明治大学農学部農芸化学科の小山内崇専任講師、飯嶋寛子共同研究員らの研究グループは、理化学研究所の平井優美チームリーダー、近藤昭彦チームリーダーらの研究グループと共同で、ラン藻の遺伝子改変による代謝の改変に成功。RpaAという制御因子を改変した結果、リシンやグリシンなどの有用なアミノ酸が増加することを発見した。
ラン藻は、光エネルギーと二酸化炭素を利用できる光合成細菌。この性質を利用して、ラン藻を使った二酸化炭素からのものづくりに期待が集まっている。研究グループは、世界で広く研究されているモデルラン藻である「シネコシスティス」を用いて、遺伝子改変を行い、代謝への影響を調べた。
研究グループは、改変する遺伝子を選ぶ中で、レスポンスレギュレーターに着目した。レスポンスレギュレーターは、細胞内のシグナル伝達を担い、遺伝子の転写に直接働くことが知られている。研究グループはこれまでの研究において、転写に関与するタンパク質を改変することで、ラン藻の代謝を改変できることを見出してきた。
RpaAは、サーカディアンリズムや光応答に関与するレスポンスレギュレーター。細胞内のRpaAタンパク質量を増加させた「RpaA過剰発現株」を作製したところ、糖や有機酸、アミノ酸の量が変動するなど、代謝が大きく変化することが分かった。特に、RpaA過剰発現株を暗闇で1日間培養すると、対照株の通常培養条件時に比べて、グリシンが2倍、リシンが4倍に増加することが分かった。
今回の成果は、ラン藻を用いた有用物質生産という実用化プロセスに向けて、代謝の基礎メカニズムの解明につながると期待できる。
なお、本研究は、JST戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発ALCAの一環として行われ、スイスの科学雑誌『Frontiers in Microbiology』のオンライン版(8月14日付)に掲載された。
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