片頭痛の多様なつらさや支障を見える化した『ヘンズツウかるた』の有用性調査 / 『ヘンズツウかるた』と片頭痛支障度との関連性が明らかに

日本イーライリリー株式会社

~臨床現場における医師・患者間のコミュニケーションへの活用が期待される~

日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:シモーネ・トムセン、以下「日本イーライリリー」)は、周囲からみえにくい片頭痛の症状や支障の啓発を目的として作成した『ヘンズツウかるた』の有用性を評価するため、片頭痛患者207名、家族201名、診療医232名を対象に調査を実施しました。本結果をまとめた論文が、本日、学術誌(日本頭痛学会誌第50巻 1号)に掲載されました。

 
<調査結果要旨>
  1. 『ヘンズツウかるた』は、症状や支障に加え、誘発・増悪因子、患者の思いなど、他者からみえにくい患者の主観的な認識等の概念を可視化したツールとして評価された
  2. 『ヘンズツウかるた』と既存の片頭痛評価尺度との間で関連が示された
  3. 『ヘンズツウかるた』を介して患者の支障や思いを可視化できることに加え、患者と家族・医師の間に片頭痛に対する認識の相違があることが示唆された
  4. ヘンズツウかるたが臨床・教育の場で啓発資料やコミュニケーションツールとして活用されることで、社会全体の片頭痛に対する理解と共通認識の醸成を促進し、よりよい片頭痛コントロールの一助となることが期待される
 
『ヘンズツウかるた』論文の頭痛学会誌掲載を受けて、『ヘンズツウかるた』の医学監修者であり、本論文の著者でもある、富士通クリニック 頭痛外来担当の五十嵐久佳先生は、「片頭痛の患者さんは、痛みや支障があったとしてもあきらめていたり、つらいと言えず我慢を続け、仕事や日常生活で無理をしてしまうことが多いと感じます。一方で、患者さんが「痛み」などの体調に合わせて仕事を休むことへの周囲の許容度は高いという調査結果*1が出ており、一人で抱え込んだ気持ちを打ち明けることで気づきや理解が生まれると考えます。また、医師とのコミュニケーションにおいてもご自身の症状や日常の制約・不安をお話いただくことで、より適切な治療につながる可能性もあります。患者さんが周囲の方や医師に対してご自身の片頭痛について気軽にお話できるきっかけとして『ヘンズツウかるた』を活用していってほしいと思います」と述べています。

また、本論文の共著者であり、JPAC(頭痛医療を促進する患者と医療従事者の会)共同代表でもある、社会医療法人寿会富永病院 看護師長の田畑かおりさんは、「数多くの片頭痛患者さんと接してきましたが、『ヘンズツウかるた』はこれまでなかなか可視化しづらかった当事者の多様なつらさを親しみやすいトーンで描いてくれています。当院で『ヘンズツウかるた』を活用し看護師向けに行った、患者さんの支障やつらさを理解するための研修会では、多くの参加者から『患者さんの真の困りごとを理解する上で役に立つ』といった感想が寄せられました。このかるたがより多くの医療従事者や人々の手に渡り、気軽に皆で遊んでいただくことで、片頭痛への理解が社会に広がる一助になることを期待します」と述べています。

これまで日本イーライリリーは、特設サイトにて『ヘンズツウかるた』を掲載し、広く一般の方に公開すると共に、社内での啓発イベントで使用するなど、片頭痛の理解促進のために『ヘンズツウかるた』を活用してきました。コミュニケーションツールとしての使用意向などといった要望も医療現場からたびたび寄せられていましたが、本調査結果から、ヘンズツウかるたを介して片頭痛患者の支障や思いを可視化できることが示唆されたことから、医療現場における医師と患者のコミュニケーションへの活用が期待されます。日本イーライリリーは、今後、『ヘンズツウかるた』の更なる活用によってより多くの人々の片頭痛への理解が促進されることを目指してまいります。

■『ヘンズツウかるた』とは
片頭痛は、日本で約10人に1人いると言われ*2、男性の3.6%、女性の12.9%が抱える神経性の疾患*3で、日常生活に対する障害や疾病の負担は全疾患の中で2 番目に大きいといわれています*4。しかし、その症状や辛さは見えにくく数値化することも困難なため、周囲からは軽視されがちな疾患でもあります。この課題を解決すべく、一人でも多くの人に片頭痛が正しく理解されるように、片頭痛当事者の症状や心情、周囲の人の声・想いを集め、“見える化”したのが『ヘンズツウかるた』です。2021年11月に公開しました。
https://www.henzutsu-karuta.jp/

片頭痛とは
片頭痛は、頭の片側もしくは両側に心臓の拍動に合わせて中等度から重度の強さの痛みが4~72時間持続すると共に、随伴症状として、悪心や嘔吐、光過敏、音過敏等を伴うことが多くあります。片頭痛による労働遂行能力低下により、年間2兆3000億円の経済的損失が発生しているとも推計されています*5。

