全国の美術館の学芸員から推薦された約450点から、100作品を選定 「日本で見られるアート100選:日本の現代アート編」 2026年3月27日(金) 特設サイトで公開開始

独立行政法人国立美術館 国立アートリサーチセンター

 独立行政法人国立美術館 国立アートリサーチセンター(略称:NCAR)(東京都千代田区 センター長:片岡真実)は、文化審議会第3期文化経済部会の提言を受け、日本の美術館コレクションの総体的な魅力を可視化する新事業「日本で見られるアート100選」に取り組み、3月27日(金)より「日本で見られるアート100選:日本の現代アート編」を特設サイト(URL: https://art100-ncar.artmuseums.go.jp)で公開いたします。
 日本国内の美術館には優れたコレクションが数多く存在していますが、これまで個々の作品が注目されることはあっても、それらを総体的に捉える機会はありませんでした。そこで、日本のアートの豊かさを多くの方が知り、各地の美術館を訪れるきっかけにしていただきたいという思いから、この新事業はスタートしました。
 本事業は、毎回ひとつのテーマを設けて「100選」の選定と公開を継続していく予定で、初回となる今回のテーマは国際的にも注目を集めている「日本の現代アート」です。1945(昭和20)年以降に制作された作品が対象で、全国の400か所以上の美術館の学芸員に協力を依頼し、推薦された450点もの作品の中から、外部有識者を含む6名で構成された選定委員会が協議を重ねて100の作品を選定しました。これらの作品は、32の都道府県内の美術館に所蔵されています。また、作家のジェンダー比率も偏らないよう留意し、男性55名、女性43名*が選定されました。
 特設サイトでは、作品100点の画像、基本情報、解説、所蔵館リンクの閲覧が可能で、関連年表や、作者や所蔵館への取材記事などのコンテンツの公開も予定しています。
*グループはカウントに含まず
「日本で見られるアート100選:日本の現代アート編」の一作品
塩田千春《水の記憶》2021年 十和田市現代美術館
©JASPAR, Tokyo, 2026 and Chiharu Shiota

【選定作品の一部とロゴ】
 
束芋《真夜中の海》2006/2008年、
所蔵および写真提供:公益財団法人アルカンシエール美術財団/原美術館ARC 
©Tabaimo
中谷芙二子《Dynamic Earth SeriesⅠ》
霧の彫刻#47610、2021年、長野県立美術館 ©Fujiko Nakaya 
©Nagano Prefectural Art Museum
若林奮《Valleys (2nd stage) 》 
1989年制作/2006年設置、横須賀美術館
2023年撮影:山本糾

 
高松次郎《影》1977年、国立国際美術館
©The Estate of Jiro Takamatsu, Courtesy of
Yumiko Chiba Associates, Tokyo, Pace Gallery,
New York and Stephen Friedman Gallery,
London. 撮影:福永一夫
山崎つる子《作品》1963年、兵庫県立美術館
(山村コレクション) 
©Estate of Tsuruko Yamazaki, courtesy of LADS Gallery, Osaka and Take Ninagawa, Tokyo


