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昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)の鶴谷純司教授(同大先端がん治療研究所・所長)と吉村清教授(同大臨床薬理学研究所臨床免疫腫瘍学部門)らは、進行再発乳がん患者における、細胞周期阻害剤と免疫チェックポイント阻害薬を併用する医師主導治験で得られた血液や肝組織検体を用い、細胞周期阻害剤が免疫治療の効果を増強するメカニズムを調べました。血清サイトカイン解析で、TNF関連因子やIL-11の増加と末梢血単核細胞解析で制御性T細胞の低下、肝組織でCD8+リンパ球の浸潤が認められ、細胞周期阻害薬がICIの免疫活性化と相乗的に働くことを確認しました。
本研究成果は、2023年9月13日に米国がん免疫療法学会誌『Journal for ImmunoTherapy of Cancer』にオンライン掲載されました。
【研究の背景・目的】
免疫チェックポイント阻害薬は革新的ながん薬物療法として様々ながん種の標準治療になりました。しかし、一部のがんではその有効性が期待できず、恩恵にあずかれない患者さんが存在します。
ホルモン受容体陽性の乳がんは、乳がんの中で最も多いタイプですが、免疫チェックポイント阻害薬の効果は乏しいと考えられています。
細胞周期阻害剤はがん細胞の分裂を抑え、転移や進行を抑制する薬剤で、ホルモン受容体陽性の乳がんに用いられます。主にがん細胞内のCDK4/6と呼ばれる分子を阻害し、細胞の分裂を抑える以外にも、様々な効果が報告されています。動物実験では腫瘍組織に免疫細胞(活性化リンパ球)を集め、がん細胞の表面にがん抗原を発現させることにより、免疫の効果を増強させるのではないかと報告されています。細胞周期阻害剤で免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強することができれば、これまで有効性の期待できなかった患者さんへの効果も期待できます。
【研究成果の概要】
今回、免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブに細胞周期阻害薬のアベマシクリブを併用した17人の乳がん患者さんから、治療前と治療後の血液、腫瘍、肝生検検体を集めて、免疫が活性化されるメカニズムを調べました。検体は昭和大学先端がん治療研究所(東京都品川区)と同大臨床薬理研究所(東京都世田谷区)に集められ、解析されました。血液検査ではリンパ球を活性化するTNF関連因子やIL-11と言われる蛋白が増加し、免疫を制御する制御性T細胞の減少が認められました。さらに、肝障害を起こした患者さんの肝臓に活性化したリンパ球が集まっていることが分かりました。動物モデルで認められた変化を裏付ける、貴重な知見が得られました。
【今後の展望】
免疫チェックポイント阻害薬の効果を上げる併用薬は重要です。免疫活性化のメカニズム解明により、あらたな治療法の開発や副作用の低減が期待されます。
【研究支援組織】
西日本がん研究機構のデータセンター(データセンター長:中村慎一郎)、乳腺委員会(委員長:がん研有明病院 高野利実)
【掲載論文】
・雑誌名:Journal for ImmunoTherapy of Cancer
・論文名:Efficacy, safety, and biomarker analysis of nivolumab in combination with abemaciclib plus endocrine therapy in patients with HR-positive HER2-negative metastatic breast cancer: a phase II study (WJOG11418B NEWFLAME trial)
・著者名:Jun Masuda, Hitomi Sakai, Junji Tsurutani, Yuko Tanabe, Norikazu Masuda, Tsutomu Iwasa, Masato Takahashi, Manabu Futamura, Koji Matsumoto, Kenjiro Aogi, Hiroji Iwata, Mari Hosonaga, Toru Mukohara, Kiyoshi Yoshimura, Chiyo K Imamura, Sakiko Miura, Toshiko Yamochi, Hidetaka Kawabata, Hiroyuki Yasojima, Nobumoto Tomioka, Kenichi Yoshimura and Toshimi Takano
・掲載日:Aug.13 2023
・DOI:10.1136/jitc-2023-007126
▼本件に関する問い合わせ先
昭和大学 先端がん治療研究所
TEL: 03-3784-8145
E-mail: tsurutaj@med.showa-u.ac.jp.
▼本件リリース元
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