『ヘンズツウかるた』 の有用性を評価する調査
『ヘンズツウかるた』の臨床での有用性を評価するために、片頭痛患者、家族、診療医に対して調査を実施しました。

<調査結果サマリー>
①症状や支障に加え、誘発・増悪因子、患者の思いなど、他者からみえにくい患者の主観的な認識等の概念を可視化したツールとして評価された
  • 『ヘンズツウかるた』には症状や支障に加え、誘発・増悪因子、患者の我慢や諦め、片頭痛コントロールへの思い等、他者からみえにくい患者の主観的な認識内容の札が含まれている。それら主観的な内容の札のうち、本調査において患者の過半数が自身にあてはまる札と選択し、症状の札よりも選択割合が高い札もあった。過去の患者調査でも、片頭痛に対する認識として我慢や完治への希望に関する回答割合は高く*6、患者本人にとって重大な要素であるといえるため、そういった概念を可視化し認識を共有できる点は『ヘンズツウかるた』の強みと考えられる。
②『ヘンズツウかるた』と既存の片頭痛評価尺度との間で関連が示された
  • 片頭痛支障の尺度であるHIT-6*7のスコア別の結果ではHIT-6 高スコア群で各札の選択割合が高く、片頭痛の支障度を『ヘンズツウかるた』で捉えられていることが示された。
  • 「し:仕事がはかどらない」の札をあてはまると選択した患者は42.5 %であった。2020 年に国内片頭痛患者を対象に実施された大規模調査(OVERCOME Japan study)でのプレゼンティーズムの存在割合と同程度であり*8、労働生産性評価でも『ヘンズツウかるた』が既存尺度と整合することが示唆された。
③『ヘンズツウかるた』を介して患者の支障や思いを可視化できることに加え、患者と家族・医師の間に片頭痛に対する認識の相違があることが示唆された
  • 片頭痛患者に当てはまると思う札の選択において、片頭痛の誘発・増悪因子に関する札は患者自身と、家族・医師の回答選択割合差が大きく、患者は重大な懸案事項と捉えているが他者からは気づきにくい実態が示されるなど、患者と家族・医師の間に片頭痛に対する認識の相違があることが示唆された。
④ヘンズツウかるたが臨床・教育の場で啓発資料やコミュニケーションツールとして活用されることで、社会全体の片頭痛に対する理解と共通認識の醸成を促進し、よりよい片頭痛コントロールの一助となることが期待される
  • 上記の結果から、診察のサポートや患者・家族の気づきの促進、医療関係者の教育など、医療現場での医師・患者間のコミュニケーションツールのひとつとして活用できる可能性が示唆された。
調査概要
●研究名:日本の片頭痛患者・家族・診療医における片頭痛に関する実態と認識、および片頭痛が家族に与える支障に関する観察研究

●調査名:片頭痛患者さんと家族、医師対象の意識調査

●調査対象:
①片頭痛患者(207名)
楽天インサイト社の疾患パネル登録者のうち、片頭痛と診断(「二次性頭痛」「うつ/ 不安症」診断なし)され、典型的な片頭痛の特徴を有し、片頭痛日数(直近3ヵ月間における月あたりの平均片頭痛日数)が2 日以上ある、20 歳以上65 歳以下の者。

②同居家族(201名)
楽天インサイト社の一般生活者パネル登録者のうち、自身は片頭痛患者ではない、片頭痛と診断された20 歳以上の同居家族(「二次性頭痛」「うつ/ 不安症」診断なし)がいる、18 歳以上の者。

③診療医(232名)
医療情報専門サイトm3.com 会員医師のうち、月10 人以上の片頭痛患者を診療し、脳神経内科・脳神経外科・一般内科・精神科/ 心療内科に所属し、自身や家族が製薬会社・医療機器メーカーにおいて現在勤務していない者。

●調査方法:インターネット調査
●調査時期:2022年5月
●設問数:20~40問
●設問:
『ヘンズツウかるた』46札全てを提示し、患者自身・家族の患者・医師として診療した患者に当てはまる札を選択する設問に加え、患者へは片頭痛の症状や支障(Headache Impact Test-6;HIT-6*7、Migraine Disability Assessment;MIDAS*9)に関する設問を、家族には患者の片頭痛への向き合い方に関する考えの設問を、医師には処方経験に関する設問を解析対象変数とした。

■日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛、などの領域で日本の医療に貢献しています。詳細はウェブサイトをご覧ください。 https://www.lilly.co.jp

*1:2020年1月29日リリース「片頭痛に関する職場での患者さんと周囲の意識調査結果を発表」 https://news.lilly.co.jp/PDFFiles/2020/20-03_co.jp.pdf
*2:日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修:頭痛の診療ガイドライン作成委員会編集.頭痛の診療ガイドライン 2021, 医学書院
*3:Sakai F. et al, Cephalalgia. 1997;17:15-22
*4:GBD 2016 Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators. Lancet 2017; 390: 1211-1259より一部抜粋;
*5:Shimizu T, et al. : Disability, quality of life, productivity impairment and employer costs of migraine in the workplace. The Journal of Headache and Pain 2021 : 22(1) : 29
*6:長谷川万希子,五十嵐久佳:片頭痛診療に対する患者満足度の実態.診断と治療92:2105-2112, 2004.
*7:Kosinski M, Bayliss MS, Bjorner JB, et al:A six-item short-form survey for measuring headache impact: the HIT-6. Quality of Life Research 12:963-974, 2003.
*8:Matsumori Y, Ueda K, Komori M, et al:Burden of Migraine in Japan: Results of the ObserVational Survey of the Epidemiology, tReatment, and Care Of MigrainE (OVERCOME[Japan])Study. Neurol Ther 11:205-222, 2022.
*9:Stewart WF, Lipton RB, Kolodner K, et al:Reliability of the Migraine Disability Assessment Score in A Population-Based Sample of Headache Sufferers.Cephalalgia 19:107-114, 1999.



 

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