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新日鐵住金株式会社(代表取締役社長 進藤孝生 以下、「当社」)の橋梁用高降伏点鋼板(SBHS(Steels for Bridge High Performance Structure))は、2006年に東京ゲートブリッジ(東京都)への本格的な採用以来、築地大橋(東京都)や朝明川橋(三重県/中日本高速道路(株))等に最大86ミリの極厚材が採用されるなど、採用実績が11件、出荷数量が2.2万トンを超えました。本年8月、奈良県十津川村に完成した沼田原(ぬたのはら)橋では、SBHSの耐候性仕様(※1)であるSBHS500Wが初めて採用されました。SBHSは、東京ゲートブリッジへの採用実績を踏まえJIS規格化(※2)され、その後各種鋼橋設計要領書(※3)などに掲載され普及促進の環境が整えられています。
SBHS(JISG3140)は従来橋梁用として一般的に使用されている溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106)と比較して、高強度・高靭性であり、溶接性、冷間加工性にも優れた橋梁用の高性能鋼材です。構造設計上の基準強度である降伏強度が従来鋼より10~20%高く、軽量化など経済的な設計が可能となります。また、降伏強度の向上を、溶接性や加工性を阻害する合金類の添加ではなく制御冷却プロセスを駆使した鋼材組織の造り込み技術で実現しているため、溶接性(溶接時の予熱作業の省略や低減が可能)、冷間加工性にも優れています。
SBHSには、降伏強度400、500、700N/mm2の3種類、各強度に対して耐候性仕様を加えた400W、500W、700Wの合計6種類の鋼材規格でラインナップされています。
今回架設完了した“沼田原橋”は、奈良県十津川村の渓谷を跨ぐ全長57mの方杖ラーメン箱桁橋です。最近では、橋梁の維持管理費低減や初期コスト抑制の観点から、鋼橋の約30%に耐候性鋼が採用されています。本橋は太平洋からの離岸距離が約45kmと十分確保できることから無塗装耐候性鋼の適用が可能であるため、耐候性仕様が選定されました。また、支点付近は、橋梁に作用する荷重を下部工に伝達する重要な部位で、補強部材等が取り付く狭隘なスペースでの溶接作業となるため、品質確保と現場作業性の向上を目的に、降伏強度が高く、溶接性が良好なSBHS500WがJIS規格材として制定されて以降、初採用(SBHS400Wも使用)されました。本橋は、瀧上工業(株)により工事が進められ、2015年8月に十津川村に引き渡されました。
※1:耐候性鋼とは
耐候性鋼とは、さびをさびで防ぐという独特の形で鋼の弱点を克服した鋼材です。耐候性に優れているので、無塗装で使用可能であり、メンテナンスコストを低減できます。さらに、保護性さびの落ち着いた色調によって、構造物の美しい外観を保ちます。
※2:東京ゲートブリッジへの採用実績を踏まえSBHSがJIS規格化
SBHSの前身で日本鉄鋼連盟製品規定(MDCR0014-2004)にあるBHS(Bridge High Performance Steel)は、東京都港湾局発注の“臨海中央橋”及び、2012年2月供用開始された国土交通省関東地方整備局発注の“東京ゲートブリッジ”に採用されています。
これらの実績を踏まえ、鋼材のJIS規格化が検討され、日本工業標準調査会の審議を経て、2008年11月20日に(財)日本規格協会からJIS G3140橋梁用高降伏点鋼板として4規格(SBHS500, SBHS500W, SBHS700, SBHS700W(Wは耐候性仕様))が制定されました。橋梁用厚板に関するJIS規格鋼材としては、実に40年振りとなる新規格制定です。その後、2011年11月に降伏強度400N/mm2であるSBHS400及びSBHS400Wが同規格に追加されました。その結果、SBHSには、降伏強度400、500、700N/mm2の3種類、各強度に対して耐候性仕様を加えた計6種類の鋼材規格で構成され、当初提案された全種類がラインナップとして揃いました。
※3:SBHSのJIS規格化を受け各種施工要領書に掲載
2009年7月:「鉄道構造物等設計標準・同解説 鋼・合成構造物」、(公)鉄道総合技術研究所「材料」の解説に記載
2012年3月:「道路橋示方書・同解説」、(社)日本道路協会「鋼橋編 鋼種の選定」の解説に記載
2015年6月:「橋梁構造物設計施工要領」、首都高速道路(株)「使用材料」に記載
※写真提供:瀧上工業株式会社
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