スマートフォンアプリによる、簡単に実施できるストレスマネジメント行動の提示・実践がネガティブ感情からの改善効果があることが実証実験を通じて確認され、12月2日-3日に神奈川大学で行われた日本健康心理学会第36回大会にて発表されました。
本実証実験はユーザー投稿型のセルフケア行動共有アプリ「ラムネ」を用いて実施されました。
日常的なストレスのセルフケアを行うことは自殺対策としても寄与しますが,自ら意識して習慣的にストレスマネジメント行動を行う日本人大学生は4割未満であると言われています。その原因としては, 学業と時間,場所,人,金銭などの実施コストの要因,例示が画一的な内容であるため個人のニーズに合わないという要因が挙げられます。
本実証実験は、時間・場所を選ばず、金銭的なコストも低い"スマートフォンアプリを用いたストレスマネジメント行動の提示"が大学生のセルフケア促進に有効であると考え、実施されたものです。
※日本健康心理学会第36回大会での発表名
「アプリを通じた簡易なストレスマネジメント行動の提示・実践が大学生の気分状態に及ぼす効果 ランダム化比較試験による検討」
〇伏島あゆみ(金沢工業大学)石原由貴(金沢工業大学)
近藤崇司(株式会社GOCCO.)山岸舞子(株式会社GOCCO.)
【研究の概要】
研究は、金沢工業大学の心理科学科 伏島あゆみ准教授とメディア情報学科 石原由貴助教、「ラムネ」を開発した株式会社GOCCO.(岐阜県大垣市)との産学共同で行われました。
実験では、実験参加者である大学および大学院の学生56名を「ラムネアプリを3週間1日1回程度利用する群」と「利用しない群」にランダムに割り振り、二群ともにアプリの利用前後、利用終了3週間後の3回に渡って、気分・孤独感を測定しました。
実験の結果、事前調査から事後調査にかけて、「ラムネアプリを利用する群」は「利用しない群」と比較して、「ネガティブ感情の低下」を中心とした気分状態の改善に効果が確認されました。
調査をすべて完了した人数は「ラムネアプリを利用する群」は20名(脱落率28.6%)、「利用しない群」は21名(25%)で、「ラムネアプリを利用する群」のうちの8名は調査終了後も自発的にラムネを利用しました。先行研究で行われていたデジタル治療脱落率の平均の31%と比べると低いことから、アプリ実施の負担は少なく、継続しやすかったと考えられています。
【実験詳細】
■調査時期と対象
2023年5-6月に大学および大学院の学生56名を対象に実施。
実施に当たっては、口頭および文書でインフォームドコンセントを行った。データは個人情報を含まない形に加工し、解析に用いた。
■方法
被験者56名を「ラムネアプリを利用する群」と「利用しない群」の二群に無作為に割り振った。「ラムネアプリを利用する群」は、介入期間の3週間、ラムネからストレスマネジメント行動(ゆるケア)を選択し、毎日1つ以上実施してもらった。利用については、スクリーンタイムとアプリ画面のスクリーンショットにより利用を判断。「利用しない群」はラムネを3週間利用しなかった。
二群ともに、アプリの利用前後、利用終了3週間後の3回にわたって、気分、孤独感を測定した。
気分:日本語版PANAS(佐藤・安田,2001)
孤独感:日本語版 Short-form UCLA 孤独感尺度3項目(Arimoto&Tadaka,2019)
■分析
時期(3)×群(2)を要因とした分散分析。
調査内容から、下記を介入効果の指標として利用した。
1.ポジティブ感情、2.ネガティブ感情、3.ポジティブ感情比(ポジティブ感情/ネガティブ感情)、4.孤独感
■結果と考察
介入および調査をすべて完了した者は、「ラムネアプリを利用する群」は20名(脱落率28.6%)、「利用しない群」は21名(25%)であった(回答の信頼性が疑われる「利用しない群」1名は解析から除外)。「ラムネアプリを利用する群」の4割は,介入終了後も自発的にアプリを利用した。先行研究で行われていたデジタル治療の脱落率の平均31%と比べると若干低い。アプリ実施の負担は少なく、継続しやすかったと考えられる。
3時点の変化を比較したところ、ポジティブ感情(論文中ではポジティブ気分)および孤独感では有意な主効果および交互作用はみられなかった。ネガティブ感情では群と時期の交互作用がみられ、postにおけるネガティブ感情は「ラムネアプリを利用する群」のほうが低かった。preからpostにかけてポジティブ感情比が高まり、postにおけるポジティブ感情比は「ラムネアプリを利用する群」のほうが高かった。「ラムネアプリを利用する群」の感想では、気分転換になった行動として「音楽(N=10)」や「呼吸や瞑想(N=4)」が多く挙げられた。
アプリを通じた簡易なストレスマネジメント行動の提示・実践は、主に「ネガティブ感情の低下」を中心とした気分状態の改善に効果があることが示された。気晴らしはネガティブな気分状態での反すうを妨げ、気分の改善を助けると言われています。既存のストレスマネジメント行動として音楽や呼吸法が気分に与える効果が示されており、アプリを利用した本研究で同様の効果を検証した。一方、他者との関わりを必要としないストレスマネジメント行動の実践は、孤独感には影響しないことが考えられる。
スマホアプリ「ラムネ 気分を少し変える"ゆるケア"」について
「ラムネ」はApp StoreからiOS版を無料でダウンロードできる
ラムネは、ゆるく実践できる気分転換"ゆるケア"で、毎晩のセルフケアを楽しむアプリです。
"ゆるケア"数は2,000個を超え、今の気分にあった"ゆるケア"を探して実践することで、ゆる〜く自分をケアできます。
"ゆるケア"の例
◯ホーミーを聞きながら睡眠トリップ
◯風呂場の電気は点けず洗面所の電気だけ点けて入浴する
◯今最も近くに置いてある本をとりあえず読む
◯おSiriさんの朗読で眠る
◯お風呂におやつとジュースを持ち込んで「お風呂Bar」を堪能しよう
その他の"ゆるケア"の例は以下のラムネ公式サイトでご覧になれます。
https://ramune.app/
2023年12月現在、iOS版のみがリリースされています。
[App Store]
https://apps.apple.com/jp/app/%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%83%8D/id1482388865
▼本件に関する問い合わせ先
金沢工業大学 広報課
住所:石川県野々市市扇が丘7-1
TEL:076-246-4784
FAX:076-248-7318
メール:koho@kanazawa-it.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
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