北里大学メディカルセンター、佐賀大学医学部、鹿児島大学医学部の共同研究グループがインフルエンザ肺炎を抑える仕組みを発見 ~重篤なインフルエンザ肺炎の治療法開発へ期待~

北里大学メディカルセンター(埼玉県北本市)の研究グループはこのたび佐賀大学医学部、鹿児島大学医学部の研究グループと共同で、免疫細胞の中に存在するCARD9という分子が、重篤なインフルエンザ肺炎の発症に関与し、CARD9を欠損したマウスではウイルスに対する防御力は正常である一方で、肺炎の症状のみが軽減し、マウスの死亡率が大きく改善することを明らかにした。本研究成果は、重篤なインフルエンザ肺炎の治療法開発に繋がるものと期待され、その内容は2015年12月2日午前10時(英国時間)に英国総合科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された。


■概要
 北里大学メディカルセンター 研究部門 植松崇之 上級研究員(佐賀大学大学院医学系研究科 社会人大学院生)、小林憲忠 部長補佐らの研究グループは、佐賀大学医学部分子生命科学講座免疫学分野 吉田裕樹教授、鹿児島大学医学部感染防御学講座免疫学分野 原博満教授、飯笹英一助教らの研究グループと共同で、免疫細胞の中に存在するCARD9という分子が、重篤なインフルエンザ肺炎の発症に関与し、CARD9を欠損したマウスではウイルスに対する防御力は正常である一方で、肺炎の症状のみが軽減し、マウスの死亡率が大きく改善することを明らかにした。

 インフルエンザ、特にスペイン風邪のような世界的大流行(パンデミック)を引き起こす新型インフルエンザウイルスのヒトへの感染は、重篤な急性肺炎と呼吸不全を引き起こし、短期間で患者の命を奪ってしまうことが知られている。このような重篤なウイルス性肺炎を抑えるため、医療現場ではステロイドのような抗炎症薬が使用されることがあるが、明らかな治療効果は報告されていない。逆に、このような薬は患者の免疫力を低下させてしまう作用も持つため、ウイルスの増殖を促して、かえって症状を悪化させてしまう場合もある。一方で、これまで遭遇したことのない新型ウイルスが感染した場合でも、ヒトの免疫細胞はウイルスが持つ特有の分子構造を認識する受容体(パターン認識受容体)でその侵入を感知し、抗ウイルス活性を持つインターフェロンや、炎症を引き起こして免疫細胞を感染場所に呼び寄せる液性物質(サイトカインやケモカイン)を産生して、ウイルスに対抗しようとする。しかし、このサイトカインやケモカインが過剰に産生されてしまうと、諸刃の剣となってかえって肺炎が重症化し、感染者は命の危険に晒されることになる。

 免疫細胞の中に存在するCARD9という分子は、パターン認識受容体を介したサイトカイン、ケモカイン産生に重要であることが以前から知られていた。今回、共同研究グループでは、CARD9を欠損したマウスを用いてインフルエンザウイルスを感染させたところ、このマウスでは、免疫細胞によるインターフェロンの産生は正常である一方で、サイトカインやケモカインの産生のみが著しく低下し、その結果、ウイルスに対する防御力は保たれたまま、肺炎の症状のみが軽減し、マウスの死亡率が大きく改善することが明らかとなった。従って、CARD9の機能を上手く抑制する薬が開発できれば、新型インフルエンザなどの急性ウイルス肺炎の理想的な治療薬になると考えられ、重篤なインフルエンザ肺炎の治療法開発に繋がるものと期待される。

 なお、本研究は佐賀大学医学部および鹿児島大学医学部が主体となり、日本学術振興会 科学研究費補助金、(公財)川野小児医学奨学財団、(公財)武田科学振興財団による支援を受けて実施され、その内容は2015年12月2日午前10時(英国時間)にNature関連誌である英国総合科学雑誌「Scientific Reports」(Nature Publishing Group)に掲載された。

■論文に関する情報
タイトル(和訳): “Loss of CARD9-mediated innate activation attenuates severe influenza pneumonia without compromising host viral immunity”
(CARD9を介した自然免疫活性化の機能的損失は、宿主ウイルス免疫応答を損なわずに重篤なインフルエンザ肺炎を軽減させる)
著者名: 植松崇之、飯笹英一、小林憲忠、吉田裕樹、原博満
掲載誌: Scientific Reports (Nature Publishing Group)
(URL) http://www.nature.com/articles/srep17577

■関連情報
 佐賀大学プレスリリース (URL) http://www.saga-u.ac.jp/koho/press
 鹿児島大学プレスリリース (URL) https://www.kagoshima-u.ac.jp/topics/

▼本件に関するお問い合わせ先
 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 免疫学分野 教授
 原 博満(はら ひろみつ)
 E-mail: idoubutu@m3.kufm.kagoshima-u.ac.jp
 TEL/FAX: 099-275-5305

 佐賀大学医学部 分子生命科学講座 免疫学分野 教授
 吉田 裕樹(よしだ ひろき)
 TEL: 0952-34-2290

 北里大学メディカルセンター 研究部門 上級研究員
 植松 崇之(うえまつ たかゆき)
 E-mail: tuematsu@insti.kitasato-u.ac.jp
 TEL: 048-593-1236
 FAX: 048-593-1262

【リリース発信元】 大学プレスセンター http://www.u-presscenter.jp/

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組織名
北里大学
ホームページ
https://www.kitasato-u.ac.jp/
代表者
島袋 香子
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非上場
所在地
〒108-8641 東京都港区白金5-9-1

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