株式会社医学書院 (所在地:東京都文京区、代表取締役社長:金原 俊)は、新刊書籍『質的研究 Step by Step 第3版』(著:波平恵美子)を2025年11月17日に刊行しました。
質的研究への関心の高まりの背景には次のことが考えられます(本書「はじめに」より一部改変)。
- 自分が生きている世界が急速に変化し複雑に分化・分断していくのを見ながらも、その全体像をとらえることはできず理解できない状況に抗して、自分が大きな関心を抱く対象を、主体的に、具体的また詳細に知り理解する適切な方法として質的研究が認識されるようになってきたこと。
- 世界におけるさまざまな現象が数によって均一的に把握され提示される傾向に抗して、対象の多様性、個別・独自性を明らかにする要請に質的研究は対応できること。
- 同じ社会のメンバーの間でも、立場の違いだけではなく世界を見る視点の違いが大きくなり、それが和解や理解や共感の機会を失わせる状況が顕著になっている現在、自らの視点さえも相対化しつつ、対象を分析する視点・立場に常に意識的であろうとする質的研究の特徴が評価されるようになったこと。
◆初心者・指導者に向けた「質的研究」の実践ガイド
- 数値に基づく量的研究では捉えきれない個別性や多様性を明らかにし、異なる視点との対話を可能にする質的研究。急速に変化し不安定さを増す現代社会でその意義は増しています。
- 医療人類学の第一人者・波平恵美子著の『質的研究 Step by Step』は世代を超え、読み継がれてきたロングセラー書です。
第3版では、初心者のために各Stepの解説を補強。質的研究を進めるうえで出会うことの多いさまざまな問題や疑問への対応策を示しています。
さらに、指導を受ける学生の研究の成熟度を見極めつつ、教員が指導のレベルを上げていく方法も示しています。
◆目次
- 第1章 質的研究をはじめるにあたって
- 第2章 質的研究とエスノグラフィー
- 第3章 質的研究における口頭資料の収集と分析
- 第4章 慢性腎臓病の質的研究―看護学研究分野での学位論文作成の例
- 第5章 地域包括ケアの質的研究―文化人類学研究分野での学位論文作成の例
- 第6章 質的研究の問題点とその対策
◆著者略歴
波平恵美子(お茶の水女大名誉教授・文教育学部)
- 1965年九州大学教育学部卒。1973年同大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学、1968-71年米国テキサス大学大学院人類学研究科留学、1977年同Ph.D取得。1976年佐賀大学助教授、1980年九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部)助教授、1988年同教授、1998年お茶の水女子大学教授、2000年同ジェンダー研究センター長(併任)、2006年同名誉教授。
- 日本民族学会(現・日本文化人類学会)第19期会長。文化人類学の枠にとどまらない知的探究を続け、日本民俗学における「ハレ・ケ・ケガレ」の三項対置の概念の提唱者として、またわが国における医療人類学の樹立・普及者として知られるなど、幅広い業績がある。2011年第6回日本文化人類学会賞。
◆書誌情報
【株式会社医学書院について】
1944年の創業以来、「専門書出版社としての役割と責任を自覚し、医学・医療の進歩に必要な専門情報を的確に伝え、医学・医療の発展と社会の福祉に貢献すること」を使命として、常に最新の医学・医療情報を提供しています。
治療年鑑『今日の治療指針』、看護学生向け教科書シリーズ『系統看護学講座』など幅広い領域の専門書籍・雑誌を出版しており、毎年百数十点におよぶ書籍を刊行しています。近年では、Web配信サービス、電子書籍、電子雑誌、セミナー、オウンドメディアなど様々な形でのコンテンツ作成に取り組み、多くの医療専門職、学生の方々からご支持をいただいております。