古着や傘などをモティーフにした繊細なインスタレーションを手がける平野薫が7/22(日)より美術館での初個展「記憶と歴史」を開催
箱根の緑を望む高さ5mのロビーにて、新作3点を含むインスタレーションを公開!
ポーラ美術館(神奈川県・箱根町)は、2017年10月に、現代美術を展示するスペース「アトリウム ギャラリー」をオープンし、平成8年よりポーラ美術振興財団が助成してきた若手芸術家たちを紹介する「HIRAKU Project」を開始しました。第5回目の展示として、「平野薫―記憶と歴史」展を、2018年7月22日(日)から9月24日(月)まで開催いたします。平野薫は、古着や布製の小物などを糸の一本一本にまで分解し、それらを展示空間の中に再構成する繊細なインスタレーションを手がけてきました。ドレスや下着、靴、傘といった身の回りのモティーフは、元々の素材である糸の状態に戻されることで、撚れ(よれ)や色褪せを一層顕在化させ、それを身に付けていた人の「気配」や「身体性」、そして個人の「記憶」を強く感じさせます。
本展覧会では、身近なモティーフから漂う個人の記憶や経験を扱いながらも、それを歴史という大きな流れの中に還元していくことをテーマとし、新作3点を含む計4点を展示いたします。
3点の傘(旧作1点、新作2点)を組み合わせたインスタレーションでは、作家が留学したドイツの傘(旧東ドイツ製)と、故郷・長崎、そして現住地・広島で入手した傘を使用しています。3つの都市で出会ったモティーフのインスタレーションが重なることで、これらが歴史的に強い意味を持つ場所であることを想起させます。
左・中央:《untitled –rain DDR–》 2014年 素材:傘 Installation view : tim|State Textil and Industry Museum Augsburg Photo by Felix Weinold
右:《untitled –rain DDR–》(部分)2014年 素材:傘 Installation view : Arts Maebashi, Gunma Photo by Shinya KIGURE
新作参考イメージ
また本展では、工業用のミシンや糸を使った新作インスタレーションも発表いたします。本作品はこれまでの平野の作風とは大きく異なる、新たな展開を予見させるものです。戦時中の重機製造にルーツをもつメーカーのミシンを用い、戦後日本の高度経済成長を支えた工業機器と、私たちが日々消費する衣服や繊維との関係性、そして近代日本の歴史を暗示するかのような作品を試みます。個人の記憶を歴史の中に還元すると同時に、歴史という漠然とした概念が「誰かの記憶や経験の集積」であることを、観る者に強く訴えかけることでしょう。
◆平野 薫(ひらの・かおる)
■ポーラ美術館について
2002年に神奈川県箱根町に開館。ポーラ創業家2代目の鈴木常司が40 数年間にわたり収集した、西洋絵画、日本の洋画、ガラス工芸、古今東西の化粧道具など総数約1万点を収蔵。
・開館時間:9:00-17:00(入館は16:30 まで)
・休館日:無休(展示替えのための臨時休館あり)
・所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
・TEL:0460-84-2111