顧みられない病気の新薬開発を加速するグローバルな試みに初の米国企業が参加
<2016年6月15日DNDiが発表したプレスリリースの参考和訳です。>
[サミット・米国ニュージャージー、ジュネーブ・スイス―2016年6月15日]Drugs for Neglected Diseases initiative(本部:スイス・ジュネーブ、最高責任者:ベルナール・ぺクール医師、以下、DNDi)は、バイオ医薬品企業セルジーン社(本社・米国)が、「顧みられない熱帯病(NTDs)創薬ブースター」のグローバルコンソーシアムに5番目の企業として参加し、世界で最も顧みられない二つの病気であるリーシュマニア症とシャーガス病の創薬の初期段階を加速しコストを削減する新しい試みに取り組むことを発表しました。
DNDiの呼びかけにより「顧みられない熱帯病(NTDs)創薬ブースター」プロジェクトは、日本の企業3社すなわちエーザイ株式会社、塩野義製薬株式会社、武田薬品工業株式会社と英国企業のAstraZeneca plcの合計4社により1年前に発足しました。このプロジェクトは創薬研究の初期段階における製薬企業間の障壁を取り除くだけでなく、DNDiにとって、新たな治療法を可能にするために何百万もの有望な化合物を同時に探索することができます。
DNDiのドラッグディスカバリー担当部長、チャールズ モーブレー博士(Charles Mowbray, Ph.D.)は次のように述べています。「セルジーン社の創薬ブースターへの参加をたいへん嬉しく思います。セルジーン社の創薬ライブラリーにある化合物のコレクションが加わることにより、リーシュマニア症ならびにシャーガス病に、何としても必要とされる、新たな治療法の発見につながる機会が増しました。1年が経過した創薬ブースターの活動において、すでに7つのスクリーニングプロジェクトが始動し、そのすべてにおいて改良された抗寄生虫化合物を同定しており、私たちの創薬ブースターのコンセプトが望みどおりの成果を上げていることが証明されています。」
今回の合意はセルジーン社とDNDiの長年にわたる協同関係の上に築かれており、顧みられない熱帯病を対象としたセルジーン社の化合物ライブラリーを探索します。2014年9月にDNDiとセルジーン社の一部門であるセルジーン・グローバル・ヘルス(Celgene Global Health)は、リーシュマニア症、アフリカ睡眠病、シャーガス病、河川盲目症、象皮病など、数ある熱帯病の中で最も顧みられない病気の新薬候補化合物を同定ならびに最適化する4年間の協同契約を結びました。セルジーン社は、「患者さんは、場所や財源にかかわらず、病気の予防、診断、治療において医学の進歩の恩恵をこうむる機会を持つべきである」という信条の基に創立されました。セルジーン・グローバル・ヘルスは2009年に、この信条に則って、同様の考えを持つ機関とパートナーを組み、発展途上国の疾患に特化した取り組みを行うために設けられました。
従来、創薬の初期段階には多大なコストと時間のかかるプロセスが必要でした。創薬ブースターにおいては、すべての参加企業の創薬ライブラリーを多角的に同時探索するプロセスを採用しており、DNDiは各企業で何十年もの間、研究を積み重ねた結果生み出された化合物にアクセスすることができます。
「各プロジェクトではすでに化合物合成のコストを数万ドル節約しており、創薬プロセスを2~3倍スピードアップさせています」と、モーブレー博士はさらに述べています。
「顧みられない熱帯病(NTDs)創薬ブースター」プロジェクトは、最初の12ヵ月間において驚異的な進捗を遂げ、2016年と2017年にはDNDiの誘導体最適化(lead optimization)のポートフォリオに新たなシリーズを提供できる見込みです。本プロジェクトにおける最初の結果が、間もなく発表される予定です。
以上
【Drugs for Neglected Diseases initiative, DNDi :顧みられない病気の新薬開発イニシアティブについて】
1990年代後半、発展途上国の現場で医療活動に従事していた国境なき医師団のチームは、顧みられない病気に苦しむ患者を治療できないことに苛立ちを募らせていました。患者の治療に使用する医薬品の効果がなかったり、強い副作用があったり、あるいは製造中止になって使用ができないなどの問題があったためです。そこで、国境なき医師団は、1999年に受賞したノーベル平和賞の賞金の一部を、患者のニーズを重視して、顧みられない病気に対する治療薬の研究開発(R&D)に取り組むための革新的な組織の設立に充てることに決定し、スイス・ジュネーブに本部を置く非営利財団として2003年7月に正式に発足しました。DNDiはヨーロッパを中心とした多くの政府機関および私設財団から資金援助を受けて活動しています。2013年度からは日本政府も参画する公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)による資金援助も受けています。また、WHOの熱帯病医学特別研究訓練プログラム(WHO-TDR)が常任オブザーバーとして参加しています。www.dndi.org/
【DNDi Japanについて】
DNDi Japanは、2003年に日本の活動を開始し、2009年に特定非営利活動法人として東京都の認証を受けました。顧みられない熱帯病(NTDs)に苦しむ途上国の人々を援助するために日本の窓口として、DNDi本部のプロジェクトを支援し日本国内外の協力先と協働して、NTDsの治療薬開発、それに関連する能力開発、ならびに啓発活動など、発展途上国の人々の保健医療、福利厚生に貢献することを目的とした活動を行っています。www.dndijapan.org/
お問合せ:広報担当 松本眞理(mmatsumoto@dndi.org/ TEL03-4550-1195)