東京慈恵会科大学皮膚科学講座の延山嘉眞教授らの研究グループは、乾癬性関節炎における指趾の関節の状態を反映する爪の変化を初めて同定しました。
今まで乾癬性関節炎に爪の異常が合併することは知られていましたが、どのような爪の異常がどのような関節の変化と関係しているかは不明でした。今回、特定の爪の変化が指趾の関節を構成する骨変化と正の関係、骨周囲の組織の炎症と負の関係にあることが初めて明らかされました。これにより高度な画像検査をしなければ困難とされてきた関節の状態の把握が、爪を観察することによりある程度、推定が可能になりました。この成果により、高度な画像検査装置をもたない医療施設における診療レベルの向上に寄与することが期待できます。
本研究の成果は2025年10月13日、Clinical Rheumatology誌に掲載されました。
研究の成果:
乾癬性関節炎を有する106指趾の解析をした結果、特定の爪の異常について以下のことがわかりました。
- 爪甲点状陥凹:他の爪の異常に比べて、有意に単独で存在する頻度が高いこと、および、統計学的に爪の正常な状態に一番近い関係にあること。
- 爪下角質増殖、爪白斑、爪甲横溝、および、爪甲崩壊:指趾の関節部における骨の変化と正の関係があること。
- 爪下角質増殖、爪白斑、爪甲点状陥凹、および、爪甲剥離:指趾の関節部における骨周囲組織の炎症と負の関係があること。
以上の結果より、これらの爪の異常が関節変化の簡便なマーカーになる可能性が示されました。今後は、高度な画像検査装置をもたない医療施設における診療レベルの向上に向けて、全国的に啓発する予定です。
メンバー:
・東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座講座 講師 太田真由美
・東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座講座 教授 延山嘉眞
・東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座講座 講座担当教授 朝比奈昭彦