【青山学院大学】<地球社会共生学部×青山学院初等部×STEAMS LAB JAPAN>アメリカ発のティンカリング・サマースクールを開催

青山学院大学

2024年8月12日(月・祝)から4日間にわたり、青山学院大学 地球社会共生学部 林拓也教授の企画およびSTEAMS LAB JAPAN株式会社の主催・運営のもと、青山学院初等部にてティンカリング・サマースクールを開催した。 ティンカリング (tinkering)とは、元々は「修理屋」を意味する"tinker"からできた言葉で、身のまわりにあるさまざまなものを、さまざまな道具を使いながら「いじくりまわす」ことを指す。そして近年は、「試行錯誤して課題を解決する」という意味でも使われるようになり、STEAM教育の要素も多く含んでいることや、「いじくりまわす」モノづくり協業体験を通じ、非認知能力を育ませる教育手段としても注目されている。今回は、アメリカから講師のGeverTulley氏と Matt Brocchini氏を招き、ティンカリング・スクール(課題解決型探究授業)を同学院初等部にて開催した。 同大地球社会共生学部では、昨年度に両氏を相模原キャンパスへ招き、学部FDの一環として特別講演会「21世紀の地球社会で生き抜くチカラとは?-米国21世紀型教育の実践現場」を開催。今回は両氏がサンフランシスコで実際に行っているティンカリング・サマースクールを初等部で開催することを計画。STEAMS LAB JAPAN株式会社と、同学院初等部の協力のもと、GeverTulley氏と Matt Brocchini氏を日本に招き、両氏が実際にアメリカ・サンフランシスコで行っているティンカリング・スクール(課題解決型探究授業)のメソッドと運営ノウハウをそのままの形で日本に持ち込み、ティンカリング・サマースクールを開催。計16人の児童が参加した。 ■プログラム詳細 ティンカリング・サマースクールは4日間にわたるプログラムで、1日目から3日目まではワーク期間、4日目は発表会というスケジュール。初日ではまず、チョップソー、スクリュードライバーなど危険を伴う工具の安全講習を徹底的に行った。子どもたちは、最初は大きな音や木の焦げる臭いなどを怖がっていたが、危険なものでも適切に安全に使う方法を学べば、自分たちでも扱うことができるのだということが分かり、次第に自分たちの手足のように使いこなすことができるようになった。安全講習を行った後に、Gever氏から今回のスクールでのミッションが発表された。ミッションは、「火星へ行こう(Mission to Mars)」。火星へ行き、そこで暮らすために必要なものを4日間かけて製作するというもの。子どもたちからアイデアを募り、最終的に「火星へ行くための乗り物」、「火星に住むための家」、「火星で暮らすための食糧を栽培・養殖する循環型農園」、そして「宇宙服」の4つを製作することが決まった。いずれも一人の力では完成させることができない、大がかりなもの。どれを製作するかどうかは、子どもたちの判断に任せられた。また、ワーク期間の途中で別の製作チームへ加わることも自由だった。ミッション達成までのプロセスは、全て子どもたち自身の意思と決定に委ねられていた。 Gever氏の学校には、教員という立場の大人が存在しない。教育に携わる大人たちは皆「コラボレーター(伴走者)」と呼ばれ、子どもたちに対し「〇〇をしなさい」という指示を一切行わない。常に‟How do you solve this problem?"「あなたはこれをどう解決するの?」と子どもたちに問いかけ、全て子どもたちの自主性に任せる。今回の初等部でのサマースクールでは、この教育メソッドを忠実に守った。まさに、Gever氏らがサンフランシスコで行っている教育をそのまま初等部で実施したことになる。そしてこのスクールでは、子どもたちの保護者の協力も不可欠だった。保護者が参観できたのは最終日の発表会のみで、さらに期間中は、自宅でも子どもに「答えを教えない」「導かない」「叱咤しない」「激励しない」「安易にいいね!と褒めない」という5つのことが求められた。これらは全て親として自分の子どもへ行いがちなことだが、このサマースクールではその5つのいずれもが禁止された。これも、「親が子どもへ過剰に関わることで子どもの自由な心にブレーキをかけてしまうこと」を避けるという、Gever氏の教育メソッドの一つであり、コラボレーターが普段から行っている子どもたちとの関わり方である。 ミッション達成に向けてのワーク期間3日間を経て、最終日では、いよいよ保護者を迎えて子どもたちによる成果発表会が行われた。子どもたちが製作した成果物は、大人たちが想像していた以上に大がかりで、かつ創造性に富んだものだった。発表会後には、子どもたちが自分の親に対しチョップソーの使い方を教える場面も見られた。