近畿大学大学院農学研究科環境管理学専攻・水圏生態学研究室(奈良県奈良市)の大学院生、冨森 祐樹と助教の松沼 瑞樹らの研究グループが、ハゼ科アベハゼ属の1種「Mugilogobis flavomaculatus(ムギロゴビウス・フラボマキュラタス)」を日本で初めて発見しました。体の虎柄模様に因み、標準和名を「トラハゼ」としました。
【本件のポイント】
●西表島で採集されたハゼ科アベハゼ属の1種が日本で初記録であることが大学院生の研究で判明
●黒と黄の虎柄模様に因み、標準和名を「トラハゼ」とした
●日本はアベハゼ属の分布の北限となるため、生息環境を守るための保全活動が必要
【本件の内容】
ハゼ科アベハゼ属魚類は主に干潟やマングローブ林内に生息しており、日本においては琉球列島を中心に約6~7種が分布しています。平成7年(1995年)、研究グループの一人である大阪市立自然史博物館の鈴木寿之研究員(近畿大学農学部水産学科昭和52年(1977年)卒業)が、これまで日本で見つかっているアベハゼ属魚類とは異なる特徴を持った標本を西表島で採集しましたが、どの種に該当するか不明なままでした。
今回、近大農学部の研究チームが標本を精査した結果、西表島から採取された標本はこれまで台湾でのみ見つかっていた「Mugilogobius flavomaculatus」であり、日本では初記録であることが判明。黒と黄の縞模様が虎柄を連想させることから「トラハゼ」の標準和名を付けました。
本種が採集された西表島と台湾の間には黒潮が通ります。黒潮には魚類の分布を広げるベルトコンベヤーの役割があり、本研究で発見された1個体は台湾から偶発的に流されてきたものと考えられます。この魚は台湾においても個体数が少なく、日本での発見は重要な記録となります。
【「トラハゼ」の特徴】
黒と茶の格子模様を持つ、同じアベハゼ属のタヌキハゼやムジナハゼとは違い、トラハゼは黒と黄の縞模様です。また、ヒレを支えるスジが多い、頭部背面の鱗が小さくその大きさは均一であるといった特徴で識別できます。
【今後の展開】
アベハゼ属は、日本において学名が決定していない種がいるなど多くの分類学的問題を抱えているため、今後、研究によって整理する必要があります。
トラハゼを含めた日本産アベハゼ属は主に熱帯域である琉球列島を中心に生息しており、なかでも西表島は広大なマングローブ林や塩性湿地を有し、日本において最もアベハゼ属の種数が多く生息することが知られています。琉球列島は日本では南に位置しますが、世界的にみるとアベハゼ属の分布の北限となるため、北限個体群やその生息環境を守るための保全活動が期待されます。
【関連リンク】
農学部 環境管理学科 助教 松沼 瑞樹 (マツヌマ ミズキ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2169-matsunuma-mizuki.html
農学部
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