パナソニック株式会社(以下、パナソニック)は、シェイク・アフマド・ザキ教授監修の下、マレーシア日本国際工科院(MJIIT)と共同研究を実施し、東南アジアで深刻化する煙害(ヘイズ)のPM2.5に含まれる多環芳香族炭化水素(PAHs)の成分に対して、ナノイー(帯電微粒子水)技術が最大95%抑制することを確認しました。すでに検証済の5種類のPAHs※2に加えて、新たに3種のPAHsに対するナノイー(帯電微粒子水)技術による抑制効果が明らかになりました。
世界人口の99%は世界保健機関(WHO)の大気質ガイドラインレベルを満たしていない地域に住んでおり※3、大気汚染による健康への悪影響が問題になっています。特に東南アジア各国では、ヘイズへの対策が急がれています。ヘイズは、スマトラ島などでの大規模な焼畑や森林火災により生じた大量の煙による煙害であり、PAHsと呼ばれる有害物質が含まれています。PAHsは分解されにくいため風にのって拡散しやすく、農作物へ生体濃縮することが報告されている※4ほか、PAHsの中には肺機能の低下、喘息の悪化、心血管疾患、がんの発生率を増加させるものがある※5など、危険性を示唆する研究結果が多く報告されています。なお、本検証はこれらの症状の原因となる化学物質への効果検証であり、これらの症状に対する効果を保証するものではありません。
当社は、MJIITのシェイク教授監修の下、ヘイズに含まれている質量の割合が大きい3種(ナフタレン、フルオレン、アセナフテン) ※6のPAHsに対するナノイー(帯電微粒子水)照射試験を実施しました。その結果、3種全てにおいて抑制効果が確認されました。なお、本検証は後述の試験条件の結果であり、実使用空間における効果を実証したものではありません。
図1 ヘイズ警報期間中のPAHsの質量割合※6 表1 ナノイー(帯電微粒子水)照射によるPAHsの抑制率※7
パナソニックは、安全で安心な空間の提供を通じた社会への貢献を目指し、今後もナノイー(帯電微粒子水)技術を進化させるとともに、その可能性を追求し続けていきます。
■本検証のポイント
ヘイズに含まれるPAHsにおいて特に質量の割合が大きい3種について、ナノイー(帯電微粒子水)による抑制効果を確認
■試験条件
検証機関:マレーシア日本国際工科院(MJIIT)
検証対象:ナフタレン、フルオレン、アセナフテン
検証装置:ナノイー(帯電微粒子水)発生装置
検証方法:45Lチャンバー内に、溶媒に溶かしたPAHsが入った
シャーレを置き、シャーレから10cmの位置で、
ナノイー(帯電微粒子水)を1時間照射
その後、PAHsを回収し、
ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を実施
GC-MSから得られたスペクトルのピーク面積から
PAHs残存濃度を算出
ブランク環境(自然放置)とナノイー(帯電微粒子水)照射時を比較し、抑制率を算出※7
■検証結果
ナノイー(帯電微粒子水)を1時間照射したPAHsの抑制率※7を確認した結果を以下に記載
図3 ナノイー(帯電微粒子水)照射によるPAHsの抑制率※7
■マレーシア日本国際工科院 シェイク・アフマド・ザキ教授のコメント※8
ヘイズは、東南アジアで深刻な社会問題です。コロナ禍で停滞していた人間活動が再活発化している現在、ヘイズ発生量の増加による被害悪化の恐れがあります。ヘイズに含まれる物質は様々ですが、PAHsは人体や環境への有害性が高いとされています。本検証では、ヘイズに多く含まれる3種のPAHsに対して、ナノイー(帯電微粒子水)技術が有効であることが実証できました。今回の結果から、ナノイー(帯電微粒子水)技術は、ヘイズに悩む東南アジアの生活環境を改善できる技術として期待できます。
■ナノイー(帯電微粒子水)の発生原理
霧化電極をペルチェ素子で冷却し、空気中の水分を結露させて水をつくり、霧化電極と向き合う対向電極の間に高電圧を印加することで、OHラジカルを含んだ、約5~20nmの大きさのナノイー(帯電微粒子水)が発生(図4)
図4. ナノイー(帯電微粒子水)発生装置
※1 過去に検証済みのベンゾ(a)ピレン、ベンズ(a)アントラセン、ベンゾ(b)フルオランテン、インデノ(1,2,3-cd)ピレン、ジベンゾ(a,h)アントラセンに、今回検証を行ったナフタレン、フルオレン、アセナフテンを加えた8種
※2 【プレスリリース】帯電微粒子水「nanoe(ナノイー)」がPM2.5含有成分の分解と黄砂付着真菌の抑制に効果があることを検証(2014年1月16日)
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2014/01/jn140116-2/jn140116-2.html
※3参考; Ambient (outdoor) air pollution. WHO. 2024-09-13
※4参考:WHO Regional Office for Europe, “Human health effects of polycyclic aromatic hydrocarbons as ambient air pollutants: report of the Working Group on Polycyclic Aromatic Hydrocarbons of the Joint Task Force on the Health Aspects of Air Pollution.” , 2021.
※5参考:Nor Azura Sulong et al. “Distribution, sources and potential health risks of polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in PM2.5 collected during different monsoon seasons and haze episode in Kuala Lumpur,” Chemospher, vol.219, pp. 1-14, 2019.
※6参考:Jiraporn Chomanee et al. “Physicochemical and toxicological characteristics of nanoparticles in aerosols in southern Thailand during recent haze episodes in lower southeast Asia,” Journal of environmental sciences, vol.94, pp. 72-80, 2020.
※7 当社算出
※8 当社から依頼し、いただいたコメントを編集して掲載しています
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