藤田医科大学病院で日本初のロボット支援下「膵全摘術」を施行
~術式の普及と患者さんの術後QOL向上に期待~
藤田医科大学病院(愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1番地98 病院長:白木良一)は12月20日、手術支援ロボット「ダビンチXi」を用い、本邦初となる第1例目のロボット支援下膵全摘術を実施し、無事終了しました。患者さんは70代の男性で、手術後の体調も非常に安定しています。藤田医科大学病院は2008年、全国に先駆けて手術支援ロボット「ダビンチ」を導入し、ロボット支援手術において国内トップクラスの実績を誇ります。今回執刀した先端ロボット・内視鏡手術学の宇山一朗教授は、1000例以上のロボット支援手術を手掛け、ロボット支援下による膵頭十二指腸切除と膵体尾部切除にも熟練していることから、患者さんの希望により日本初の本手術施行となりました。
宇山教授は、「腹腔という限られた閉鎖空間で膵臓全体と脾臓、十二指腸、胆管を扱うため、非常に技術的難易度が高く、熟練した外科医が執刀する必要があると感じた。ロボット支援手術は、開腹術に比べて非常に小さい術創で済み、患者さんにとっては大きなベネフィットがある術式なので、今後も積極的に施行していきたい」と手応えを話しています。
【背 景】
消化器外科系の多くの領域でロボット支援手術の普及が加速する一方、膵臓外科領域においてはその難易度の高さから普及がなかなか進んでいないのが現状です。保険収載においても、2020年4月にロボット支援下膵頭十二指腸切除術および膵体尾部切除術が適用になりましたが、ロボット支援下膵全摘術は現時点で保険未収載であり、腹腔鏡下膵全摘術も同様です。
とくに膵全摘術は、膵頭十二指腸切除術と膵体尾部脾臓切除を同時に行う必要があり、技術的に非常に高難度であるため、日本では、腹腔鏡でも施行された報告がほとんどなく、ロボット支援下手術で行うという考えも浸透していません。しかし、開腹手術で膵全摘術を行うには非常に広い術野が必要であり、手術創も大きくなるため、患者さんの体への負担を軽減させるためには、ロボット支援下による術式の確立が待たれていました。今回、第1例目が施行されたことで、今後はこの術式の普及による患者さんの術後QOLの向上が期待できます。