一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所による最新の炎上事案分析
シエンプレ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:佐々木 寿郎)は、一般社団法人 デジタル・クライシス総合研究所(住所:東京都渋谷区、所長:佐々木 寿郎、以下「デジクラ総研」)と共同で、2023年7月1日~7月31日に発生したネット炎上についての件数とその内訳の分析結果を公開しました。
○資料ダウンロードページ
https://www.siemple.co.jp/document/enjou_report_202307/
■調査背景
2023年1月31日、デジクラ総研はソーシャルメディアを中心とした各種媒体とデジタル上のクライシスの特性、傾向と論調を把握するために「デジタル・クライシス白書2023」(調査対象期間:2022年1月1日~12月31日)を公開しました。継続調査の結果報告として、今回2023年7月に発生した炎上事案を、新たに分析しています。
投稿内容に「炎上」というキーワードを含む2,031件の投稿から120件の炎上事案を抽出(※)。炎上の原因となった問題行動の主体、問題行動の内容、炎上を起こした企業の業種などの切り口から傾向を分析しました。
※デジクラ総研では「炎上」の定義を、「企業や団体、個人が発言した内容、行った行為がSNSやWebメディア上に掲載・拡散され、それに言及した批判や非難の投稿が100件を超えた場合」としています。(投稿数についてはオリジナル投稿のみを試算。コメントのない再投稿は含みません)
○「デジタル・クライシス白書2023」は以下のURLからダウンロードをリクエストできます。
https://www.siemple.co.jp/document/hakusho2023/
■調査の概要
調査期間:2023年7月1日~7月31日
調査対象:X(旧Twitter)、Facebook、Yahoo!ニュース、Amebaブログ、FC2ブログ、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる など、SNS媒体と炎上拡大の要因になりやすいとデジクラ総研が判断した媒体への投稿
調査方法:デジクラ総研ソーシャルリスニングツールを使用
分析対象投稿数:2,031件
うち炎上事案数:120件
■調査結果トピックス
・7月の炎上事案は120件でした。前月に比べ、22件増加しています。
・炎上事案の原因となった問題行動の主体別の内訳では、「著名人」37件(30.8 %)、「法人等」51件(42.5%)、「一般人」32件(26.7%)という結果でした。
・前月6月と比較し、「著名人」は14件、「法人等」は23件増加し、「一般人」は15件減少しています。
・割合については、前月と比較すると「著名人」の割合(23.5 %→30.8 %)、「法人等」の割合(28.6%→42.5%)が増加し、「一般人」の割合(48.0%→26.7%)が減少しています。
・なお2022年全体の炎上事案の主体の割合は、「著名人」が35.2%、「法人等」が35.4%、「一般人」が29.4%とそれぞれの割合が約3割ほどでほぼ均等でした。それと比較すると、23年7月は「法人等」の割合が高い結果でした。
・「法人等」が主体となった事例については、大手中古車販売店の不祥事に関連する事例、官庁ならびに自治体の子育て支援政策に関連する事例などがみられました。
・また前年同月比では、炎上事案発生件数は28件減少しています。「著名人」が26件、「法人等」が1件、「一般人」が1件減少しました。
・炎上の原因となった問題行動のうち、103件(85.8%)が「不適切と判断される可能性のある発言・行為」に該当し、「反社会的行為や規則・規範に反した行為(の告白・予告)。法律に抵触する可能性のある行為」は17件(14.2%)と少数でした。
・前月と比較すると「反社会的行為や規則・規範に反した行為(の告白・予告)。法律に抵触する可能性のある行為」の割合(7.1%→14.2%)が増加しています。
・問題行動の主体のうち、「法人等」に該当する炎上51件を業界ごとに分類しました。炎上事案が多かったのは「娯楽・レジャー」「メディア」業界で、それぞれ15件(29.4%)という結果でした。
・問題行動の主体が「法人等」の場合について、上場企業か否か、また、それぞれの従業員数について分析しました。上場区分に関して「上場企業」3社(10.3%)、「非上場企業」26社(89.7%)という結果でした。
■分析コメント/西村あさひ法律事務所 パートナー 沼田 知之 氏
