遺伝性腎疾患の病理診断にAIを活用する新たな手法を開発
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昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)の川西邦夫准教授(医学部解剖学講座顕微解剖学部門、筑波大学非常勤研究員)を中心とする研究グループは、遺伝性腎疾患アルポート症候群のモデルマウスを用いて、糸球体基底膜の病変を可視化する新たなイメージング技術を開発しました。さらに、その病理画像データをAIに深層学習させることにより、病変の自動検出が可能となりました。
アルポート症候群は、腎臓機能障害、感音性難聴、眼球異常を伴う遺伝性疾患です。腎臓では、初期には血尿、次第にタンパク尿が出て、ついには末期腎不全となり、透析や腎臓移植などの腎代替療法が必要になります。
アルポート症候群の正確な有病率は不明ですが、X連鎖性の遺伝形式(X染色体上の遺伝子の変異により発症する)が最多で、X染色体が一つである男性(XY染色体)の方が、X染色体を二つ持つ女性(XX染色体)よりも重症となります。一方、男性よりも軽症とされる女性のX連鎖性患者ですが、米国やわが国の臨床研究により、全体の15%程度が40歳までに末期腎不全に至ることが報告されています。アルポート症候群の診断には、遺伝子解析と腎臓組織の病理診断が必要ですが、女性患者では腎予後の予測が難しく、予後を改善するとされる降圧剤などの腎臓保護的な治療介入の是非を判断するための指標が求められています。
本研究グループは、アルポート症候群を模倣するモデルマウスを用い、オスとメスの比較や、メスの腎臓病変の詳細について調べ、メスに特徴的である、Ⅳ型コラーゲンが保存された領域と欠損した領域の基底膜病変を観察する手法を開発しました。さらに、その病変をAIに深層学習させて自動検出することに成功しました。AIが診断したメスマウスの腎臓病変の定量値は、タンパク尿濃度と正の相関関係を示したことから、本手法が、女性のアルポート症候群患者の腎臓機能の予後予測に有用であると期待されます。
※詳細は添付PDFを参照。
【掲載論文】
・掲載誌: American Journal of Pathology
・論文名: A novel deep learning approach for analyzing glomerular basement membrane lesions in a mouse model of X-linked Alport syndrome
(深層学習によるX染色体連鎖性アルポート症候群モデルマウスにおける糸球体基底膜病変の解析法の開発)
・著者名: Kunio Kawanishi , Masaki Baba, Ryosuke Kobayashi, Ryotaro Hori, Kentaro Hashikami, Kenta Danbayashi, Takako Iwachido, Mitsuyasu Kato
・掲載日: 2024年10月17日
・DOI: 10.1016/j.ajpath.2024.10.004
【研究代表者】
筑波大学医学医療系
川西 邦夫 助教(研究当時、現:医学部解剖学講座顕微解剖学部門 准教授)
【研究資金】
本研究は、科学技術振興機構報(JST)筑波大学START大学推進型(「つばさ」事業:JPMJST2052)、筑波大学「幸多き人生100年時代を創る『知』活用プログラム」、および、一部、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED:JP23wm0325066)の支援を受けて行われました。また本研究は、筑波大学とAxcelead Drug Discovery Partners株式会社との研究試料の提供に関する覚書に基づいて実施されました。
【問い合わせ先】
▼研究内容に関すること
川西 邦夫(かわにし くにお)
昭和大学 准教授(兼 筑波大学非常勤研究員)
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Email: kukawanishi@md.tsukuba.ac.jp
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