那智勝浦町でのビンチョウマグロの水揚げの様子
第78海王丸(大分船籍)、株式会社ヤマサ脇口水産、国際非営利機関オーシャン・アウトカムズはこの度、和歌山県那智勝浦町にて、「那智勝浦ビンチョウマグロ延縄FIP」を発足致しました。また、グローバルで持続可能な漁業の実現に注力する米ウォルマート・ストアーズ・インクの子会社である合同会社西友は、株式会社シーフードレガシーの紹介を得て、同プロジェクトの対象となるビンチョウマグロを、関東の約20店舗にて11月初旬より販売予定です。
漁業改善プロジェクト(FIP/ Fishery Improvement Project)とは、漁業者、流通企業、NGOなどの利害関係者が協力し、持続可能な漁業であることを認める海洋管理協議会(MSC/ Marine Stewardship Council)認証を目指し、漁業の持続可能性の向上に取り組むプロジェクトです。今回の「那智勝浦ビンチョウマグロ延縄FIP」は2017年から2022年を活動期間とし、2012年MSC予備審査結果の再審査を元に特定された課題を解決する活動計画を作成し、公表、改善内容の実施、そして定期的な進捗状況の確認と調整及び報告を実行します。さらに西友は、11月初旬より、FIP対象となるビンチョウマグロを、株式会社ヤマサ脇口水産を通じて海王丸から調達し、関東の約20店舗にて販売する予定です。
本プロジェクトの拠点となる和歌山県那智勝浦町は、生鮮マグロ水揚げ日本一を誇る代表港の一つであり、マグロ資源は地域産業そして漁業者にとっての生命線でもあります。長年に渡りマグロ資源の変動を肌で感じている、延縄漁業を営む第78海王丸、そして流通を通じて漁獲量の変動を目の当たりにしてきた株式会社ヤマサ脇口水産は、地域社会への貢献も視野に入れ、今回持続可能なビンチョウマグロ延縄漁業の実現に向けて漁業改善プロジェクト(FIP)を開始しました。
日本の食文化や地域の経済基盤として重要なマグロ資源。地域や漁業者そして水産関連企業の存続のためには、持続可能性を視野に入れた環境活動と経済活動の両立が重要と考えられ、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の2020年開催を控える今、生産者の努力に対して支援・評価を行う漁業改善プロジェクト(FIP)の国内展開に、期待と注目が集まっています。
今回のプロジェクトに際しての各社コメントは以下の通りです。
■西田幸二(第78海王丸)
「40年以上漁労長として延縄漁業を営み、マグロを漁獲してきました。昔に比べると漁獲量は減ってしまい、漁業をやめていく漁師も少なくありません。いつまでも漁業を営むためには豊かなマグロ資源が重要です。マグロ漁師として資源や漁業の為に活動することは、最終的には自分たちに返ってくる未来への投資と考えています。この活動に賛同頂ける他の延縄漁師への参画も今後募っていき、同じ志を抱く関係者と活動に励んで行きたいと思います」
■脇口光太郎(株式会社ヤマサ脇口水産/代表取締役社長)
「生まれてから見続けてきたこの熊野の素晴らしい自然と、豊富に水揚げされるマグロ、それに携わる漁師や仲買、漁業関係者、町の活気と笑顔が、近年の大量捕獲漁業の出現により急激に消えていき、魚達が姿を消しているのを目の当たりにしてきました。不安と危機感を募らせ、単体で活動していたところ、同じ水産というステージの中に居たオーシャン・アウトカムズさん、海王丸さんと今回、ひとつとなりFIPの活動をスタートとさせることが出来るようになりました。また、西友さんからすぐに応援の言葉を頂き、より多くの一般消費者の方々に、今の漁業の現状や延縄漁のマグロの素晴らしさ、美味しさを伝えるチャンスを頂きました。マグロ延縄漁法を先頭に立って応援し、資源を守る取り組みによって結果的に漁業者が潤う仕組み、その資源保護とビジネスとを両立させるスタイルで持続可能な漁業とマグロ資源を守る取り組みの一助となれますことは、本当に有難く、心からこの機会に感謝を致しております」
■村上春二(オーシャン・アウトカムズ/日本支部長)
「太平洋クロマグロを筆頭にマグロ資源の行方が注目されているなか、資源の減少が経済性に直結する漁業者と水産流通加工会社が共通問題意識の上に手を組み、漁業の改善そしてトレーサビリティ確立に向けた活動を実施することは延縄漁業の管理体制、生態系への負荷、そしてビンチョウマグロの資源状況に寄与する大変有意義な活動だと思います」
■花岡和佳男(株式会社シーフードレガシー/代表取締役社長)
