デロイト トーマツ調査:「2023年アジアパシフィック内部通報調査レポート」を発表
アジアパシフィック地域の本調査対象企業の93%が内部通報制度をすでに設けている、または導入する予定と回答。優先度が高まるものの、通報内容やデジタル活用および対応期間に関して日本と海外企業で異なる傾向がある
デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、CEO:木村 研一 )は、「2023年アジアパシフィック内部通報調査レポート」を発表します。本調査は、内部通報制度に関する各組織の能力や対応状況を把握するため、2023年3月31日から5月1日にかけて、日本を含むアジアパシフィック地域各地で実施され、509件(うち日本企業は169件)の回答をもとにまとめられました。本調査ではアジアパシフィック地域において内部通報制度に取り組む企業が増えており、その重要度・優先度が高まっていることが示されました。また、組織において不祥事や汚職行為が繰り返し発生していることで、企業は不正や汚職、環境被害や人権侵害等に対処する手段として、適切な内部通報の枠組みを確立すべきと考える傾向があります。
◆内部通報のニーズが高まるアジアパシフィック地域
今回の調査では、調査対象企業全体の93%が内部通報制度をすでに導入している、もしくは今後導入する予定と回答しており、残りの7%は導入する予定がないと回答しています。制度を導入しない理由としては、経営陣が必要性を感じていない、組織が小規模過ぎる、リソースが不足しているといった組織に起因するものもあれば、内部通報制度を求める法律や規制がないことを理由に導入を行っていない企業もあります。
組織内で内部通報をどの程度重要視するかについては、全体の58%が非常に重要であると回答しており、組織規模が大きい企業ほど優先度が高いと考える傾向があることが分かります。
Q.あなたの組織には内部通報制度がありますか?
◆実務や社会規範の変化に伴い、内部通報の目的や利用方法が多様化
働き方や社会規範が変わる中、内部通報の目的や利用方法も変化しています。不正行為や不適切行為を発見することは、内部通報制度の重要な目的の一つとされており、本調査に回答した企業のいずれの業界においても同様の傾向にあります。一方で、71%は「誠実かつ倫理的な組織風土を醸成すること」を内部通報制度の最も重要な目的として挙げています。報復行為を怖れず、正しいことを行うために真実を伝える内部通報者を組織として支持する傾向が高まっており、組織風土の改善や透明性の高い職場環境の推進といった、組織をよりよくするためのツールとしての機能を内部通報制度に期待していることがわかります。
◆日本と海外企業の内部通報制度に対する意識の違い
日本とその他アジアパシフィック地域の海外企業の内部通報制度における違いを見てみると、海外企業にとって内部通報制度の重要度・優先度は非常に高いものの、実際に制度を導入している比率は日本企業の方が高い結果となりました。また、通報内容の傾向として、日本企業の国内拠点において「パワハラ」「セクハラ」「人事」関連の不満の声が多く寄せられている反面、海外企業においては、「贈収賄」「汚職」「利益相反」「差別」と言った内容が主体となっており、内部通報に対する国内外の企業における意識の違いが大きく表れています。
◆日本企業の内部通報窓口・管理のデジタル化に課題
日本企業、海外企業ともに通報窓口として複数のチャネルを設置している企業が多くなっており、88%はEメールを活用していると回答、次に専用電話窓口・ホットラインが70%を占めています。調査回答企業全体の49%が利用しているウェブプラットフォームによる通報受付は、Eメールと電話受付の双方のメリットを融合させることができ、秘匿性が高いツールとして近年期待が高まっています。しかし、ウェブプラットフォームを活用している企業の比率は、日本企業(国内拠点)では38%と低くなっており、内部通報制度のデジタル化の遅れが懸念されます。
Q.内部通報のために、どのような通報窓口が設置されていますか。(複数回答)
◆内部通報制度の周知不足に加え、日本企業では海外拠点管理における課題も浮き彫りに
本調査対象企業の多くは、組織内で内部通報方針を設定している一方で、周知不足を課題として挙げています。日本企業においては、国内外の拠点で内部通報制度が設置されているものの、一部の海外拠点では方針が定められていないと回答している企業もあり、国内拠点に比べ方針の整備が後手に回っていることが分かります。体制が整備されていても、制度やその利用方法について従業員への周知が足りず、内部通報が有効に活用されない可能性があります。また、外部ステークホルダーへの情報発信や通報受付体制は発展途上となっています。
通報後の対応状況の通知について、日本企業は「期間を設けず、調査が完了次第」と回答した企業が74%と非常に高い一方で、海外企業は「通報後24時間以内/1週間以内」と定められた期間内で対応するとしている回答が多く、国内外における企業の内部通報案件の対応・管理状況に違いが見られます。
複数の国や地域、多言語の通報に対応する必要がある組織では、本社においてグローバルに管理する体制の構築が大きな課題になっており、社内で適切なリソースを確保することが容易ではないことから、必要なスキル、ツールや専門知識を備え、客観的かつ独立した内部通報制度を運用できる外部プロバイダーを利用するメリットが広く認識されるようになってきています。
◆調査結果の詳細は「2023年アジアパシフィック内部通報調査レポート」をご覧ください。
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/finance/solutions/conduct-watch.html
調査の概要
調査機関:2023年3月31日から5月1日
目的:内部通報制度に関する各組織の能力や対応状況の把握
回答者:アジアパシフィック各国から509件の回答を収集(うち日本企業は169件【内訳:国内拠点71件、海外拠点98件】、海外企業は340件)。74%の回答者は、組織の内部通報を担当する主要な意思決定者
対象国:中国、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、オーストラリア、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、ベトナムなど
言語:日本語、韓国語、簡体字中国語、繁体字中国語ほか
*表記のグラフはすべて、アジアパシフィック各国から得た509件の回答を基に作成