藤田医科大学ががん患者1000人に無料ゲノム検査[第2期]を実施
―中部地方初の取り組み―
藤田医科大学(愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1番地98 学長:湯澤由紀夫)は、がんの新たな診断・治療法の開発に向け、藤田医科大学病院のがん患者さん1000人を対象に、2023年1月より第2期の無料ゲノム検査を実施する。無料ゲノム検査は、2021年4月からを第1期として1000人のがん患者さんを目標に開始。2022年8月には当初予定していた1000人に達し、進行がんだけでなく、各種腫瘍の異なった病期における遺伝子異常のプロファイルを集積し、院内で正確ながんゲノム検査が実施できるシステムを確立してきた。今回、院内のがんゲノム検査体制のさらなる充実をめざし、さらに1000人を臨床研究として無料で実施する。
第1期のゲノム検査では、手術時や生検の際に採取したがん腫瘍組織のみを用いていたが、第2期では患者さんの体への負担が少ない血液による検査システム(リキッドバイオプシー)の構築にも着手。リキッドバイオプシーは、低侵襲であることに加え、くり返しの採取が可能、がんの現在の状態について情報が得られる──などの利点がある。そのため、腫瘍組織を採取できない患者さんにおいても検査が可能だ。リキッドバイオプシーを無料で実施している施設は全国的にも非常に少なく、同大は患者さんへの参加を呼びかけている。
本研究では、多くのがんゲノム情報を蓄積してデータベース化し、それらを解析することによって、再発リスクの予測や患者さん一人ひとりに合わせた個別化治療(精密医療:プレシジョンメディシン)、さらには画期的な治療法の開発につなげ、地域医療を含めた日本のがん医療に貢献することをめざしている。
藤田医科大学で実施する無料がんゲノム検査について
・対 象
藤田医科大学病院で治療を行うがん患者さん(年齢・性別不問)1000人
・がん種
がん全般(詳細は各診療科で相談)
・検査方法
患者さんから採取した生体がん腫瘍組織および血液を
「PleSSision Rapid検査(143種類のがん遺伝子変異を検出するがん遺伝子パネル検査)」で解析
・費用負担
臨床研究として実施するため、患者さんの自己負担はなし
がん医療研究センター 佐谷秀行センター長からのコメント
がんは遺伝子の変異が原因となって引き起こされる病気です。遺伝子変異は患者さん一人ひとりの体質や病状によって異なり、治療の戦略を練るにはがんゲノム検査によって遺伝子情報を調べるのが理想的といえます。しかしながら2019年に保険適用になったがんゲノム検査は「標準治療が終了した再発がん、ないし発症率がまれな希少がん」に限定されており、治療開始時に検査を受けていただくことが難しいため、せっかくの貴重ながんゲノム情報を治療に生かしきれないことが大きな課題でした。また、保険適用外の患者さんは数十万円の自己負担が必要であり、経済的な問題も普及の壁となっています。
がんゲノム医療連携病院に指定されている藤田医科大学病院では、本臨床研究の実施に向けて最新の次世代シークエンサーNextSeq2000を導入。院内で迅速にゲノム解析できる体制を整え、臨床研究として患者さんの費用負担をゼロにすることで、これらの課題解決に取り組んでいきたいと考えます。第1期でがん組織のゲノム解析を正確に行うことができるようになったため、第2期はがん組織の解析に加えて、血液で迅速かつ簡便にがんの治療効果や再発を診断する方法の開発を進めていきます。