2019年5月16日、パリ、イスタンブール --- 4月28日以降、シリア北西部イドリブでの戦闘行為が激化、途絶えることのない攻撃に18万人以上の市民が北部へと避難しました。
標的となった医療者と医療施設
シリアでの人道危機が深まったこの8年、医療従事者と医療施設が攻撃の対象とされてきました。2018年の1年間で102名の医療者が犠牲になりました。
私たち世界の医療団は、4月28日に発生したこのイドリブでの医療施設と市民を狙った一連の暴力行為がまたも深刻な人道危機をもたらすことを危惧しています。
- 15の医療施設および病院が損壊もしくは全壊した
- 医療施設が標的にされたことで、基本的かつ不可欠な医療アクセスが断たれた。重篤な、または慢性疾患を持つ患者の治療、妊産婦のフォローアップなど、医療と医薬品の提供に致命的な影響をもたらしている
- 度重なる攻撃にさらされ、もはや医療施設は機能せず、多数の負傷者や避難民の治療にあたる医療者たちには重圧が重く圧し掛かっている
「国際社会は、最悪の事態を想定し、断固とした措置を講じるべきです。8年におよぶ終わりの見えない紛争は、市民を疲弊させ、精神的にも極限の状態にあります。現地で支援にあたる医療施設やNGOは、殺到する避難民や負傷者に対応するだけのリソースと余力を持ち合わせていません」
世界の医療団トルコ理事長Hakan Bilginは話しています。
戦火に囚われたイドリブ市民
過去8年間の紛争の主たる犠牲となったのは、市民です。300万人が密集するイドリブの住民のうち130万人は、これまでの戦争で住処を追われ国内避難民となった人々、最も高い代償を払っているのは市民なのです。
「一連の攻撃によって、国内避難民となった人々が再び避難を強いられる可能性があります。シリア市民にとってイドリブは残された避難地であって、今後、国内に避難できる土地がなくなることを人々は憂慮しています。この紛争は市民を追い詰め、そして包囲しました。日を追うごとに、国際社会からシリア情勢は見放されているのが現状です」
世界の医療団フランスの理事長フィリップ・ド・ボトンは述べています。
世界の医療団は、国際人道法の遵守、この前例なき人道と医療の危機に対応するための大胆かつ喫緊な措置を講じることを国際社会に要請します。事態が深刻化する中での短期中期的な人道および経済援助の休止や撤退は選択肢になりえません。