「漁業者が健全に持続的に漁業を営み、消費者が魚介類を軸とする豊かな和食をいつまでも美味しく味わうことができるために、NGOや専門組織と連携し、助成を通じて生産者のサステナビリティ追求へ向けた活動を支援するだけでなく、その商品を積極的に調達・販売することで消費者に情報提供と選択購入の機会を創出する西友の一連の取り組みは、海洋に関する経済・社会・環境の持続可能性を追求するマーケット・イニシアチブの理想形であり、SDGs達成を目指した東京オリンピックレガシー構築の具体的一歩です」
■和間久美恵(合同会社西友/企業コミュニケーション部 バイス・プレジデント)
「西友の親会社であるウォルマートは、人や地球に優しい環境を整えるため、様々な取り組みを全世界で積極的に展開しており、『持続可能な漁業』もその注力分野の一つです。西友では2017年、日本初の養殖漁業改善プロジェクト『宮城女川銀鮭養殖漁業改善プロジェクト(AIP)』への支援を開始しました。今回の『那智勝浦ビンチョウマグロ延縄漁業改善プロジェクト(FIP)』はそれに続くもので、西友では今後も、パートナー企業やNPO、漁業者の方々と協働し、『持続可能な漁業』の実現に向け、助成金の拠出や、小売業としての特徴を生かし販売面での支援を実施していきます」
【参画企業概要】
■ 第78海王丸
大分県漁業協同組合保戸島支所に所属する19トン延縄船。西田は17歳より漁師になり、以降約40年以上漁労長として延縄船を所有し、マグロを漁獲しています。マグロ資源の恩恵を頂きながら生活をする漁師として、マグロ資源の将来性や今できることを考え、今回漁業改善プロジェクトに取り組むこととなりました。
■株式会社ヤマサ脇口水産
https://www.maguro-yamasa.com/
生マグロ水揚げ高日本一を誇る和歌山県那智勝浦町で、創業明治30年より続くマグロ仲買業を営んでいます。天然マグロ資源と、独自開発の特殊冷凍技術により、生鮮マグロの美味しさの追求と流通・販売過程における資源の有効活用とロスの課題解決に挑戦しています。また廻船問屋事業を通して、マグロ船との密な情報交換・交流を行い、生産者と流通とをつなぐ役割を担っています。2012年、那智勝浦町産マグロのMSC予備審査を通過。2013年、会社としての調達方針を発表し、持続可能な方法でない漁法や、違法操業船の漁獲によるマグロは調達しない旨を社内外に宣言。この度、大分県の第78海王丸、オーシャン・アウトカムズとの那智勝浦ビンチョウマグロ延縄漁業改善プロジェクトに調印し、MSC認証の本審査通過に向けて取組みを行っていきます。
■オーシャン・アウトカムズ(O2)
http://www.oceanoutcomes.org/jp/
地域コミュニティや漁業者、そして水産関連企業と協働し、次世代につながる豊富な水産資源と地域社会の繁栄を目標に活動します。漁業者が直面する課題やニーズを深く理解し、組織内の専門性の高い科学チームやその他利害関係者と連携し持続可能な漁業に一歩ずつ近づけるよう科学的な道筋を漁業関係者に提供し、各漁業が持続可能で環境に優しい漁業に近づけるようサポートします。そして地域経済性の向上も視野に流通や市場と連携体制を構築支援し、有益で地域に根付く解決策に尽力しています。
■株式会社シーフードレガシー
http://seafoodlegacy.com/ja/
海と人をつなぐ象徴である水産物(シーフード)を、豊かな状態で未来世代に継いでいきたい(レガシー)という想いのもと、社会・経済・環境におけるサステナビリティの実現のため、国内外の水産関連企業やNGOをサポートし、両者を戦略的にネットワークし、日本のビジネスに適した解決策を形にする、コンサルティング/プラットフォーム組織です。10月27日には日経エコロジーと共に、第3回目となる日本最大級のサステナブル・シーフード・イベント「東京サステナブル・シーフード・シンポジウム:魚から考える日本の挑戦2017」を開催します。
■合同会社西友
http://www.seiyu.co.jp/
親会社であるウォルマートが掲げる「Global Responsibility」というグローバルな取り組みのもと、社会課題や環境問題の解決に向けて、「機会創出(Opportunity)」「環境(Sustainability)」「地域社会(Community)」の3つを注力分野と定め、お客様やお取引先様、NGOや自治体の皆様と協力して、多面的にサステナビリティ・社会貢献活動を推進しています。「環境(Sustainability)」に関しては、「人々の暮らしと環境を持続させる商品を販売すること」を最終目標の一つとしており、FIPやAIPへの支援の他にも、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」に加入し、「みなさまのお墨付き」をはじめとするプライベートブランド商品に使用するパーム油を100%持続可能なものに切り替えるなど、各活動を推進しています。