新日鐵住金株式会社(代表取締役社長:進藤孝生、以下、「当社」)は、大型コンテナ船用に、万が一亀裂が入った際にも亀裂が停まる脆性亀裂伝播停止特性(BCA:Brittle Crack Arrest)と鋼材そのものに亀裂が入らないようにする脆性亀裂発生特性(CTOD:Crack Tip Opening Displacement)の両方の特性を併せ持つ鋼材として、世界5大船級の一つであるDnV-GL(ディーエヌブイ ジーエル)船級協会から5月に世界で初めて承認を取得しました。
DnV-GL船級協会より承認された鋼材は、大型コンテナ船の重要部材に使用される降伏強度390N/mm2(引張強さ510N/mm2)の高強度厚鋼板(最大板厚100mm)です。溶接部などに潜在的に存在する欠陥から、万一、船体に脆性亀裂が発生した場合でも、同部位で亀裂を停止させることが可能であり、かつ、脆性亀裂発生への抵抗を高めた鋼材です。これによって、コンテナ船の安全性をより高い次元で実現するだけでなく、国際船級協会連合(IACS:International Association of Classification Societies)が規定する厳格検査プロセスの簡素化を図ることが可能であり、建造の効率化、コスト低減に寄与します。
海上輸送の高効率化を目的に、コンテナ船は70年代に比べ約10倍もの大型化が進み、それに伴い、コンテナ船の重要部材(Hatch Side CoamingやUpper Deck:図1参照)に使用される鋼板の板厚が急激に厚くなっています。一方で2005~2006年のNK船級協会(日本海事協会)の研究等にて、板厚が厚くなると、脆性亀裂が発生した場合、亀裂が船体を貫通する危険性があることが判りました。
これまで、大型コンテナ船の建造において、使用する船体用圧延鋼材や溶接部の検査に特別な規定はありませんでしたが、2013年にIACSが、コンテナ船の重要部材への脆性亀裂伝播停止特性を高めた高アレスト鋼(BCA鋼)適用と、船舶建造時の溶接部超音波探傷検査方法に、これまで実施されてきた検査方法よりさらに厳しい検査法の適用を規定化し、2014年以降の契約船に適用されることとなりました。
当社は、2006年に高アレスト型降伏強度460N/mm2高強度厚鋼板を世界で初めて実用化し、これまで2万トンを超える高アレスト鋼を製造出荷してきました。併せて、厳格な安全性が要求される海洋構造物向けCTOD保証構造用鋼を製造出荷してきた高い技術力をベースに、厳格化された超音波探傷検査方法にも対応できる、脆性亀裂伝播停止特性(BCA)と脆性亀裂発生特性(CTOD)の両方の特性を併せ持つ鋼材の開発を行いました。
当社は、今後も高機能鋼材の開発・提供を通じて、船舶のより一層の安全性向上と地球環境への貢献に取り組んでまいります。
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