「日本で見られるアート100選」ロゴ

【選定作品一覧】

◆選定委員のコメント(ウェブサイトより抜粋・五十音順)
金井直(信州大学人文学部教授)
現代の美術の流れをつくってきた作家・作品をしっかり紹介することと、その流れを見直すうえで、あるいは、これからの流れをつくっていくうえで重要な作家・作品をできるだけ加えることを考えて、選定にあたりました。さらに意識したのは、全国各地の美術館の作品をなるべく多く選ぶことでした。これには地域の美術を顕彰すると同時に、地域の美術館の収集活動を評価・応援したい思いがありました。今回の100選が各地の美術館の魅力再認識の一助となれば、なによりです。
川浪千鶴(インディペンデント・キュレーター、元高知県立美術館企画監兼学芸課長)
今回の選定ではさまざまな観点が浮上しましたが、中でも地域と男女比のバランスを重視できたことはとても良かったと思っています。地方の美術館が編み上げた地域美術のコレクションには、近現代美術の歴史を問い直す重要な作品が数多くあります。女性作家たちの優れた作品群からは、男女が共につくってきた時代や社会のあり方についても学ぶことができます。
木村絵理子(弘前れんが倉庫美術館館長)
「日本で見られるアート100選:現代アート編」というタイトルが、そもそも何を指すのか?枠組みをどう設定し、どのような基準で選定するのかについて協議する時間は、個別の作品についての議論と同等の時間を要したように思います。(中略)もう1点強調したいのは、2025年現在の視点が重視されていることです。発表当時の影響力以上に、ジェンダーバランスや地域的な多様性といった観点から、時代を経た今、取り上げるべき作品が重視され、加えて、作品を所蔵する美術館とアーティストとの関係性にも力点が置かれています。
島敦彦(国立国際美術館長)
制作年代、男女比、地域のバランス、分野、国際性、今後の評価、話題性などさまざまな指標を考慮して、とにかく今あらためてご覧いただきたい作品群にまとめ上げることに努めました。選定作品は、各地の美術館でいつでもご覧いただけるものもあれば、いろんな事情で展示機会の少ないものも含まれます。しかし、何かの折に当該館あるいは貸出先の美術館で実見できる場合もありますので、多くの皆様に各地の美術館の魅力的なコレクションに注目していただきたいと切に願っています。
関直子(早稲田大学文学学術院教授・埼玉県立近代美術館特任館長)
選定の議論にあたりまず留意したことは、各年代で、新たな表現として注目された女性美術家の活動のありようを、代表的な作品によって辿ることができるようにすることでした。(中略)また、社会の構造やメディア環境が激変した2000年代以降に活動を開始した世代の制作活動が、それ以前の作品群と接続するものでもあることがわかるよう、多様な表現をとりあげました。
桝田倫広(東京国立近代美術館主任研究員)
この100点に対して、誰彼が入っていない、あの作品が入っていない、という声がすぐにでも聞こえてきそうです。そうなんです。日本の現代アートの面白い作品は、100点なんかに収まるものではありません。ぜひここに選ばれた作品たちを見る旅に出て、日本の美術館、そしてそこにある作品たちの豊かさを改めて実感してほしいと思います。そしてみなさんがそれぞれの100点、いや1,000点を選ぶきっかけになればと思います。


◆国立アートリサーチセンター長 片岡真実 メッセージ
 日本では明治期に、美術あるいはミュージアムという概念が輸入されて以来、長い時間を経て全国各地に数多くの美術館が設立されてきました。それぞれの経緯や運営母体はさまざまですが、我が国の美術館に収蔵されている作品を総体として想像してみると、それらは個々の美術的価値だけでなく、各時代の証言とも言える貴重な文化的、社会的財産でもあります。ただこれまで、そのような視点で全国の美術館の収蔵品を捉える機会はあまりありませんでした。
 令和5年度の『文化審議会 第3期文化経済部会アート振興ワーキンググループ 論点整理』では、文化経済政策において「アート振興」が果たす役割を検討するなか、アートが持つ美術的価値および社会的価値を支える美術館が注目されています。そして「日本におけるアートコレクションの歴史を確認し、日本国内に所在する優れたコレクションを可視化するため、「名品百選」等の手法の活用による国内コレクションの可視化とその有効活用を推進する。」という提言がなされています。
 国立アートリサーチセンターでは、この提言を受けて、令和7年度、国内美術館が収蔵する優れた作品の可視化を目指す事業として「日本で見られるアート100選」を立ちあげました。初回は「日本の現代アート」を対象とし、以後もさまざまな時代毎、ジャンル毎に継続的にこの事業を実施していく予定です。ここで選定された100点は各美術館の学芸員や専門家の議論を経た結果ですが、その選定の過程では我が国の美術館に時代を代表する極めて優れた美術品が数多く収蔵されていることも改めて認識されました。
 日本の美術館の初期は、収蔵品を持たない展覧会会場としての役割が大きかったこともあり、歴史的にも「企画展」が重視されてきた傾向がありますが、近年ではその反省も含め、「コレクション展」の充実の必要性も指摘されています。本事業が、選ばれた100作品はもとより、それぞれの美術館に収蔵されているコレクションや「コレクション展」に改めて光を当てる機会となり、我が国の美術や美術館の豊かな歴史が、国内外に広く伝わっていくことを願うものであります。

 

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