の一角を占めています。

■「A2ミルク」を日本で作るには?
①:遺伝子の検査をしてA2のみをつくる牛を選抜する
A1はβカゼイン遺伝子のA1アレルによってコードされており、A2はβカゼイン遺伝子のA2アレルによってコードされています。つまり、A1A1ホモの牛からはA1のみ、A1A2ヘテロの牛からはA1とA2、A2A2ホモの牛からはA2のみを含む牛乳が得られます(図2)。そのため、「A2ミルク」を生産するには、最初にA2A2ホモの牛群を作る必要があり、牛の遺伝子診断が必要となります。庫本教授らの研究室では、2021年に簡便・正確に遺伝子診断を行う手法を確立しました(Yamada et al., Anim Sci J, 2021)。

②:牛乳の検査の必要性
牧場では絞られた牛乳は、牛群ごとにバルク乳として保存されています。「A2ミルク」の場合は、搾乳の際にA2A2ホモの牛群を他の牛から厳密に分けておくこと、また、搾った牛乳を他の牛群の牛乳と混ざらないように分けて貯蔵しておくことが求められます。しかし、一般的な牧場では、A1A1牛やA1A2牛が同じ牧場内にいるので、「A2ミルク」として搾った牛乳にA1が混在するリスクが生じます。そこで、消費者に安心して「A2ミルク」を飲んでもらうために、バルク乳に本当にA1が混じっていないかを検査する必要性があります。

■「A2ミルク」に期待されること
「A2ミルク」は「お腹にやさしい」牛乳としてこれまで牛乳が飲めなかった人でも飲める可能性を持っています。また、遺伝子検査と牛乳の検査を行うことで、消費者が安心して飲むことができる牛乳でもあります。これらのことから、「A2ミルク」は一般の牛乳とは異なる「プレミアムミルク」のカテゴリーに区分されると期待しています(図3)。より付加価値を高めるために、オーガニック、遺伝子組み換え飼料の不使用、グラスフェッド、動物福祉、環境などのキーワードを加味した「A2ミルク」の開発が期待されています。このような「A2ミルク」を作ることは、「プレミアム」を超えた「スーパープレミアム」というカテゴリーの創出につながります(図4)。そのため、「A2ミルク」の開発は、新しい牛乳のカテゴリーの創出につながり、酪農家の売上増加に寄与すると期待されています。
 
(図3)
(図4)
 

■庫本 高志 教授について
東京農業大学 農学部 動物科学科 動物栄養学研究室 所属。
現在は「動物を用いた遺伝と栄養の相互作用の解明」をテーマに研究に取り組む。

■東京農業大学稲花小学校について
農大稲花小は約130年の歴史を持つ東京農業大学を母体とし2019年に開校されました。東京都世田谷区に位置し東京農業大学および東京農業大学第一高等学校・中等部に隣接しています。名前に用いられた「稲花」は、東京農業大学の「大学の花」でもあります。子どもたちがまるで1本の穂に200粒近い「コメ」を実らせる稲のように、様々な力と可能性を育んでいくことができたらという想いが込められています。「冒険心の育成」を教育理念に掲げ、生き物や食、環境といった身近なテーマを専門的に追究する研究設備を多数備える東京農業大学に隣接する立地を活かした多様な体験型学習を実践し、食育にも力を入れています。

農大稲花小の夏秋 啓子 校長は「毎日の給食を通して、子どもたちは、食材のこと、栄養のこと、農業や漁業のこと、行事や伝統文化のこと、海外の国の食文化のことなどを学んでいます。また、3年生になるとSDGsについても学びます。その重要な課題の1つとして、日本における持続可能な酪農経営への貢献が期待されるA2ミルクを、今後定期的に給食に取り入れることにより、食生活に欠かせない準栄養食品である牛乳の栄養価を改めて見直し、酪農業界を活性化する仕組みについての知識を深めることで、より身近な問題として捉え、自ら考え行動する力を育むことにつながっていくことを期待しています。」と述べています。

■日本A2ミルク協会について
日本A2ミルク協会は、2020年の設立以来、日本酪農乳業界のさらなる発展のもと、より健康を求める消費者への価値提供と選択肢を増やし、日本社会、酪農乳業界に貢献していくことを使命としています。生産者(酪農家)、乳業メーカー等の関係者、消費者、研究機関、大学等の関係者を含めた総合的な専門家による情報交換を通じて、専門的な知見をもとに、セミナー・講演やウェブサイト、メディア等による「A2ミルク」の正しい情報の普及活動に取り組んでいます。

日本A2ミルク協会の藤井 雄一郎 代表理事は、「協会設立当初より目指してきた安心安全なA2ミルクの普及を実現するために、東京農業大学 農学部 動物科学科 動物栄養学研究室の庫本 高志 教授、重井医学研究所の松山 誠 部長を中心に取り組んでいただいた学術的な研究成果は、日本におけるA2ミルクの検査体制およびA2認証基準を確立していく上で欠かせない大きな一歩となりました。この度、認証制度基準を満たした協会オリジナル商品となる日本A2協会牛乳のご提供先の第一弾として、農大稲花小の食育に貢献させていただくこととなり大変光栄に感じております。これを機に、より多くの方にA2ミルクをご賞味いただく機会となりましたら幸いです。」と述べています。

その他のリリース

話題のリリース

機能と特徴

お知らせ