【名城大学】高出力を可能にする縦型 AlGaN 系深紫外(UV-B)半導体レーザーを世界で初めて開発



名城大学理工学部材料機能工学科の岩谷素顕教授、竹内哲也教授、上山智教授、三重大学大学院工学研究科の三宅秀人教授、ウシオ電機株式会社、および西進商事株式会社の研究グループは、高光出力深紫外半導体レーザー実現に必要不可欠である縦型 AlGaN 系深紫外(UV-B)半導体レーザーを開発しました。本研究成果は、2023 年 10 月 16 日に応用物理学会誌の国際論文誌「AppliedPhysics Express」に掲載されました。




応用名城大学理工学部材料機能工学科の岩谷素顕教授、竹内哲也教授、上山智教授、三重大学大学院 工学研究科の三宅秀人教授、ウシオ電機株式会社、および西進商事株式会社の研究グループは、高光出力深紫外半導体レーザー実現に必要不可欠である縦型 AlGaN 系深紫外(UV-B)半導体レーザ ーを開発しました。本研究成果は、2023 年 10 月 16 日に応用物理学会誌の国際論文誌「Applied Physics Express」(https://doi.org/10.35848/1882-0786/ad03ac)に掲載されました。


【本件のポイント】
・高光出力化に不可欠な縦型 AlGaN 系深紫外(UV-B)半導体レーザーの開発に成功。
・AlGaN 系紫外半導体レーザーは高品質結晶を得るために絶縁性の基板上に結晶成長で作製され る。縦型 AlGaN 系深紫外半導体レーザーの実現に必要な絶縁性基板剥離技術、デバイスプロセス技 術、光共振器形成技術の開発に成功。
・作製した縦型 AlGaN 系深紫外半導体レーザーは、極めて鋭い発光スペクトル(光の波長が揃っている)、TE偏光特性(光の位相が揃っている)、スポット状の発光パターン(コヒーレントな光の特 長である)、そしてしきい値電流の確認の特性を示すなど、レーザー特有の特性を示しました。作製したレーザーの発振波長は UV-B 領域に相当する 298.1 nm。
・バイオテクノロジー、皮膚病治療などの医療用途や UV 硬化プロセス、レーザー加工など工業分野への応用に期待。


【研究の背景】
波長が 100~380 nm の電磁波は紫外線と呼ばれ、また波長が 300 nm 以下のものは深紫外線と呼ばれます。さらに、ISO 21348 によれば、紫外線は UV-A(光の波長:315-380 nm)、UV-B(280- 315 nm)、UV-C(100-280 nm)分類され、これらの紫外線を放射するレーザーは紫外線レーザー と呼ばれます。既存のレーザー光源には、ガスレーザーや YAGレーザーの高調波を使用する固体レ ーザーなどがあり、これらはバイオテクノロジーや皮膚病治療などの医療用途、UV 硬化プロセ ス、レーザー加工などの工業分野で広く利用され、レーザー特許出願技術動向調査報告書によれば 年間 2,000 億円に達し、市場規模は年々増加しています。しかし、これらのレーザーには大型(数十cm から数m)、高消費電力、限られた波長範囲、低効率、貴重な希少元素の使用など、多くの課題があります。
一方、半導体材料を使用した半導体レーザーは、LED と同様に電流を注入することでレーザー光を発生させることが可能です。その特長はコンパクト(数mm程度のサイズ)、長寿命、低消費電力、高効率、任意の波長のレーザー光を生成できること、希少材料を使用しないことなど、優れた 特性を持っており、高い潜在能力を秘めています。近年、UV-A から UV-B、UV-C の広範囲にわたる AlGaN 系半導体レーザーの室温発振に関する報告がありますが、先述の紫外レーザーの多くが数 ワット以上の高光出力で動作させているのに対し、深紫外領域の AlGaN系半導体レーザーの光出力は、最高でも 150 mW 程度にとどまっています。そのため、これらのデバイスの光出力を増加させ る技術開発が求められていました。
半導体レーザーの光出力は、その効率と注入電流に依存します。デバイスへの電流注入を増加させるには、デバイスのサイズを大きくする必要がありますが、現在の AlGaN 系紫外半導体レーザー は図 1 に示すように、高品質の結晶を確保するためにサファイアや AlN などの絶縁材料を使用しており、デバイス内で薄膜の n 型 AlGaN を横方向に電流が流れる横型デバイスのため、電流を均一に流すことが難しく、したがって大型化しても注入電流を増加させることが困難です。この問題を解決するためには、図 2 に示すように pn 接合に対して p 電極と n 電極を対向配置した縦型デバイス の開発が必要でした。


