デジタル社会におけるアナログ筆記の新たな提供価値創出へ
三菱鉛筆株式会社(本社:東京都品川区、社長:数原滋彦)は、慶應義塾大学理工学部の満倉靖恵教授(以下「慶應義塾大学」)との共同研究において、従来の“書く・描く”という筆記具の役割に加えて、新たな提供価値を創出するための試みの一つとして、手書きで日記をつけることが睡眠の質にどのような影響があるかという実験を実施いたしました。
今回の実験の結果、手書きで日記をつけた場合に睡眠時間全体に占める「深睡眠」の割合が高くなることが分かりました。これにより、睡眠の質に良い影響を与えることが期待されます。
1. 背景
当社は、筆記具という商品を通じて、多くの人が生まれながらに持つ個性と創造性を解き放つ表現体験そのものをご提供していくことを経営方針とし、筆記具の役割を“書く・描く”ための単なるツールに限定せず、お客様への提供価値をさらに広げ、高めていくことを目指しております。
その取り組みの一つとして、“書く・描く”という行為が日常生活にもたらす効果に関する検討を進めてきました。その中で、日記を書くことが、日々の出来事や思考・感情を振り返り、頭の中を整理し、心を落ち着かせることにつながる可能性があると考えるに至りました。ひいては、日記を書くことが睡眠の質を改善する効果も期待できると考え、実験を行いました。良質な睡眠は、疲労感の軽減や認知機能の向上にも効果があると考えられ、日記を書くという行為が健康維持の一助となる可能性があります。
2. 実験の内容
・実験期間は、2024年3月~6月の計3カ月間としました。
・実験条件として、実験期間3カ月間の就寝前の行動を次の三つに分け、それぞれの比較を行いました。最初と最後の2週間は①何もしない、1カ月間は②アプリ(デジタルツール)で日記を書く、もう1カ月間は③手書きで日記を書く、という内容です。
・睡眠中に心拍データを計測し、睡眠の質を5段階(WK:覚醒、REM:レム睡眠、N1:浅睡眠、N2:中等度の睡眠、N3:深睡眠)(※)に分類して評価しました。
(※)睡眠段階診断の国際基準であるR&K法による
3. 実験の結果
上記2.における三つの条件(①何もしない、②アプリで日記を書く、③手書きで日記を書く)で睡眠の質を比較したところ、疲労回復や認知機能に関連するN3(深睡眠)の割合が最も高かったのが、③手書きで日記を書く(29%)、次いで②アプリで日記を書く(20%)、①何もしない(12%)でした。
図:各条件における睡眠の質比較
4. 考察
この実験によって、日記をつけることでN3(深睡眠)の割合が高くなる傾向が確認されました。さらに、①手書きで日記を書くことで、②アプリで日記を書くよりも、N3(深睡眠)の割合がより高くなる傾向があることが分かりました。この結果は、手書きで日記を書くという行為が、深く良質な睡眠をうながし、疲労感軽減や認知機能の向上にも効果が期待できることを意味しています。
5. 実験を踏まえたコメント
三菱鉛筆株式会社 研究開発センター品川
「日記を書く」という身近な行為が、睡眠の質に具体的な影響を与えることが明らかになったことは、デジタル化が進む現代社会において、「手で書くこと」の価値を再評価する上で大変意義深い発見です。書く行為がもたらす効果は、睡眠に限らず多岐にわたると考えており、今後もさまざまな研究を通じて、社会が直面する多様な課題の解決に向けて貢献していく所存です。
【慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科 満倉靖恵教授】
慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授、医学部精神・神経科学教室兼担教授。
生体信号処理、脳波解析などをキーワードに、脳神経メカニズム・感情・睡眠・うつ病・認知症などに関する研究に従事。
世界初の脳波によるリアルタイム感情認識ツール「感性アナライザ」を開発。博士(工学)・博士(医学)。
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