多様な災害に対するインフラの被災予測AIを構築 ~インフラ強靭化と災害復旧の早期化を実現~

日本電信電話株式会社

発表のポイント:
  • 過去の災害における設備被災データを元に機械学習を用いて、これまで困難であった災害時における設備個々の被災予測を可能とするAIを構築しました。
  • 公開されている地形や気象等のデータを使用するため特別な現地調査の必要無く、設置場所を問わず被災予測可能な技術です。
  • 将来的には上水道管や電力柱、橋梁、道路など様々な社会インフラへの活用が期待されます。
 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、災害時に通信インフラの屋外設備における設備個々の被災予測AIを初めて開発しました。これにより、被災の軽減や早期復旧に必要なプロアクティブな対応を実現します。本技術はNTTグループがこれまで災害発生時に点検や補修を行った設備データから被災パターンを学習した予測モデルを構築することで、高精度な被災予測を可能とするものです。加えて全国で入手可能な公開データから予測が可能であるため、設備の設置場所を問わず予測することが可能です。本成果は、2024年5月16日、17日につくばフォーラム2024*1にて展示されます。今後は、本成果を踏まえ社会インフラの被災予測を可能とするための技術開発をめざします。

1.背景
 インフラは基本的には地震や豪雨といった災害による影響を考慮した上で構築されておりますが、大規模な災害が発生すると被災する場合があります。特に豪雨災害は近年激甚化しており想定を上回る災害となる可能性があります。これらに対し想定地震動や早期に得られる雨量等の予報などを基に被災規模を推定し、事前の準備を行うプロアクティブな対応により減災、早期復旧が可能となります。こうした対応のためには適切なタイミングで設備の被災を予測することが重要となります。しかし設備被災は雨量、地震動といった災害の強さだけでなく、地形、地盤といった環境条件や設備の条件が複雑に関係しているために、全国に広く分布しているインフラに対して設備個々での被災予測を統一的に行うことは困難でした。

2.研究の成果・技術のポイント
 このような背景を踏まえてNTTは通信インフラに対してNTTグループが各地で過去から蓄積した設備被災データと全国で整備されている地形や気象等の公開データを組み合わせることで、こうした課題を解決する被災予測AIを構築しました(図1)。こうした手法は全国の設備データを活用し、被災しやすい箇所を独自に分析することで構築された他にない技術です。今回までに具体的に確立した技術は図2に示す3種の技術です。いずれの技術も90%前後の精度を有しており、全国で特別な現地調査の必要なく設備個々の被災を高精度に予測できます。
  1. 豪雨よる土砂災害に対する電柱の被災予測技術
     豪雨によって引き起こされる土砂災害等により、どの電柱が被災するかを予測する技術です。これまでは土砂災害自体を予測するために現場調査や統計的に簡易な雨量と傾斜角で予測する手法などが用いられていますが、設備個別の予測を行うことは困難でした。本技術は雨量や標高、地盤の強さ、河川などからの距離といった公開されているデータのみで、各電柱の被災リスクを予測することが可能です。さらに精度98%と高精度に被災予測することが可能です。
  2. 河川氾濫に対する橋梁添架管路の被災予測技術
     豪雨によって引き起こされる河川氾濫により、どの橋梁添架設備が被災するかを予測する技術です。これまでは河川氾濫時にどの設備が被災しやすいかは判っておらず予測不可能でしたが、水位変動や川幅といった河川のデータと設備のデータから被災しやすい箇所を分析し、被災しやすい箇所を予測するモデルを確立しました。精度90%で正解する高精度な予測技術です。
  3. 地震に対する地下管路の被災予測技術
     地震によってどの地下管路が被災するかを予測する技術です。一般的に地下管路に対しては管路の種類や、地震の最大速度などから1kmあたりの被害件数を推定する方法が使われていますが、本技術は設備建設時からの経過年数や地震の最大加速度などこれまで利用されていないデータも用いることで設備個々に高精度な予測が可能となりました。本技術は精度87%と高精度な予測技術です。
 


3.今後の展開
 今回構築した技術を屋外通信インフラに適用し、災害発生前に被災リスクが高いと予測された設備に対して事前の準備等を行うことで、豪雨や地震発生時の減災および早期復旧に繋げます。例えば想定される地震動に対して被災リスクが高い管路の事前補強や、想定される豪雨に対して復旧に必要な資材の事前準備による早期復旧に活用予定です。加えて本技術は屋外通信インフラのみならず、類似した設備に対して応用可能です。このため図3に示すように電柱被災予測技術は電力柱、信号柱など、橋梁添架設備被災予測技術は橋梁本体など、地下管路被災予測技術は上水道管やガス管などの地下設備に展開することが期待できます。このように本技術を発展させ、社会インフラ全体の防災、減災および早期復旧に貢献し、日本のあらゆるインフラを強靭化することをめざします。
 

<用語解説>
*1 つくばフォーラム2024
https://www.tsukuba-forum.jp/
 

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