【研究内容】
縦型 AlGaN 系深紫外半導体レーザーを実現するためには、(1)絶縁性の基板を剥離する技術の開発、(2)半導体プロセスの開発、および(3)光共振器の形成技術の 3 つの技術革新が必要でした。本グループは、図 2 に示したように 3 つのブレークスルーによってその実現に成功しました。以下に詳細を概説します。
「(1)絶縁性の基板を剥離する技術の開発」については、名城大・三重大・西進商事の 3 機関が共 同研究し開発に成功しました。サファイア基板上の高品質 AlN は三重大が作製し、次に、名城大でナノインプリントリソグラフィー及びプラズマエッチングにより周期的な AlN ナノピラーを形成。 その上に AlGaN 系のレーザー構造を積層しました。さらに、西進商事では固体パルスレーザーを使 用して AlN と AlGaN 界面の結晶を分解し、デバイス構造のみを剥離する手法を開発しました。こ のような方法は、GaN 系青色 LED では広く使用されておりレーザーリフトオフ法と呼ばれていま す。しかし、AlGaN では Al ドロップレットが形成され、これが結晶の破壊を引き起こす致命的な 3 欠点がありました。しかし、本グループは AlN ナノピラーを使用し、パルス固体レーザーを採用す ることで、この課題を克服し、再現性の高い絶縁性のサファイアおよび AlN の剥離する技術の開発 に成功しました。また、その剥離メカニズムは三重大・名城大の共同研究で明らかにしています。
次に、「(2)半導体プロセスの開発」に関しては、名城大とウシオ電機との共同研究により実現しました。電極や絶縁層、電流狭窄構造などを設計通りに製造する技術を開発しレーザー発振に必要 なデバイス構造の実現に成功しました。
最後に「(3)光共振器の形成技術」については、名城大のグループがブレードを用いたへき開法を 開発し、優れた光共振器を形成しました。
これらの技術を結集して作製した縦型 AlGaN 系深紫外半導体レーザーは、室温・パルス駆動で動作させると、非常に鋭い発光スペクトル(光の波長が揃っている)、TE 偏光特性(光の位相が揃っ ている)、図 2 中に示したようなスポット状の発光パターン、そしてしきい値電流の確認など、レーザー特有の特性を示すことが確認されました。この結果から、作製した縦型 AlGaN 系深紫外半導 体レーザーは波長 298.1 nm の UV-B 領域に相当する深紫外レーザー光を放射することが確認され ました。


【今後の展開】
縦型 AlGaN 系深紫外半導体レーザーはデバイス・サイズを大きくしても均一に電流を流すことができるため、1 素子から 1 ワットを超える極めて高出力なレーザー光を得ることが期待できます。 さらに、これらを集積化することにより数十ワット~数百ワットの超小型レーザー光源を提供することができ、それらはバイオテクノロジー、皮膚病治療などの医療用途や UV 硬化プロセス、レー ザー加工など工業分野への応用が期待されます。
この成果の一部は、環境省「革新的な省CO2型感染症対策技術等の実用化加速のための実証事業/高効率・長寿命深紫外LEDの技術開発と細菌・ウイルス不活化および脱炭素効果の実証」、「JSPS科研費 22H00304」、「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」、「JST 研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム A-STEP 産学共同(本格型) JPMJTR201D」の支援を受けたものです。




【用語の解説】
1)レーザー:光の波長や位相がそろったコヒーレンス(可干渉性)な光のことを指す。通常の 自然光と異なり波長や位相が制御されており産業上様々な用途に用いられている。
2)半導体レーザー:半導体に電流を流すことによって実現されるレーザーであり、コンパクト (~数 mm)、長寿命(通常数万時間)、低消費電力、高効率、任意の波長のレーザー光が得ら れるなど他のレーザーに比べて優れた性能を有している。
3)縦型デバイス:電流をデバイスに対して縦方向に流すデバイスを呼ぶ。電流を横に流す横型 デバイスに比べ電流経路が短く且つ素子に対して均一に電流を流せることからレーザーに限 らず LED やパワーデバイスなど高出力化が必要な多くの半導体デバイスに適用されている。
4)AlGaN:アルミニウム、ガリウム、および窒素を用いた化合物である。高品質な単結晶を得ることにより波長 210 nm から 365 nm の紫外線を放射することができ、近年紫外 LED や紫 外半導体レーザー材料としてその応用が期待されている。


【お問い合わせ先】
■名城大学 理工学部材料機能工学科 教授 岩谷 素顕
〒468-8502 名古屋市天白区塩釜口一丁目 501 番地
TEL:052-838-2430
E-mail:iwaya@meijo-u.ac.jp




■三重大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 教授 三宅 秀人
〒514-8507 三重県津市栗真町屋町 1577
TEL:059-231-9401
E-mail:miyake@elec.mie-u.ac.jp


■西進商事株式会社 技術部 木村 央
〒650-0047 兵庫県神戸市中央区港島南町 1-4-4
TEL:078-303-3810
FAX:078-303-3822
携帯:080-9943-9342


■ウシオ電機株式会社 コーポレートコミュニケーション部 広報課
〒100-8150 東京都千代田区丸の内 1-6-5 丸の内北口ビルディング 17 階
TEL: 03-5657-1017
FAX: 03-5657-1020
E-mail: contact@ushio.co.jp







▼本件に関する問い合わせ先
名城大学渉外部広報課
住所:愛知県名古屋市天白区塩釜口1-501
TEL:052-838-2006
FAX:052-833-9494
メール:koho@ccml.meijo-u.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

この企業の関連リリース

この企業の情報

組織名
名城大学
ホームページ
https://www.meijo-u.ac.jp/
代表者
小原 章裕
資本金
0 万円
上場
非上場
所在地
〒468-8502 愛知県名古屋市天白区塩釜口1丁目501
連絡先
052-832-1151

検索

人気の記事

カテゴリ

アクセスランキング

  • 週間
  • 月間
  • 機能と特徴
  • Twitter
  • デジタルPR研究所