横浜市立大学先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター(以下、YCU-CDC)は、病を診ることが中心である従来医療を拡張し、ひとびとを観る「新しい医療」の創造を目指したStreet Medicalとよばれる活動を推進しています。これらの活動の担い手を育成すべく、社会人向けデザイナー育成機関「東京デザインプレックス研究所」(以下、TDP)と共同で、昨年度に続いて2020年度第II期「Street Medical*1 School」(以下、SMS)を開講します。
第I期プログラムとなる2019年度の受講者22名は、課程を修了後、薬剤耐性菌問題を楽しく学習できるエデュテイメントプロダクト「AMR*2対策×ボードゲーム」や、近視の早期発見を促す「ハイブリッド・イメージ*3・ポスター」、病院食を楽しいものに変換するカトラリーセット等、8つの解決策を提案するに至っています。
この度、2020年度第II期SMS受講生の募集に対して日本全国からたくさんのご応募をいただき、厳正なる審査のもとで選抜された21名の受講生と第II期プログラムを開始する運びとなりました。今年度は、デザイナー志望者、医学生、看護師、薬剤師、言語聴覚士、理学療法士、医学系大学院生、様々な職種に従事するビジネスパーソンなど、昨年以上に多様なバックボーンを持つ受講者たちが集まっています。
このメンバーで、クリエイティブ分野のトップランナーからなる講師陣の講義から刺激を受け、医療・健康課題のワークショップ、文献調査やフィールドワークなどのアクティブ・ラーニングを重ねながら、受講生自ら、医療・健康分野の未踏課題をグラフィック、プロダクト、スペース、ウェブなどを駆使した多様なクリエイティブ手法で解決する新規アイデアを生み出していきます。
SMS2019 第I期生 成果発表会の様子
於 日比谷ミッドタウンBase Q
2020年度第II期SMS概要
○実施期間 2020年7月31日(金)~ 2020年12月末日
(毎週金曜日19時~開催)
○場所 「新しい生活様式」に合わせてオンラインでの開催
○カリキュラム概要
YCU-CDCとTDPにより厳選したクリエイターからなる講師陣による講義、ワークショップ・フィールドワークなどを実施しながら、受講生が自らStreet Medicalの趣旨に沿った「企画」を現場に実装することを目標としています。
- 講義:YCU-CDCセンター長である武部貴則によるStreet Medical????についてのイントロ講義を皮切りに、著名な建築家(岡部修三氏 upsetters architects 主宰)、新進気鋭のクリエイティブディレクター3名(富永勇亮氏 Whatever Inc Producer / CEO、橋田和明氏 HASHI Inc Creative Director / PR Director、佐藤ねじ氏 株式会社ブルーパドル 代表/プランナー/アートディレクター)を講師陣に迎え、世界で活躍するクリエイターがどのようにアイデアを創出しているのかを学びます。またYCU-CDC助教の西井正造より、医学部でも習う機会の少ない「医療とその周辺の世界の在り様」に関するミニ講義を行い、医療現場でクリエイティブ介入を行う際の留意事項などを学びます。
- ワークショップ:講義は行わず、ワークショップのみの回を複数回設けます。(1)社員食堂において健康行動を誘発するには、(2)緑内障の早期発見を促すためには、(3)新興・再興感染症対策に向けた「新しい生活様式」の定着を促す新しい情報発信の在り方とは、等をテーマにして、アイデアをカタチにしていきます
- 調査:講義とワークショップで培った知識やノウハウを用いて、受講生自ら課題を設定し、その介入策を考案するために、先行事例・先行研究等の文献調査や、現場でのフィールドワークなどを行いながら、成果発表会に向けて準備を進めていきます
- 成果発表会の実施:2020年11月末(予定)にStreet Medical Talksと題した受講生の成果発表会を開催いたします。今回は、新型コロナウイルス対策も踏まえて、オンラインでの開催も視野にいれています。ここで評判の良かったアイデアについては、試作まで進め、社会実装を目指していきます
※スクールのウェブサイト:
https://streetmedicalschool.com/
用語説明
*1 Street Medical:
従来の医学(Medical)の学術体系に限らず、「実生活の環境(Street)」での知識・技術・アイデア・ノウハウを、積極的に医療の再定義に活用しようというスタンスを表現した言葉
*2 AMR:
微生物(細菌やウイルス)に対して薬が効かなくなることを「薬剤耐性(Antimicrobial Resistance)」と呼び、AMRと略される
*3 ハイブリッド・イメージ(Hybrid Image):
高周波のイメージと低周波のイメージを合成して遠くから見た場合と近くから見た場合で違うイメージが見えるように作成された画像で、視力によって見えるものが変わる
※本スクールの「カリキュラム開発研究」についてはJSPS科研費(JP20K02972)、感染症対策に向けた情報発信のための調査については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)令和2年度感染症研究開発ELSIプログラム「『新しい生活様式』の具現化に向けたコミュニケーション・デザイン調査研究(20ta0127003h0001 研究代表者:西井正造)」の支援を受けて実施します。
<横浜市立大学先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター>
ヘルスケア分野のコミュニケーション課題解決を目指す、世界初の医科学研究機関におけるクリエイティブ研究拠点です。医科学研究の拠点においてクリエイティブ研究のための持続可能な開発体制を構築し、コミュニケーションの力を使って、ひとびとの健康や幸福に寄与すること、ひいては、超高齢社会に対応した新たな社会のあり方を提案することを目指しています。
http://y-cdc.org/
<東京デザインプレックス研究所>
東京デザインプレックス研究所は、「東京発コンテンポラリーデザインの複合型教育機関」として2012年に創立(2020年7月現在5000名の学生が在籍)。講師にはトップクリエイター/現役デザイナーが集結し、少人数制・実践形式による授業を展開。国内最先端プログラムは、全11専攻・72コース/昼間部・夜間部・土日集中クラスで編成されており、大人(社会人・大学生・フリーターなど)を対象としたデザイン専門校です。
https://www.tokyo-designplex.com/