パーキンソン病と尿酸および エネルギー代謝障害の関係を示す新たな発見
この発見は、パーキンソン病におけるエネルギー代謝の理解を深め、新たな治療法の開発に貢献する可能性があります。
本研究成果は、米国の学術ジャーナル「npj Parkinson's Disease」オンライン版で2024年9月9日に公開されました。
論文URL : https://www.nature.com/articles/s41531-024-00785-0
<研究成果のポイント>
- パーキンソン病患者は健康な人よりも血液中と脳脊髄液中の尿酸レベルが低く、エネルギー産生にかかわるプリン代謝にも異常があることを発見
- これまで病気の進行や症状の悪化に関連するとされていた尿酸の低下は直接的な病因でよりむしろ、体重・性別・年齢といった外的要因の影響が大きいことを明らかに
- ヒトの細胞がエネルギーを使うための燃料であるATP (アデノシン三リン酸) のリサイクルシステムが障害されており、その修復が治療となる可能性を示しました
<背 景>
このため、尿酸はなぜ低下するのか、尿酸低下の意義は何か、また尿酸の代謝の上流にあたり、細胞のエネルギー代謝に不可欠な分子であるATPを構成する重要な成分であるプリン体の代謝物は、どのようになっているのかが大きな疑問になっていました。
<研究手法・研究成果>
また、パーキンソン病患者は、血清中のヒポキサンチンと脳脊髄液中のイノシンとヒポキサンチンのレベルも低下していることが示されました。その意義を考えるため、イノシンおよびヒポキサンチンとATPとの関係を検討しました(下記図)。
図:パーキンソン病患者における血清および脳脊髄液中の尿酸レベルの低下と、プリン代謝異常を発見
<今後の展開>
研究チームは、プリン体の再利用を促進する治療法の開発や、運動療法および栄養管理によってエネルギー代謝を改善するアプローチを通じてパーキンソン病の進行を抑え、生活の質を大幅に向上させる戦略の開発につなげていきたいと考えています。
<用語解説>
※1 ヒポキサンチン
ヒトが活動するために必要なエネルギーの源であるATP(アデノシン三リン酸)が尿酸に分解される過程で生じる中間産物。90%以上がATPにリサイクルされます。体内のエネルギーサイクルをスムーズにする上でとても重要な役割を担っています。
<文献情報>
●論文タイトル
Uric acid and alterations of purine recycling disorders in Parkinson’s disease: a cross-sectional study
●著者
島さゆり1、水谷泰彰1、吉本潤一郎2、前田康博3、大嶽れい子1、長尾龍之介1、前田利樹1、東篤宏1、
植田晃広1、伊藤瑞規1、武藤多津郎1,4、渡辺宏久1
●所属
1. 藤田医科大学 医学部脳神経内科学
2. 藤田医科大学 医用データ科学
3. 藤田医科大学 オープンファシリティーセンター
4. 藤田医科大学 中部国際空港診療所
●DOI
10.1038/s41531-024-00785-0