認知症に早めに対応するための“合言葉”「また、にしない。まだ、にしない。」認知症月間に発信
当事者・医師・賛同企業が共創 認知症の早期対応を社会に根付かせる新たな一歩
日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:シモーネ・トムセン、以下、日本イーライリリー)は、認知症の早期対応を啓発する『認知症に早めに対応するための合言葉(以下、合言葉)』として「また、にしない。まだ、にしない。」を考案し、本日発表したことをお知らせします。この合言葉は、認知症の正しい理解と早期対応の重要性が広く社会に浸透するよう、認知症の当事者(ご本人・ご家族)、医師、複数の賛同企業・団体が共同で、9月の「認知症月間」に向けて考案しました。近年、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の施行や、新たな治療法の登場、テクノロジーの進化等を背景に、MCI(軽度認知障害)や認知症を取り巻く環境は大きく変化しています。一方、予兆を感じながらも認知症とは気づかず、認知症である可能性に気づいたとしても医師への相談をためらい、診断が遅れ、その間に症状が進行してしまうケースもみられます。実際に、日本イーライリリーの実施した調査では、MCIや認知症の当事者が異変に気付いてから医療機関を最初に受診するまでに、4割以上の方が1年以上かかっていました(※1)。こうした現状を踏まえ、「何か変だな」と感じたときに誰もが気軽に早めの一歩を踏み出せる社会を目指し、認知症の早期対応に向けた“心構え”と“行動”を促す合言葉を考案しました。
■認知症に早めに対応するための合言葉『また、にしない。まだ、にしない。』
本合言葉の考案に協力していただいた認知症の当事者の方からもの忘れを代表とする初期症状が「疲れのせい」「年のせい」等と受け止められ、受診が後回しになる可能性が指摘されました。
ご本人もご家族も変化に気づきにくい早期の認知症の特性を、「気のせいにしない」という視点を持つことが早めの対応への第一歩だと考えました。そのため、合言葉は、繰り返し感じる違和感に焦点を当てた表現を用いています。
「“また”疲れのせい、にしない。“また”年のせい、にしない。
“まだ”早い、と思わない。“まだ”大丈夫、と思わない。
ご自身も、ご家族も、このように“また”、“まだ”、と気のせいにしないでください。」
この合言葉には、誰もが認知症を身近に感じ、早期対応へ踏み出しやすい社会を目指すメッセージが込められています。
啓発ポスターはこちらのWebサイトからダウンロードができます。
https://www.lilly.com/jp/news/stories/dementia
以上
参考情報
■「合言葉」ができるまで ~考案プロセスと概要~
【考案プロセス】
多様な人に受け入れてもらえる合言葉を創るために、インクルーシブデザインの手法(※2)を取り入れたワークショップ形式で進めました。特定非営利活動法人 Collableリードのもと、認知症当事者、医師、一般生活者(賛同企業)など、さまざまな立場から約20名が会場とオンラインで参加、少人数のグループに分かれて活発な議論を交わしました。
1回目のワークショップでは、当事者の実体験が共有され、MCI/認知症の症状や経過の多様性について理解を深めました。そのなかで「受診までに5年以上かかった」、「当時、違和感は感じていたけれど認知症だとは思わなかった」など、当事者や周囲の理解が追いつかず、適切な対応に至らなかった現実も明らかになりました。
「早期対応」のためには、認知症に関する正しい理解を広めることに加え、心理的な壁を乗り越えなければならないという課題があることも、参加者間で共有されました。
2回目のワークショップでは1回目の議論を踏まえて作成された素案をもとに、『合言葉』について議論を深めました。
まず、前回のワークショップにも参加したコピーライターが起案した複数の『合言葉』案に対し、参加者が第一印象で投票、その理由を共有しました。「キャッチコピーとしてはインパクトがあるが、ネガティブに受け取られないか」「周囲の人が声かけに使える優しい表現にしたい」「認知症に関心を持ってもらいたいが、偉そうに聞こえないものがいい」など、立場を越えた多角的な意見が交わされました。
続いて、デザイナーが制作したポスター案をもとにグループディスカッションを実施。「認知症のポスターだと一目でわかる方がいいのか、それとも誰もが興味を持って目を止める表現がよいのか」「多様な世代や生活環境の人が、自分ごととして感じられるデザインが望ましい」など、当事者だけでなく周囲の人も一緒に取り組むことの大切さを指摘する声が多く挙がる中、ついに『合言葉』が完成しました。
- 協力:公益社団法人 認知症の人と家族の会
株式会社日本総合研究所、株式会社イトーヨーカ堂、大成建設株式会社、
特定非営利活動法人日本医療政策機構(HGPI) - 監修:神戸大学大学院保健学研究科・リハビリテーション科学領域 教授
同認知症予防推進センター長 古和 久朋 先生
東京都健康長寿医療センター 健康長寿イノベーションセンター
臨床開発ユニット長 井原 涼子 先生
同認知症予防推進センター長 古和 久朋 先生
早期に正しく診断され、個々の当事者に合った適切な治療を行うためには、当事者の想いに配慮した対応が不可欠です。合言葉を作るためのワークショップを通じて、当事者が社会に向け積極的に自分の想いや経験を語ることの「重み」を再認識しました。認知症や当事者の想いに対する社会の正しい理解が進み、当事者がその人らしく生活できる共生社会を実現するために、今回の合言葉が一助となればと思います。
臨床開発ユニット長 井原 涼子 先生
多様な立場の方々に意見を寄せていただいたことで、認知症の早期対応が遅れやすい要因がより明確になったと感じています。医療の進歩に対して、社会の理解や行動がまだ十分に追いついていないのが現状です。早期対応を当たり前にするには、家族だけでなく周囲が気づき声をかけられる環境を整えることが重要であり、その一助として今回の合言葉の意義があると考えます。
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。日本の患者さんが健康で豊かな生活を送れるよう、日本で50年にわたり最先端の科学に思いやりを融合させ、世界水準の革新的な医薬品を開発し提供してきました。現在、がん、糖尿病、アルツハイマー病などの中枢神経系疾患や自己免疫疾患など、幅広い領域で日本の医療に貢献しています。詳細はウェブサイトをご覧ください。https://www.lilly.com/jp
References:
※1 日本イーライリリー「MCIまたは認知症当事者、一般生活者に対する意識調査」(2025年)
※2 九州経済産業局「経営戦略としてのインクルーシブデザイン」:インクルーシブデザインとは、これまでメインターゲットとされていなかったユーザー(例:障害者・高齢者・外国人等)とともに製品・サービスなどの開発プロセスを進め、新たな価値創造につなげていく手法