4日間の中で、子どもたちの中では当然のように意見や感情の衝突があり、互いの妥協点を模索する場面も見られたが、コラボレーターたちは子どもたち自身が自分たちの力で問題を乗り越えられるように、必要最低限かつ適切な介入のみに徹した。「正解のない問いを前に、好奇心を持って探究し、本物の工具と素材を使って、自分の役割を見つけながらチームプレーで課題解決する」ことを通じて、子どもたちは間違いなく21世紀を生き抜く力を身に付けた。また、発表会後には、Gever及びMatt両氏、松永 エリック・匡史地球社会共生学部長、そして株式会社NewsPicks Studiosの木嵜氏らによるトークセッションを開催し、参加した子どもたちの保護者とともに、今回のサマースクールの振り返りを行った。 今回のスクールでは、地球社会共生学部の山森こころさん(4年)と岡野優花さん(2年)も通訳アシスタントとして参加したが、スクールが進むにつれ、通訳の仕事を越えて、一人のコラボレーターとしても子どもたちと接していた。サマースクール実施前に、指導方法に関する研修を受けた山森さんと岡野さんは、「コラボレーターは子どもたちの前でも後ろでもなく、横に立って子どもたちの失敗と成功を見守る役目。怪我をしそうな時は子どもたちに積極的に声をかけたが、基本的に答えやヒントを教えるのではなく、子供たち自身で解決方法を考えることを促した。そして、成功した時には何が良かったかどうかを具体的にして褒めた」と話し、「大変貴重な経験をした」と4日間のことを振り返った。彼女たちもまた、参加した小学生たちとともに4日間で大きく成長した。特に山森さんは今回のスクールでの経験から、卒業後社会人としてのスキルを身に付けるために、今年中にサンフランシスコにあるBrightworks校へ見学しに行くことを決めた。 ■参加した学生からのコメント ○山森こころさん(地球社会共生学部4年) この度、アメリカの最先端教育に携わる方々のもとで学ぶ機会をいただき、大変光栄に感じております。通訳として参加させていただく中で、次第にコラボレーターとしても深く関わり、子どもたちと発見や創造のプロセスを共有することができました。成長の瞬間に立ち会う喜びと感動に満ちた、有意義な4日間となりました。また、STEAM教育を通じて培われる力が、今後のキャリアの基盤になると確信しました。現地サンフランシスコでさらに学びを深め、来春から新社会人として社会に貢献できる人材を目指します。最後に、サマースクールの実施にあたり関わってくださった全ての皆さまに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。 ○岡野優花さん(地球社会共生学部2年) 本サマースクールへの参加は、教育実践における重要な学びの機会となりました。注目すべき点として、子どもたちと同じ目線に立ち、伴走者として振る舞う関係性の構築と、コラボレーターとしての役割を理解する必要があります。当初は4日間という期間に不安を覚えましたが、実際には充実した時間があっという間に過ぎていきました。この経験を通じ、得た教訓は、結果主義から過程重視の教育観への転換の重要性です。可視的な成果のみならず、協調性、忍耐力、失敗からの学習、問題解決能力といった非認知能力にこそ、真の教育的価値が存在することを深く理解しました。これらは現代の教育現場で見落とされがちな視点であり、今後の教育実践にどう生かしていくべきかどうかをこれから探究していきたいです。 ■林拓也教授からのコメント 「正解のない問いを前に、好奇心を持って探究する」、そして「自分の役割を見つけながらチームプレーで課題解決する」。これはアジアへの全員留学をカリキュラムの柱のひとつとし、学生たちに「共生マインド」を育ませる地球社会共生学部の理念に合致することでもあります。今後も地球社会共生学部は、セカンダリーと協働しながら、青山学院だからこそできることを模索し、実践してまいります。 <参考情報> ・2023年度地球社会共生学部FD特別講演会「21世紀の地球社会で生き抜くチカラとは?-米国21世紀型教育の実践現場」を開催 URL:https://www.aoyama.ac.jp/faculty112/2023/news_20230607 【取材に関する問い合わせ先】  青山学院大学 政策・企画部 大学広報課  TEL: 03-3409-8159  URL: https://www.aoyama.ac.jp/companies/interview.html 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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