7月は、前月比で2割程度増加、昨年同月との比較では28件の減少であった。炎上の原因としても、従来どおり大部分が不適切と判断される可能性のある発言・行為であって、法令等への違反割合は少数に留まっている。マスメディアを通じて、著名な企業による法令等違反や大規模な不祥事について多くの報道がなされている場合、それに関連した炎上事案も発生し得ることから、他企業のリスク管理の観点でもそちらに目が向きがちである。しかし、日頃から発生し得る「通常運行の炎上」のリスクがそれによって低下するものではない、ということは再認識しておくべきであろう。
■調査結果詳細
抽出したデータは表1に基づき分類しました。
また、問題行動の主体が「法人等」の場合、表2に基づき20の業界に分類しました。
なお、表2に該当しない業界に関しては「その他」としてデータを処理しました。
各グラフにおける割合については、全て小数点以下第2位を四捨五入しました。
(表1)
参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、 2016
■著名人の定義について
・芸能人、政治家、アスリート、経営者である場合
・それ以外の職業の人物については、データ確認日時点でフォロワー(もしくはチャンネル登録者、読者登録者)数が100万人を超えている場合
(表2)
参考:業界動向サーチ「ジャンル別業界一覧」
https://gyokai-search.com/2nd-genre.htm
【炎上事案発生件数】
7月の炎上事案は120件でした。前月に比べ、22件増加しています。
炎上事案の原因となった問題行動の主体別の内訳では、「著名人」37件(30.8 %)、「法人等」51件(42.5%)、「一般人」32件(26.7%)という結果でした。
また前年同月比では、炎上事案発生件数は28件減少しています。「著名人」が26件、「法人等」が1件、「一般人」が1件減少しました。
前月と比較し、7月の炎上事案発生率は「著名人」が7.3ポイント、「法人等」が13.9ポイント増加し、「一般人」が21.3ポイント減少しました。
前年同月比では、「著名人」が11.8ポイント減少し、「法人等」が7.4ポイント、「一般人」が4.4ポイント増加しました。
【問題行動の内容別件数】
炎上の原因となった問題行動120件のうち、103件(85.8%)が「不適切と判断される可能性のある発言・行為」に該当し、「反社会的行為や規則・規範に反した行為(の告白・予告)。法律に抵触する可能性のある行為」は17件(14.2%)と少数でした。
炎上の原因となった問題行動の内容としては「2-4」(その他、特定の層を不快にさせるような内容・発言・行為)に該当する炎上が45.0%と最も多く、次いで「2-3」(非常識な発言・行為、デリカシーのない内容・発言・行為)、「2-1」(サービスや商品に関連する過失・欠陥など)に該当する炎上がそれぞれ約20%という結果となりました。
【炎上内容の詳細区分別件数】
炎上内容の詳細を分析したところ、「問題発言」に関する炎上事案が40件、次いで「非常識な行動(モラルのなさ)」に関する炎上事案が26件でした。
【業界別にみる炎上事案の特徴】
問題行動の主体のうち、「法人等」に該当する炎上51件を業界ごとに分類しました。炎上事案が多かったのは「娯楽・レジャー」「メディア」業界で、それぞれ15件(29.4%)という結果でした。
【上場企業の割合】
問題行動の主体が「法人等」の場合について、上場企業か否か、また、それぞれの従業員数について分析しました。
上場区分に関して「上場企業」3社(10.3%)、「非上場企業」26社(89.7%)という結果でした。
なお「法人等」に該当する炎上事案は、日本国内に所在する企業の炎上事案のみを計測しています。
前年同月比では、「上場企業」の割合が8.6ポイント減少しました。
従業員数2,000人未満、売上高2,000億円未満の企業規模で多く炎上事案が発生しました。
一方で従業員数1万人以上の企業であっても炎上事案が発生していることから、どのような従業員数や売上高であっても、炎上は発生する可能性があるといえます。
前年同月比では、企業の従業員数が1,000人以上の割合が21.0ポイント増加し、100人未満の割合が3.2ポイント減少しました。
■一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所 概要
名称:一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所
代表理事:佐々木 寿郎
アドバイザー:山口 真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
沼田 知之(西村あさひ法律事務所所属弁護士)
設立日:2023年1月20日
公式HP:
https://dcri-digitalcrisis.com/
関連会社:シエンプレ株式会社