近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)は、令和2年(2020年)9月16日(水)から開講する情報学科の専門科目「情報メディアプロジェクトII」の授業で、自動会話プログラム「バーチャル・ティーチングアシスタント for Slack(バーチャルTA※1 for Slack)」を導入します。学生の質問に答える対話AI型「バーチャルTA」をコミュニケーションツール「Slack」に対応させたもので、新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンライン授業を受ける学生の学習をサポートします。
※1 TA(ティーチングアシスタント)とは、大学院生が収入を得ながら、授業や実験等で教員のサポートや受講生の補助をする制度
【本件のポイント】
●Slack上で、授業に関する学生の質問にAIが24時間体制で回答
●AIが回答できなかった質問や質の悪い回答を察知し、講師・TAに通知する仕組みを構築
●Slackでの対話データを自動学習するシステムを実現させ、対話AIの進化をめざす
【本件の内容】
近畿大学理工学部情報学科では、平成29年(2017年)から、「情報メディアプロジェクトII」において、SCSK株式会社の講師派遣を受け、対話システムの構築を通して最新のWebおよびAI技術について学ぶ実習を行っています。平成30年(2018年)からSCSK株式会社(旧名:株式会社JIEC)が、IBM Watson(R)※2 の自然言語処理技術を用いて構築した質問応答システム「manaBrain ※3」を、近畿大学理工学部の講義データを用いてカスタマイズした「バーチャルTA」を導入しています。
今年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、各大学でオンライン授業が主流となっています。近畿大学ではこれに対応するため、Zoomや動画配信の授業形態に加え、オンライン授業を円滑に進めるためコミュニケーションツール「Slack」を全学生(大学院・短期大学部含む)・教職員、計36,801人に導入しました。
「情報メディアプロジェクトII」の授業でも、質問に関するやり取りをSlack上で行っており、活用状況をみると、対面講義よりも学生の質問が明らかに増え、授業時間外での学習も活発になっていることが分かりました。学生の積極的な姿勢はオンライン授業のメリットと言えますが、一方で対応する教員やTAの負担増という問題もありました。そこで、それらの解決策として、従来のバーチャルTAをSlackに連携させることにしました。
学生からの質問はすべてSlack上のバーチャルTAを経由させることで、簡単な質問についてはバーチャルTAが回答し、回答困難なものは教員やTAに転送するという仕組みを実装しました。Slackと連携させることで、教員やTAの回答履歴が残るため、口頭対応では困難だった回答例の集約が容易になり、今後はAIによる回答データの自動学習システムの実現が期待されます。
※2 IBM Watsonは、米国および他の国におけるIBM Corp.の商標もしくは登録商標
※3 manaBrainは、SCSK株式会社の商標
【システム概要】
Slack上にバーチャルTAのチャットボットアカウントを作成し、学生がダイレクトメッセージで質問することで、バーチャルTAのシステム本体に質問内容が転送されます。質問に対する答えは、バーチャルTAが学生に直接返信します。これにより、Slack上で学生からの質問に24時間対応することが可能な仕組みになっています。このとき、チャットボットが答えられなかった質問や、「問題は解決しなかった」と学生が判断した質問については、バーチャルTAから教員とTAに通知し、後日教員・TAから、学生に正しい回答を送信します。また、学生からの質問内容、バーチャルTAの回答内容およびその回答に対する学生による評価、教員とTAの回答などのデータは、バーチャルTAのシステム本体が自動で収集・蓄積し、対話モデルの改善に利用します。全学生・教職員に導入され活用されているSlackに対応でき、同時に対話データをAIが自動的に収集するエコシステムを備えることにより、将来的には理工学部だけでなくSlackを利用する全ての実習での活用が期待されます。
【「バーチャルTA for Slack」導入授業】
科目名 :理工学部情報学科「情報メディアプロジェクトII」
受講者 :情報メディアコース3年 111人
担当教員:理工学部 講師 大谷 雅之、教授 山本 博史、准教授 阿部 孝司
開講日 :令和2年(2020年)9月16日(水)13:15~16:30(3・4限)
担当教員が、授業後に関連画面の紹介を交えながら、
システム説明を行います。
【バーチャルTAについて】
SCSK株式会社(旧名:株式会社JIEC)が、IBM Watsonの自然言語処理技術を用いて構築した質問応答システム「manaBrain」を、近畿大学理工学部の講義データを用いてカスタマイズしたものです。バーチャルTAは、学生からの質問に自動で対応するとともに、質問と回答の履歴と対応全体の状況を可視化します。これにより、講師およびTAは質問への対応業務が軽減されるだけでなく、対応履歴と対応状況をもとに質問への回答の精度を高め、学生の理解度を把握することもできます。また、学生は講義中以外でも時間や場所を問わず、気兼ねなく質問を行うことができるため、疑問があればその場で解決しながら講義や実習を進めることができます。
【バーチャルTAに関するこれまでの取り組み】
近畿大学理工学部情報学科では、平成29年(2017年)から、3年次後期開講科目「情報メディアプロジェクトII」において、SCSK株式会社の講師派遣を受け、対話システムの構築を通して最新のWebおよびAI技術について学ぶ実習を行っています。この授業では実習の内容上、学生からの質問が多く、その対応が教員およびTAの大きな負担となっていました。
そこで、平成30年(2018年)から「バーチャルTA」を導入したところ、学生から受けた質問のうち約半数にAIが回答するという成果をあげ、質問対応業務の効率化が図れることがわかりました。令和元年(2019年)には、それまで開発会社主体の運用だったものを、大学院生TAでも運用できるように改修し、さらに活用が進みました。
【関連リンク】
理工学部 情報学科 講師 大谷 雅之 (オオタニ マサユキ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2114-ootani-masayuki.html
理工学部 情報学科 教授 山本 博史 (ヤマモト ヒロフミ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/449-yamamoto-hirofumi.html
理工学部 情報学科 准教授 阿部 孝司 (アベ コウジ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/450-abe-kouji.html
理工学部
https://www.kindai.ac.jp/science-engineering/
▼本件に関する問い合わせ先
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住所:〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1
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メール:koho@kindai.ac.jp
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