【京都産業大学】半導体が磁石にもなるとき何が起こるのか? -- エレクトロニクスから次世代スピントロニクス社会実現への一歩 --



京都産業大学と国立研究開発法人日本原子力研究開発機構らの研究グループは、強磁性半導体が常磁性状態から強磁性状態に変化していく過程を詳細に観察することで、原子レベルでの強磁性発現メカニズムを明らかにすることに成功した。




 京都産業大学理学部の山上 浩志教授は、日本原子力研究開発機構の竹田 幸治研究主幹、東京大学大学院工学系研究科の大矢忍准教授、東京工業大学らの研究グループとの共同研究において、強磁性半導体(注1)が常磁性状態から強磁性状態に変化していく過程を詳細に観察することで、原子レベルでの強磁性発現メカニズムを明らかにすることに成功した。
 本研究では、大型放射光施設SPring-8の原子力機構専用ビームラインBL23SUを利用して、強磁性半導体の代表的な物質のひとつである(Ga,Mn)As 中のMn原子の磁性情報だけを抜き出し、温度の降下とともにMn原子が常磁性状態から強磁性状態に変化していく過程を詳細に観察することで、原子レベルでの強磁性発現メカニズムを明らかにした。
 本研究で明らかにされた原子レベルでの強磁性発現メカニズムについての知見は強磁性半導体の性能向上への鍵となる。これは新規強磁性半導体の物質設計へのベースとなる研究結果であり、既に極低温では実証されているスピントランジスタなどをはじめとした次世代スピントロニクス(注2)デバイスの室温動作実現に向けた指針を与えるものである。

 この研究成果は、2020年12月4日午前1時(日本時間)に米国応用物理学会誌『Journal of Applied Physics』のオンライン版にて出版された。

むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

用語解説
(注1)強磁性半導体
 半導体の中に鉄やコバルト、マンガンなどの磁性をもつ原子(磁性元素)を混入させた物質であり、発見当初は数%程度の濃度しか添加できなかったこともあって希薄磁性半導体と呼ばれた。しかし、試料作製技術の進歩により数10%程度の磁性元素を含む物質も報告され、強磁性半導体と呼ばれるようになった。半導体は本来は磁石の性質を持たないが、強磁性半導体では半導体と磁性体の特性が互いに関連した特異な現象が観測されており、半導体スピントロニクス材料として注目されている。最近では鉄を含む強磁性半導体の中に強磁性が室温で実現している物質の発見の報告があり、その応用可能性と強磁性発現メカニズムに興味がもたれている。
(注2)スピントロニクス
 電子の二つの性質、「電荷」と「スピン」は、それぞれ電子工学(エレクトロニクス)と磁気工学(マグネティクス)において別々に活用されてきた。1990年代に微細加工技術(ナノテクノロジー)が大きく進展したことで電荷とスピンを効果的に融合して利用する分野が構築された。これがスピントロ二クスという分野である。

関連リンク
・半導体が磁石にもなるとき何が起こるのか?-エレクトロニクスから次世代スピントロニクス社会実現への一歩-
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20201204_150_research.html
・京都産業大学 理学部物理科学科 山上 浩志教授
 https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/sc/yamagami-hiroshi.html
・国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 原子力科学研究部門物質科学研究センター
 https://msrc.jaea.go.jp/

▼本件に関する問い合わせ先
京都産業大学 広報部
住所:〒603-8555 京都市北区上賀茂本山
TEL:075-705-1411
FAX:075-705-1987
メール:kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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